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2010年02月23日

大豆製品・イソフラボンの摂取で2型糖尿病のリスクが低下

 厚生労働省の研究班は、大豆食品やイソフラボンを多くとっている女性では、2型糖尿病の発症リスクが低減するとする研究結果を発表した。ただし、この傾向は肥満の女性や、閉経後女性にだけみられた。大豆食品の摂取により肥満の女性の発症リスクは最大で38%減少した。

 この研究は、厚生労働省研究班「多目的コホート研究(JPHC研究)」(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)によるもので、米国栄養学会が発行する学術誌「Journal of Nutrition」に発表された。

 研究の対象となったのは、1990年と93年に岩手、秋田、長野、沖縄、茨城、新潟、高知、長崎の9保健所管内に住んでいた40歳から69歳の男女約6万人。対象者はベースラインと研究開始から5年後に行った調査時に糖尿病やがん、循環器疾患の既往歴がなかった。5年間追跡した調査結果にもとづき、大豆食品とイソフラボンの摂取と2型糖尿病発症との関連を調べた。

 日本人は平均的に、欧米人に比べ大豆食品をよく食べているが、大豆の摂取と2型糖尿病との関連を調べた研究は少ない。海外では、大豆食品などに多く含まれるイソフラボンを摂取することで、耐糖能が改善しインスリン抵抗性が低下したなど、2型糖尿病に対する有効性が示唆した研究が発表されている。

 研究開始から5年後に行なったアンケート調査結果をもとに、大豆食品やその成分であるイソフラボンの摂取量により5つのグループに分類し、その後の2型糖尿病の発症との関連を調べた。5年間に男性634人、女性480人が糖尿病を発症した

 その結果、男女ともに大豆食品・イソフラボン摂取と糖尿病発症とのあきらかな関連はみられなかったが、女性では摂取量が多いグループではもっとも低いグループに比べ、糖尿病発症のリスクが低くなった。

 研究班はさらに女性の肥満度に着目し、BMI(体格指数)が25未満の標準と、25以上の肥満に分け、さらに閉経前と閉経後のグループに分け比較した。肥満女性と閉経後女性においてのみ、大豆食品・イソフラボン摂取がもっとも低いグループに比べ多いグループで、糖尿病発症のリスクが低くなる傾向がみられた。肥満ではない女性や閉経前の女性ではこうした関連はみられなかった。一方、男性では喫煙習慣や肥満度を考慮しても、こうした関連はみられなかった。

 研究者らは「これまでに大豆食品やイソフラボンがインスリン感受性を改善するという知見が示されている。大豆食品を十分にとっていると、インスリン感受性が低下している肥満者に予防的に働きやすいかもしれない」と述べている。

 閉経後女性で糖尿病の発症リスクが低下した点については「女性ホルモン(エストロゲン)には糖の代謝や脂肪細胞の調節、脂質生成の阻害などの役割がある。それと構造が似ているイソフラボンにも弱いながら同様の作用があると考えられている。閉経後女性でのリスク低下にはそのようなメカニズムが関与している可能性がある」としている。

多目的コホートに基づくがん予防など健康の維持・増進に役立つエビデンスの構築に関する研究(JPHC Study)
Soy product and isoflavone intakes are associated with a lower risk of type 2 diabetes in overweight Japanese women
Journal of Nutrition, Vol.140, No.3, 580-586, March 2010

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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