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2012年08月16日

スタチンの有益性は糖尿病リスクを上回る

キーワード
医薬品/インスリン
 今年の初めに、スタチンの使用により、糖尿病を発症する可能性がわずかに増大するという調査結果が発表された。しかし、ボストンにあるブリガム&ウィメンズ病院からの新しい研究で、糖尿病を発症する危険性が高い患者においても、スタチン療法による便益性は糖尿病リスクを上回ることが示された。

 スタチンを服用すると、糖尿病を発症する危険性の高い患者においても、心臓発作や心筋梗塞といった心血管イベントが著しく抑えられることが確かめられた。

 スタチンは、肝臓でコレステロールが合成されるのを妨げるコレステロール降下薬。20年以上前から治療に使われており、心筋梗塞など心疾患の発症や再発を予防する効果が確立された薬とされている。

 今回の発表は、心疾患か糖尿病の既往歴をもたない男女1万7,603人を対象とした二重盲検試験である「JUPITER試験」の最新のデータをもとにしている。被験者はスタチン(1日にロスバスタチンを20mg)あるいはブラセボのいずれかを服用し、試験は5年続けられた。

 研究チームは心臓発作、心筋梗塞、観血的血管形成、深部静脈血栓症、肺塞栓症、全死因による死亡とともに、糖尿病の発症についても追跡調査した。

 5年間で、糖尿病の危険因子をもっていてスタチンを服用した患者は、ブラセボに比べ糖尿病を発症する危険性が28%上昇した一方で、心疾患の発症は39%、死亡は17%低下した。また、糖尿病の危険因子をもたない人では、ブラセボに比べ心疾患の発症は52%低下し、死亡は22%低下したという。

 「医師は、心臓発作や、心筋梗塞、死亡といった深刻な事態を、糖尿病の発症より重視する。危険性と有益性のバランスを考慮して行うから、最適の治療だといえる」と研究者は話す。

 「食事の見直しや運動の習慣化、禁煙といった生活習慣の改善を行った上で、心疾患の危険性が高いと医師が判断するとき、スタチン療法が検討される。今回の研究は、医師と患者の双方がよく考えた上で、スタチンが有望な選択肢となることをあきらかにしたものだ」と述べている。

Cardiac Benefits of Statins Outweigh Diabetes Hazard, Even Among Those With Highest Risks for Diabetes(ブリガム&ウィメンズ病院 2012年8月9日)

関連情報
スタチン療法を行った患者で糖尿病リスクがわずかに増加(糖尿病NET)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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