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2011年06月29日

糖尿病の早期発見は「HbA1c」と「空腹時血糖」で 発症を高率で予測

 「HbA1c値」と「空腹時血糖値」の2つの検査を定期的に行うことで、糖尿病を発症する危険性の高い人を高い確率でみつけだすことができ、早期に治療を開始するために効果的であることが、筑波大学、虎の門病院の研究チームによる縦断的コホート研究であきらかになった。医学誌「Lancet」オンライン版に6月25日付で発表された。

 まだ糖尿病と診断されるほどではないが、血糖値が正常より高くなっている人は、年齢が高くなると2型糖尿病などの生活習慣病を発症する危険性が高いことが分かっている。“糖尿病予備群”と分かったときから食事や運動などの生活習慣を改善することで、病気の発症や進展を抑えられると考えられている。そのために、糖尿病のリスクを早期に発見する必要がある。

 研究を発表したのは、曽根博仁・筑波大学教授ら研究チーム。調査の対象となったのは、1997〜2003年に虎の門病院(東京)の人間ドックを受診し、ベースライン時に糖尿病と診断されていなかった24〜82歳の6241人(男性4670人、女性1571人)。

 「空腹時血糖値が高め(100〜125mg/dL、5.6〜6.9mmol/L)」、「HbA1cが高め(5.7〜6.4%、国際標準値)」という条件にあてはめ、4つのグループに分けて比較した。糖尿病の検査を毎年受けてもらい、糖尿病の発症を平均4.7年間追跡して調査した。

 空腹時血糖値が高めの人のうち糖尿病を発症した人は9%、HbA1cが高め(日本の検査値で5.3〜6.0%)の人で発症した人は7%だった。一方、空腹時血糖値とHbA1cがともに高めの人の場合、38%の人が糖尿病を発症した。調整後の糖尿病発症のハザード比は、空腹時血糖のみの検査では6.16、HbA1cのみの検査では6.00だったが、両方を行った場合は31.9に上昇した。

 HbA1c値は採血時から過去1〜2ヵ月の平均的な血糖値を示す。日本糖尿病学会は昨年に糖尿病の診断基準を改定し、HbA1cをより重視し、血糖値と同じ日の測定で糖尿病と判定できるようにした。今回の研究でも、HbA1c値と血糖値のどちらか1つだけの検査では発症リスクは6倍程度で、2つの検査を併用すると有効性が高いことが示された。

「糖尿病型」と「境界型(糖尿病予備群)」
 医療機関で血液検査を受け、血糖値が高く糖尿病の診断基準を満たしてる患者は“糖尿病型”と判定される。糖尿病ではない“正常型”と判定されるのは「空腹時血糖値が正常」、「経口ブドウ糖負荷試験で2時間値が正常」といった条件を満たしたとき。“糖尿病型”と“正常型”の中間にある場合は“境界型”と判定される。
 日本では境界型の診断と臨床との関連を調べた研究は多くはないが、米国などでは“糖尿病前症(prediabetes)”というとらえ方が定着しており、前症の段階から食事や運動などの生活習慣を改善することが大切だと考えられている。

HbA1c 5.7―6.4% and impaired fasting plasma glucose for diagnosis of prediabetes and risk of progression to diabetes in Japan (TOPICS 3): a longitudinal cohort study
The Lancet, Early Online Publication, 25 June 2011 doi:10.1016/S0140-6736(11)60472-8

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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