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糖尿病3分間ラーニング
ベトナムの糖尿病事情

6. ダナン病院の2型糖尿病の患者さん

レポーター:Dang Thi Kim Anh さん
GHPトレーディング社(ベトナム)の代表
2007年12月

 ダナン病院で、入院してインスリン治療をされている2型糖尿病の患者さんにお会いしお話をうかがうことができました。

 ドクターのお話によると、そのとき入院治療していたのは2型糖尿病の患者さんだけで人数は少なく、こちらでは糖尿病患者さんのほとんどが在宅治療をしながら毎週火曜朝に定期検診に病院に来るという方法を選んでいるそうです。訪問したのが木曜日だったで、1型糖尿病患者を含めて在宅治療をしている患者さん達とお話する機会を逃してしまい、ちょっと残念でした。


患者さん達と会ったダナン病院(ダナン市内)

Aさんは、ダナン省の公社で農業をしておられる52歳の女性です


Aさんは1週間前に意識不明で入院しました

 Aさんは、絶えまない疲れや頻尿などの症状が1年以上続いていました。Aさんは、1週間前に意識不明の急患としてこの病院に運ばれて、糖尿病と診断されました。お会いしたときは、3日間の意識不明から覚めて、まだ日にちがたっていない状態でした。

Aさんの話

 1年以上、ずっと病気で苦しんでいましたが、田舎のことでいろいろ限りがあります。私は病気がそれほど深刻ではないだろうと思い、薬局でいくつかの薬を買って飲みましたが、何の薬だったかはよくわかりません。

 2006年の旧正月(旧暦の正月、2006年は太陽暦で2月)のころ、もっと悪くなったと感じましたが、病院へは行きませんでした。視力がますます悪くなりましたが、医学的検査は受けず薬剤師さんから点眼薬を貰っただけでした。とても早く空腹を感じるようになり、具合が悪いとき以外はたくさん食べていました。また、いつも喉に渇きを感じ、尿も増えました。

 具合が悪くなる前の私は、とても丈夫で畑仕事等とてもよく働いていました。私は糖尿病について何も知らなかったので、どうすればいいかも全くわかっていませんでした。

 数か月前にあまりに具合が悪くなったので、近くの病院へ行き、胃痛と診断され治療を受けました。そして、1週間前に意識を失い、前回の病院からダナン病院に転送されて、この病院のドクターから糖尿病ですといわれました。私は3日前に意識が戻りましたが、まだひどく疲れている感じです。

 私はどのタイプの糖尿病であるかわかりません。

 ドクターは、甘いものを食べない方がよいといいます。

 病院では私が使える食品を売っていませんので、夫と姉妹が外で買ってきてくれたものを貯えています。

 私は医療保険をもっていますが、どれくらい支払うのか、また、いつごろ退院できるのかもわかりません。

 自分の健康状態がどうなのか、治おるのか治らないのかわかりません。治療ができるのかできないのか、回復が可能なのかもわかりません。この病気は治らないといわれ、とても心配です。

Bさんは59歳の男性で退職するまで政府職員でした


Bさんはこどもさん達と一緒に暮らしています

 Bさんは職場の定期検査で糖尿病を発見されました。当時、家族はBさんがそう長くは生きられないと思い、Bさんの老後の年金として与えられる退職金について尋ねました。Bさんは治療費の支払いのための保険に入っていなかったので、治療費はこども達が支払うことになります。

Bさんの話

 この病気になってから、いつもとても疲れて、喉が渇き、尿が多くなりました。ダナンで住んでいる地区の病院で定期的なメディカルチェックを受け、食中毒といわれてダナン病院に送られました。

 私の家には血糖測定器などありませんから、今血糖値がどの位かなんて知りませんでした。

 私は心臓が苦しく、肺にも問題があり、腎臓も不完全な状態です。

 ドクターはコーヒー、たばこ、お酒を飲まないで、よい食事を取るようにいいましたが、それは私にとっては難し過ぎます。私が最初に病気だと気付いたころ、好きなものは何でも食べていました。更にこの病気が悪化して少しがまんするようになりましたが、酒、たばこ、コーヒーをやめることはできず、ときどき飲みにもでかけました。

 私の毎日の食事は子供たちが世話してくれます。私は何でも食べますし、家族の食べ物と同じものを食べます。私のための特別な食べ物はありません。私は糖尿病が回復しにくいことを知っています。特に歳を取っていると・・・。

Cさん(54歳、男性)は国営企業の警備員しています


Cさんにいろいろご意見をいただきました

 Cさんはとてもはっきりアッピールされ、理解されるのも早い印象でした。この病院で4か月以上治療を受けていますが、いつ頃退院できるか、まだ聞かされていないそうです。

Cさんの話

 数か月前から、ひどい不快感を感じるようになり、いつも空腹でたくさん食べるようになりました。そして、健康チェックに行き、自分が糖尿病であることがわかりました。これより前に、私はこのような病気について何も聞いたことがありませんでした。

 地区の病院で治療していたときの血糖値は、だいたい360〜490mg/dLの範囲内でした。ダナン病院に転院してから、私の血糖値は200〜220mg/dLまで下がりました。

 ここではとてもよい食事が食べられますからこの血糖値のレベルが維持できていると思います。しかし、家に帰った時にどうすれば良いかがわかりません。

 そして、外での付き合いのことです。たばこを勧められたり、仕事の後に友人からお酒を飲みに行こうと誘われることを避けたり、断ったりすることはとても難しいです。

 私は健康保険に入っていますが、経済的困難に直面しています。今私は1か月あたり数十万ドンの給料(参考:十万ドン=約800円)の70%相当の支払いを受けていますが、病院での生活費と交通費はとても高いです。この4か月間の支払いは1千万ドン(約8万円)になっています。

 ですから、現在の私の最大の関心事はお金が足らないのではないかということです。

 その上、私の仕事の能力は恐らく50 %くらい減少しているでしょう。この病気が見つかってから、4か月ちょっとの間に体重が15kg減り、55kgだった体重が今は40kgです。仕事の能力の低下、給料の減少と治療費のことがとても心配です。

 また、糖尿病を治癒できるかどうかわからず、合併症で盲目になったり足を切断したりすることもあると聞いて、不安になります。

 ドクターは食事療法を提案してくれますが、誰かにアシストを頼めるようなお金持ちの人たちだけに適しているように感じます。

 私たちのような労働者には、ヤギ、羊肉、オムレツ、カレー、季節に合わせた麺、牛肉のソテーなどを毎日の食事にする余裕などありません。

 このような食事療法には、毎日30万ドン(約2400円)くらい必要ではないかと思います。私たちが1日に稼げるのは数万ドンですから、とてもそんな余裕はありません。

 ドクターが私たちにふさわしい食事療法を指示して下さることを望みます。私たちができるのはせいぜい1食あたり5〜6千ドン(約40〜50円)くらいでしょう。

 インターネットのことはわかりません。私のこどもが多分知っているでしょう。私はインターネットを学ぶつもりはありませんから、インターネットの情報を使うこともないでしょう。

Dさんはダナン市に住んでおられる73歳の女性です


Dさんは1人暮らしが寂しいといわれました

 Dさんはご主人が重い病気で、彼女の長い介護の果て、亡くなりました。その後、彼女は疲れを感じるようになり、水をたくさん飲み、排尿の回数が増え、体調が急速に悪化して甘いものがとても欲しくなりました。

 彼女は、病院での長かったご主人の介護の後の疲れによる普通の症状だろうと考えていました。しかし、末の娘の夢の中に亡くなったご主人が現れ、彼女は病気だから早く治療が必要だといいました。

 そこで、こども達は健康診断のために伝統的な医療をする病院に連れて行きました。そして、ドクターと別れようとした間際に、尿テストの結果で糖尿病が見つかりました。それは2000年のことでした。

 彼女の家族にはだれも糖尿病はいません。

 以来、血糖値はいつも高く250〜290mg/dL、まれに400mg/dLもあり、最も低い値が120mg/dLです。

 彼女はインスリン注射の仕方を覚え、在宅で自己注射をしています。また、健康に関するテーマのTV番組等をチェックするようにしています。

 しかし、近ごろ血糖値が高くて、脳循環障害の徴候があるので、ほとんど病院にいます。彼女はこども達の世話にはなれないと思っています。

Dさんの話

 私には数人のこどもがいますが、こども達が素晴らしいとはいえません。このような病気の私に常に注意を払えるこどもはおりません。私は入院が長くなりました。こども達は1度か2度は訪ねてくれますが、続けて世話してくれるものはおりません。

 私は食べ物を、まだ歩ける同室の人に病院の外から買ってきて貰います。それができないときはインスタント麺か、ミルクとパンにします。

 家にいるときは、元気なときは自分で料理します。具合が悪いときに食べるものが無ければ、ただベッドで寝ています。もし、牛乳が届けばそれを飲みます。

 視力はもう悪くなっており、ドクターは手術が必要ですといわれるのですが、私はためらっています。

 体を清潔に保つようにして、食事療法もしていますから、合併症はでていません。そして、より多くの経済的困難を持たないよう健康保険と年金を持っています。

 でも、こども達に世話をしてもらえないことが寂しいです。

 私はいつ退院できるかわかりません。以前より、かなり疲れているように感じます。

 今回2型糖尿病の患者さんとお会いして、皆さんが糖尿病といわれるまで糖尿病について何も知らなかったことに驚きました。ベトナムの食糧事情が食糧不足から栄養過多に急激に変化したことに関係するのではないでしょうか。糖尿病の啓蒙がとても必要であると感じます。

 糖尿病は食事療法が欠かせませんが、Cさんが指摘されるように、ベトナムの日常的な料理法と廉価な食材でできる食事療法の普及が是非必要です。

 患者さん達は一様に治療費の支払いについて心配されていました。治療費、食事療法の費用、関係者が支払う交通費など大きな出費になっています。医療保険などでカバーされている人もおられましたが十分ではないそうです。

 そして、Dさんがこども達にあまり負担をかけたくないが、やはり1人は寂しいと言われたことが心に残りました。患者さんには家族など関係者に支えられて、共に生きていると感じられることが必要です。

 患者さん達が、サポートされ、理解され、関係する人々の世話が受けられることを願わずにはいられません。

「ベトナムの糖尿病事情」もくじ


ベトナムの糖尿病事情を10回シリーズでお届けいたします。


コーディネーター: Dang Thi Kim Anhさん(写真中央)。
GHPトレーディング社(ベトナム)の代表。スタッフに囲まれて。

  1. ベトナムの糖尿病をめぐる現状
  2. 飲食習慣が劇的に変化した20年 糖尿病も増加
  3. 糖尿病専門医に聞いたベトナムの
    糖尿病をめぐる現状と対策
  4. ベトナムの1型糖尿病患者さん
  5. ベトナムで増加する肥満・糖尿病
  6. ダナン病院の2型糖尿病の患者さん
  7. ベトナムのヘルスケアシステムと糖尿病
  8. 糖尿病患者さんをサポートする体制
  9. インスリンを使用する2型糖尿病の患者さん
  10. ベトナムの糖尿病、この1年を振り返る

国際糖尿病支援基金「わが友、糖尿病」

世界各国の糖尿病療養に携わる医療スタッフや患者さんとの交流録。
世界のさまざまな場所を旅した国際糖尿病支援基金・森田繰織会長のブログです。

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2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した
「NGSP値」で表わされるようになりました。過去の記事はこの変更に未対応の部分があります。

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