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2012年10月12日

SGLT2阻害薬 低血糖を起こさず血糖値を低下 EASD2012

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 新しい糖尿病治療薬として、SGLT2阻害薬の研究開発が世界的に活発化している。低血糖を起こさないで血糖値を下げる新しいタイプの治療薬として期待されているが、日本をはじめ、米国でも欧州でも承認されていない。ベルリンで開催された第48回欧州糖尿病学会(EASD 2012)では、SGLT2阻害薬のメタ解析の結果が発表された。

 SGLT2阻害薬は、インスリンを介さない新しい作用メカニズムをもち、血糖低下作用に加え、低血糖リスクが低いことや、体重減少作用も期待されている。

 糸球体でろ過された原尿には、血しょうと同じ濃度のブドウ糖が含まれているが、通常はほとんどのブドウ糖がSGLT2の働きにより血液中に再吸収される。SGLT2の働きを抑えることで、再吸収されるはずだったブドウ糖をそのまま尿として排泄させれば、血糖値は上昇しないというのがSGLT2阻害薬のコンセプトだ。

 SGLT2阻害薬の開発は世界各国で進められており、糖尿病治療薬の新たなターゲットとなっているが、海外を含めてまだ発売されたものはない。現在、国内外で臨床試験が実施され、安全性、有効性についてより多くの症例が集められている。

 ギリシャのアリストテレス大学のApostolos Tsapas氏らは、SGLT2阻害薬の臨床試験を検討し、SGLT2阻害薬の有効性および安全性についてメタ解析を実施した。

 米国糖尿病学会(ADA)、国際糖尿病連合(IDF)などの学術集会で発表された試験のうち、成人の2型糖尿病患者を対象とした39の試験を解析した。12週間以上にわたりプラセボまたは他の経口血糖降下薬と比較したランダム化比較試験(RCT)を取り出し、ベースラインからのHbA1cの変化を比較した。

 プラセボを対照群とした29件では、SGLT2阻害薬によりHbA1cは平均0.73%低下し、体重は平均で2kg低下した。他の経口血糖降下薬と比較した10件では、HbA1cは平均0.12%低下し、体重は2.56kg低下した。低血糖のリスクについては、対プラセボ群のリスク比は1.19倍と有意に高かったが、対他薬剤のリスク比は0.36倍で有意に低かった。

 気になる副作用だが、SGLTを阻害することで、多尿やそれに伴う感染症をもたらす可能性もあり、今後の検討課題となっている。尿路感染症のリスクについては、対プラセボ群のリスク比が1.28倍、対他薬剤ではリスク比1.30倍だった。生殖管感染症のリスクは、対プラセボ群のリスク比が4.00倍、対他薬剤ではリスク比5.25倍と、いずれも有意に高かった。

 「SGLT2阻害薬は、低血糖の発症リスクを高めることなく、HbA1cを低下させる効果があり、減量効果もあることが認められた。主な副作用としては尿路感染症と生殖管感染症があり注意が必要だ」とTsapas氏はまとめた。

欧州糖尿病学会(EASD)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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