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2010年06月23日

小麦フスマや全粒粉の摂取が糖尿病患者の死亡リスクを低下

キーワード
食事療法

小麦フスマには食物繊維が豊富に含まれ、カルシウムやマグネシウム、鉄、亜鉛なども含まれている。


パンなどの多くの食品に使われている小麦粉は、外皮の部分(フスマ)や胚芽を取り除いて、胚乳のみを粉にしたものが多い。

最近では、小麦フスマや全粒粉を使用したパンも出ており、健康増進に有用な食品として注目されている。

 小麦の外皮(フスマ)を豊富に含む、いわゆる全粒粉(ホールグレイン)食品をよくとっている2型糖尿病の女性では、心血管疾患による死亡と全死亡の危険性が低下することが、米国で行われた長期研究であきらかになった。
食事でフスマや全粒粉をとると、
心疾患の危険性が低下
 この研究は、米国で1976年に開始された大規模な長期研究「看護師健康調査(NHS:Nurses Health Study)」の参加者を対象に行われた。30歳以降に2型糖尿病と診断された女性患者7,822人を対象に、2年ごとに病歴、生活習慣、疾病などについて問診し、4年ごとに食品の摂取状況についてアンケートに答えてもらった。

 26年に及ぶ調査により、フスマや食物繊維を含む全粒粉の摂取量がもっとも多い2型糖尿病の女性では、もっとも少ない女性に比べ、心疾患疾患(CVD)による死亡リスクが35%低く、全死亡リスクが28%低いことがあきらかになった。

 小麦の外皮の部分(フスマ)に含まれる食物繊維は、他の食品に比べ群を抜いて多い。ビタミンやミネラルも含まれている。米国心臓協会(AHA)や米国糖尿病協会(ADA)などは、米国人の食事について、全粒粉を含むパンなどの食品をとることを勧めている。今回の研究はこれらを裏付ける結果になった。

 「全粒粉、特にフスマをとることが、2型糖尿病患者の死亡と心血管の危険性を低下させること示された。これは、全粒粉を含む食品の摂取と、糖尿病患者での死亡との関連を確かめた初めての研究だ」と米ハーバード大学公衆衛生大学院(ボストン)栄養学部のLu Qi氏は話す。

 「糖尿病患者はそうでない人に比べて、心疾患の危険性が2〜3倍に高まると報告されている。今回の研究が示す意味は大きい」。この研究は、米国心臓学会(AHA)が発行する医学誌「Circulation(循環器)」5月10日号に掲載された。

フスマの摂取が予防因子としての役割を果たす
 研究では、研究の参加者を対象に行ったアンケートをもとに、全粒粉やそれに含まれるフスマや胚芽の摂取量を推計した。摂取量に応じて、1日当たり最大9.7gから最小0.8g未満(それぞれ中央値)まで、5つのグループに分けて比較した。

 なかでも、フスマの付加摂取量がもっとも多いグループでは、付加摂取量のないグループに比べ、全死亡リスクが55%、心血管死亡リスクが64%低く、フスマの摂取が予防因子としての役割を果たすことが示された。

 フスマや全粒粉が死亡リスクを低下させる理由は分かっていないが、これら食品と炎症性バイオマーカー低下との関連がこれまでの研究でも指摘されている。

 「糖尿病患者で心疾患が起こりやすいのは、慢性的な炎症という因子が背景にあるからだとみられている。糖尿病があると、炎症と内皮細胞機能不全のバイオマーカーレベルが高くなる」とQi氏は話す。

 炎症を軽減することが血圧調節に関わる血管内皮細胞の機能を改善させ、心疾患の危険性を低下させる。糖尿病患者が全粒粉や食物繊維の多い食品をとることで、マーカーレベルが低下することが、これまでの研究でも示されているという。

Whole grain, bran intake associated with lower risk of death in diabetic women(米国心臓学会)
全粒粉や食物繊維の摂取を推奨(米国心臓学会)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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