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2010年06月29日

糖尿病の新しい診断基準が7月1日に施行

 糖尿病の新しい診断基準が、2010年7月1日に施行される。新基準では、「糖尿病型」の判定に、血糖コントロールの指標として多く用いられ、また診断の一部に用いられてきたHbA1cの基準が設けられた。血糖とHbA1cを同日測定し、その測定結果が両方とも糖尿病型であれば、1回の検査で糖尿病と診断できるようになる。
HbA1cを活用し、糖尿病を早期発見・治療
 今回の糖尿病診断基準の改訂のもっとも重要なポイントは、過去1、2ヵ月の平均血糖値を示す指標であるHbA1cを、診断基準の第一段階にとりいれたことだ。これにより、より多くの患者で、糖尿病の診断・治療を早期から開始できるようになると考えられている。

 HbA1cには、「糖尿病の特徴である慢性高血糖をあらわす指標として適している」「食事による影響を考えずに採血・検査できる」「日々の変動が血糖値よりも少ない」といった利点がある。日本では世界にさきがけてHbA1c値の測定の精度管理や標準化が進んでいる。

 新診断基準のHbA1cの判定基準値は6.5%(JDS値に0.4を加えた値)。これは、血糖値とHbA1cとの関連を計算した結果や、糖尿病網膜症の出現頻度から算出された値だ。

糖尿病の臨床診断のフローチャート
新しい糖尿病の診断基準では、1回の採血で血糖値とHbA1cの測定結果がともに糖尿病型であれば、糖尿病と診断できる。ただし、初回検査と再検査の少なくともどちらかで、必ず血糖値の基準を満たしている必要があり、HbA1cだけでは糖尿病と診断できない。
 糖尿病のある人では、治療を行わないでいるとさまざまな合併症が引き起こされる。しかし、糖尿病の病態の解明と治療は大きく進歩しており、適切な治療を早期から開始することで、合併症の発症を抑えられることが分かっている。HbA1cをより活用することで糖尿病の早期発見・治療を促す意義は大きい。
HbA1c表記も国際標準化へ向かっている
 HbA1cの表記法を国際標準化されたNGSP相当値に変更することが検討されている。これは、JDS値に0.4を加えた値になる。ただし日本糖尿病学会は、当面はNGSPに相当する値を海外の医学論文や国際学会での発表時のみに使用し、日常診療では1年後をめどに移行する予定としている。

 この国際標準値への移行を実施する時期などについて、医療機関や患者の混乱を避けるよう日本糖尿病学会が検討を重ねている。それまでは診断や治療などで、従来のHbA1c(JDS値)が引き続き使用される。

 また、糖尿病を診断するための検査では、10時間以上の絶食後に75gのブドウ糖を溶かした水を飲んで、その後の血糖値の変動から糖尿病を判定する経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)も用いられている。

 HbA1c検査に比べると、OGTT検査は手間がかかり患者の負担も多い。しかし、糖尿病の判定のための検査ではOGTTも重要な検査と位置付けられており、特に日本人の糖尿病では食後血糖値が高くなる症例が多く、軽い糖代謝異常(隠れ糖尿病)を詳しく調べるためには、空腹時血糖値の測定だけでは十分ではないと考えられている。

 そのため、HbA1cが糖尿病の判定基準を満たしていなくとも、糖尿病が疑われる人や、糖尿病を発症する危険性が高いとみられる人には、OGTTを実施することが勧められている。

社団法人日本糖尿病学会

この記事は糖尿病ネットワーク事務局が、5月27〜29日に岡山で開催された第53回日本糖尿病学会年次学術集会を取材し独自に制作したものです。
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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