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2010年01月19日

食塩制限運動、5年で25%削減目指す ニューヨーク市

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食事療法
 米ニューヨーク市は、ファストフード店やレストランで販売される食品に含まれる食塩を25%減らすよう呼びかける運動「米国食塩制限イニシアチブ」を開始し、「食塩を制限しよう!(Cut the Salt!)」と呼びかけている。今後5年間をかけて、全米の飲食店や食品会社を対象に、自主的な塩分削減を促す。ニューヨーク市はすでに、カロリー制限や食品に含まれるトランス脂肪酸の規制を打ち出している。

 ニューヨーク市保健局によると、米国人の1日の食品の平均摂取量は推奨量の2倍になる。家庭での食事などによる塩分摂取は約1割にとどまり、8割は販売されている調理済み食品や外食によるものだという。

米国では加工食品の栄養成分表示が義務付けられている。ニューヨーク市の健康・医療ページでは「食塩の摂取の多くは加工済み食品による」として、食品の栄養成分を見て、食塩(ナトリウム)の含有量の少ないものを選ぶことを勧めている。

塩分の過剰摂取で高血圧に
 食塩のとりすぎは高血圧と関連がある。多くの欧米の臨床研究で、減塩が降圧に効果があることが確かめられている。血圧が高い状態が続くと、動脈硬化が起こりやすくなり、虚血性心疾患や脳卒中の発症につながる。腎臓の働きが低下し、腎臓病の発症も増加する。

 市保健局によると、こうした病気のためにニューヨーク市だけで年間2万3000人、米国全体では80万人以上が死亡している。そこで食品業界とも協議した上で、店頭で売られる加工食品では61項目、レストランやファストフードで売られる食品では25種類について、それぞれ減塩の目安を設けた。市保健局は「米国人の食品摂取量を5年間で25%減らせば、塩分摂取量は20%減少し、死亡率を引き下げることができる」と説明している。

 市保健委員のThomas Farley医師は「現状の塩分摂取量が続くと、正常血圧の人であっても健康を害するおそれが高くなる。高血圧症のある150万人の市民にとっては、さらに危険だ」と強調している。「消費者は販売されている調理済み食品に食塩を加えることはできても、取り除くことは不可能だ。あらかじめ食品に含まれる食塩を減らせば、消費者は食塩制限を選択できるようなり、結果として心臓病や脳卒中を減らすことにつながる」。

加工食品からの塩分摂取が多い
 多くの臨床研究で、食塩摂取量を1日6gまで落とさないと、効果的な降圧を達成できないことが分かっている。そのため、欧米のガイドラインでは1日6g未満か、それ以下の減塩を推奨している。

 米国成人のナトリウムの推奨摂取量は、1500mgから2300mg(食塩相当量にすると3.8gから5.8g)とされているが、平均的な米国人は1日にナトリウムを3400mg(同8.6g)以上とっている。

 すでにW.K.ケロッグ財団やロバート・ウッド・ジョンソン財団、ニューヨーク保健財団など、米国の保健・医療関連の団体や学会が、支持や助成を表明している。米国心臓学会(AHA)のClyde Yancy理事長は、「加工調理済み食品からの塩分摂取を抑えるイニシアチブを支持する。塩分摂取量を減らすことは、すべての米国民にとって潜在的に有益だ。食塩制限により米国人の主要な死因である心疾患の危険を減らすことができる」と述べている。

 米国医師会(AMA)のJames Rohack理事長は、「心疾患の危険を減らす手段として、加工食品やファストフード、外食の食事の食塩を制限することは効果的だ。医師会でも以前から奨励している」と述べている。

 市が進める減塩運動は、42の医療・健康関連の団体組織や自治体の支持を得ており、5年をかけて全国規模に拡大していく意向だ。25%の制限はあくまでも任意で罰則などは伴わないが、食品業界を巻き込んだ対策を打ち出すことで、消費者が自分で塩分摂取量を管理することができるようになるとしている。

Health Department Announces Proposed Targets for Voluntary Salt Reduction in Packaged and Restaurant Foods(ニューヨーク市)
Sodium (Salt or Sodium Chloride)(米国心臓学会)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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