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2010年02月03日

過食や肥満にうつや不安が強く関連 英研究

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食事療法
 慢性のうつを抱えている人や、不安障害のある人では、体重が増加し肥満になる比率が高いという研究が英国で発表された。2型糖尿病などの生活習慣病の発症や進行にも影響するという。

 英国のロンドン大学疫学・公衆衛生学のMika Kivimaki教授らは、患者に共通してみられる精神的な不調と肥満との関連に着目し、英国の35歳から55歳の公務員者4000人以上を約19年間にわたり追跡調査した。その結果、うつや不安などのある人では、そうでない人に比べ体重増加がみられる頻度が高く、最終スクリーニングでは肥満率が2倍になった。この研究は英医学誌「British Medical Journal(BMJ)」2009年10月号に発表された。

 論説著者であるオーストラリアのアデレード大学医学部のEvan Atlantis博士は、肥満とうつの関連についてより多くの研究が必要としながらも、「心理社会的な要因と生活習慣、生理的な要因が、複雑にからみあっている。肥満と精神的な不調は互いに影響している可能性がある。そのメカニズムについて解明することが、治療や予防の改善につながるだろう」と述べている。

 「不安になり、暗い沈んだ気持ちになっている人で、運動不足や過食がみられることが多い」とAtlantis博士は言う。気持ちを高めようとして脂質や糖質の多い味の濃い食品を選んでしまう傾向について、「内在性カンナビノイドの活性化が食欲を強めている可能性がある」と指摘。カンナビノイドは体内で作られる麻薬に類似した物質で、過剰に働くと食欲が増進し、うつや不安を緩和するという。

 脂質や糖質が多い高カロリーのジャンクフードや清涼飲料は、米国や英国をはじめ、先進国で多く消費されている。Atlantis博士は「高カロリーの食品が低価格で売られている。適切な知識をもたずにそうした食品を食べすぎて、肥満が増えると、社会経済的な損失につながる」と注意を促している。肥満に対策した加工食品などの開発も求められている。

 肥満であることを自覚している患者では特に、自尊心や自己評価の低下を感じており、そのことがストレスになり相乗的に抑うつを促すおそれがあるという。さらに、不安障害などの症状で治療が受ける患者が、実は肥満が影響していたり、逆に肥満の治療を受けている患者がうつに関連している可能性もある。

 Atlantis博士は「精神的な障害と肥満の関連について、医師はより多くの注意を払う必要がある」とし、「食品の選択や運動の習慣化といった健康的な生活習慣を促進させるために、多くの領域にまたがる介入が重要になるだろう」と述べている。

Strong link between obesity and depression(アデレード大学)
Common mental disorder and obesity: insight from four repeat measures over 19 years: prospective Whitehall II cohort study
British Medical Journal, 2009; 339: b3765

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[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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