ニュース

2008年10月20日

栄養成分表示をもっと分かりやすく [加工食品と外食]

キーワード
食事療法
 加工食品や外食を利用するときに「1食にどれだけのカロリーや栄養が含まれるのかを知りたい」と考える人は多い。食事療法を行っている人では特にニーズが高い。
 加工食品の包装などには「栄養成分表示」という表示がある。徐々に浸透しつつあるが、表示方法などに課題もある。
「日本の栄養表示は分かりにくい」
 日本の栄養成分表示は、消費者が食品を選択する上で適切な情報を提供することを目的に、厚労省(当時)が1996年に栄養表示基準制度を定めたことから始まった。生鮮食品を除く加工食品が対象で、エネルギー量、蛋白質、脂肪、炭水化物、ナトリウム(塩分)、カルシウムやビタミンなどの栄養成分が表示されている。

日本の栄養成分表示の例
(チーズビスケット)

米国の栄養表示の例
(マカロニチーズ)

1食当りのカロリーや栄養素、1日の摂取基準量の何%に相当するかを表示している。

 表示内容や方法は栄養表示基準に定められているが、表示義務はないので全ての食品に表示されているわけではない。表示も「1個当り○○g」「100g当り○○g」といったようにバラバラで、単位もグラム(g)やミリグラム(mg)など統一されておらず、分かりやすいとはいえない。

 海外では、比較的早くから食品の栄養成分表示が行われている。例えば米国では、食事の実用的なガイドラインとして「米国人のための食生活指針(Dietary Guidelines for Americans)」が、保健福祉省(HHS)と農務省(USDA)の共同で1980年に提唱された。

 これに基づき米国では食品にラベル形式で表示することが義務付けられている。サービング(食事の提供量、1サービングは食事ごとの1皿に相当する)当りで摂取できる栄養素が表示され、単位もグラムに統一されている。1日の基準となる摂取量のどれだけに相当するかをパーセントで表示し、見ただけでエネルギーと栄養素の摂取量が分かるように工夫されている。

外食に栄養成分表示があれば「参考にしたい」
 2型糖尿病や高血圧など生活習慣病に対策するために、食事が大切であることが広く知られるようになり、分かりやすい食品の栄養成分表示を求める人は増えている

 2005年の「国民健康・栄養調査」で、食習慣を改善するために何が必要と思うかを聞いた質問で、「市販食品や外食メニューの栄養成分表示」を挙げた人の割合は男性の62%、女性71%と高かった。「食品メーカーからの情報提供」を挙げた人も多く、男性の60%、女性の68%に上った。

 外食料理、市販の惣菜や弁当に、エネルギーや栄養の表示を求める声も多い。沖縄県は2003年に、外食や弁当などの栄養成分表示や健康メニューの利用意向についてのアンケートを、県内の約3000人に実施した。外食や弁当に栄養成分表示があった場合に「参考にする」と回答した人は44%だった。女性で特に関心が高く、50歳代が75%、60歳代で57%に上った。

 国民の健康増進指針を盛り込んだ「健康日本21」の中でも、外食の栄養成分表示店の普及促進を目指している。要望の多いのはエネルギー量と、脂肪や食塩など栄養素の表示。脂肪は、摂取エネルギーに占める脂肪からのエネルギーの割合を示す「脂肪エネルギー比率」も表記することも望ましい

 外食の栄養成分表示は全国でも県、市町村レベルの取り組みが進んでいる。表示店であることを示すステッカーを入り口に張り、利用頻度の高いメニューから、できればすべてのメニューに栄養成分を表示し、利用者に「食の安心」をアピールすることを促している

 表示に協力する店舗にもメリットがある。東京都は2002年に「栄養成分表示協議会」を設置し、外食栄養成分表示ガイドラインの策定や参加団体による共同宣言を行った。登録した飲食店を都民の健康づくりを担っている「健康づくり協力店」として公開している。都の調査によると、都民の約半数は昼食に弁当、惣菜、飲食店などを利用しているという。協力店を対象に行ったアンケート調査では、健康づくり協力店になってから「信頼度が高まった」と回答した店舗が4割を超えた。

 やはり外食の利用が多く「食いだおれ」のまちとして知られる大阪府は、1989年に「外食栄養管理推進事業」を、全国に先駆けて始めた。96年には行政と外食団体が連携した官民一体の「大阪ヘルシー外食推進協議会」を設置し、成分表示やヘルシーメニューづくりの指導を行うなど「食の健康づくり」を実施している。

関連情報
英国で食品に分かりやすい栄養表示ラベル
「カロリーゼロ」の表示は本当? 健康食品の表示

資料
栄養表示基準に基づく栄養成分表示(厚生労働省)
栄養・食生活について(東京都)
米国人のための食生活指針(米国保健福祉省、英語)
栄養成分ラベルの見方(米国食品医薬品局、英語)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲