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2011年07月27日

糖尿病神経障害の病期分類やガイドライン作成など 【厚労省研究事業】

 厚生労働省は7月25日に、第64回厚生科学審議会科学技術部会を開催し、2010年度の厚生労働科学研究費補助金の成果に関する評価案を公表した。糖尿病合併症に関する大規模な研究も含まれている。

 厚生労働科学研究費補助金の研究事業は、行政政策研究分野、厚生科学基盤研究分野、疾病・障害対策研究分野、健康安全確保総合研究分野の4分野に大別される。

 2010年度は1533課題の研究を実施し、予算額は約472億円だった。このうち、個別の疾病・障害や領域に関する治療や対策を対象とする「疾病・障害対策研究分野」の予算額は293億円(62%)だった。

 集計課題数は「生活習慣病・難治性疾患克服総合」がもっとも多く150件で、学会発表の平均は97.0件、普及・啓発活動の平均は4.6件といずれも最多だった。

 糖尿病に関連する主な研究事業は次の通り――

糖尿病多発神経障害の臨床病期分類の確立と病期に基づいた治療ガイドラインの作成
主任研究者:八木橋操六(弘前大学大学院)
 神経障害は糖尿病合併症の中で最も早期に出現し頻度が高い。研究では日本での糖尿病多発神経障害の頻度と病期別頻度を調査し、その病期進展に関与する因子となる高血糖持続、高血圧、罹病期間などをあきらかにした。神経伝導検査、皮膚生検による表皮内神経線維密度分布が、進展の客観的指標として有用であることを解明し、多発神経障害の臨床病期分類案を作成。今後は管理・治療のガイドラインを提唱する予定。
[循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究]

糖尿病における失明、歯周病、腎症、大血管合併症などの実態把握とその治療に関するデータベース構築による大規模前向き研究
主任研究者:田嶼尚子(東京慈恵医科大学)
 糖尿病患者の合併症の実態を正確に把握するために、全国で糖尿病専門医の診察を受けている患者の糖尿病管理状況と合併症の実態を調査。「日常臨床でのHbA1c(JDS値)の平均値は7.1%で、目標値(6.5%未満)に到達していたのは34%」といった現状を確認。今後、イベント発生とそれに関連するリスク因子を同定することにより、有効かつ効率的な介入戦略を示すことを目指す。厳格血糖管理にともなう低血糖、体重増加、副作用、コスト、患者の不安などの軽減も考慮。
[循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究]

疾患多発家系集積データと大規模ジェノタイピングを併用した新規糖尿病発症原因遺伝子の同定とテーラーメード医療への応用
主任研究者:稲垣暢也(京都大学)
 既報のMODY1-6遺伝子変異を有さない糖尿病関連自己抗体陰性の糖尿病家族歴濃厚家系を集積し、全ゲノム連鎖解析、ハプロタイプ解析およびデータベースを用いた解析優先順位付け後に塩基配列決定を行い、日本人コホートを用いた検証解析を行った。疾患発症の原因遺伝子を解明すれば、糖尿病診断および成因分類に直接反映される可能性がある。
[創薬基盤推進研究(ヒトゲノムテーラーメード研究)]

臓器特異的ストレス応答探索マウスを用いた疾病予防法の開発
主任研究者:佐野元昭(慶應義塾大学)
 全身に少量のアルデヒドが慢性的に蓄積するモデルALDH2*2-TGマウスを用いて、酸化ストレス障害による疾病発症の機序や、臓器特異的抗酸化ストレス応答機構の分子機序を解明。糖尿病を合併した心不全患者へのインクレチン関連薬の投与が心機能や各種画像検査、バイオマーカーに与える効果を検討する臨床研究を開始する予定。
[創薬基盤推進研究(創薬総合推進研究)]

非アルコール性脂肪性肝疾患の病態解明と診断法、治療法の開発に関する研究
主任研究者:岡上 武(大阪府済生会吹田病院)
 糖尿病患者の肝障害の実態と、NASH肝癌の背景肝病変をあきらかにし、血液生化学的な単純性脂肪肝とNASHのスクリーニングを開発。糖尿病患者でのNASH/NAFLDの実態があきらかになり、肝障害を合併する糖尿病患者のフォローに有用な情報が得られた。NASH肝癌の背景病変があきらかにし、NASHからの肝癌の早期発見のための検査法も確立。NSNP解析によりNASH発症・進展の感受性遺伝子を同定し、老化のマーカーであるSMP-30を血清レベルで測定するめどもたった。
[肝炎等克服緊急対策研究]

医療連携モデルを基盤とした総合診療系医と領域別専門医の必要数算定法と専門医制度の検討
主任研究者:渡辺 毅(福島県立医科大学)
 医療需要にもとづく医療連携体制での必要医師数の算出法を検討し、必要医師数の算出の可能性を提示。また、疾患・病態ごとの目標受療率、医師養成に要する期間後の患者数、チーム医療の形態による医師の必要労働時間、総合診療系医師と領域別専門医の役割分担などの必要数算出の変動要因を明確化した。糖尿病と慢性腎臓病(CKD)を例として、病態に応じ医療ニーズに対応するために、各領域別の専門医と総合診療系医師の必要数を配置した地域医療連携(医療計画)を検討。
[地域医療基盤開発推進研究]

厚生労働省研究事業
第64回厚生科学審議会科学技術部会(厚生労働省)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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