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2013年08月14日

1型糖尿病患者のβ細胞減少を食事で抑制 魚の脂質が効果的

 発症して間もない1型糖尿病患者が、魚に含まれるオメガ3系脂肪酸などを食事で摂取すると、インスリンを分泌するβ細胞の減少をくいとめられる可能性があるという研究が米国で発表された。
オメガ3系脂肪酸とBCAAを摂取しβ細胞を保存
 1型糖尿病は、主に自己免疫疾患が原因でインスリンを分泌するβ細胞が壊され発症するタイプの糖尿病だが、あるとき突然に発症するわけではない。多くの場合でβ細胞は徐々に破壊されていき、1型糖尿病と診断されたばかりの時点では、残されたβ細胞が存在すると考えられている。

 食事で、魚類やクルミなどに含まれるオメガ3系(n-3系)脂肪酸と、小麦麦芽などに含まれる分枝鎖アミノ酸(BCAA)を多く摂取すると、β細胞の減少を抑えるのに効果的であるという研究が米国で発表された。

 この研究は、米疾病管理予防センター(CDC)と米国立衛生研究所(NIH)によって資金提供されている大規模研究「SEARCH for Diabetes in Youth study」の一環として行われた。米国糖尿病学会(ADA)が発行する医学誌「Diabetes Care」に発表された。

 研究に参加した患者が全てインスリン療法を必要としている点は変わらないが、β細胞が減少するのを防ぐことができれば、十分な量ではないにしても、ある程度のインスリン分泌を保つことができる。

 「β細胞が破壊されるのを防げれば、インスリン療法による血糖コントロールを行いやすくなります。将来の糖尿病合併症のリスクを減らすことができます」と、研究を主導した米ノースカロライナ大学ギリングス公衆衛生学部のエリザベス メーヤー-デイビス教授(栄養学)は述べている。

 1型糖尿病の治療ではこの数十年の間に、持効型インスリンや速効型インスリン、血糖自己測定、インスリンポンプの開発など、多くの改善が行われた。しかし、今回の発見はよりシンプルな方法である食事に着目している点が画期的だと、研究者は述べている。

オメガ3系脂肪酸が炎症を抑制
 研究の対象となったのは、発症してから平均9.9ヵ月の、小児から20歳までの若い1型糖尿病患者1,316人。研究チームは、1型糖尿病と診断されてから間もない患者を、平均24.3ヵ月にわたり追跡して調査した。

 その結果、オメガ3系(n-3系)脂肪酸とBCAAを含む食品をよく食べていた患者では、空腹時血中Cペプチド値の減少が少なく、β細胞がより長い期間、機能していることが分かった。研究に参加した患者の中には、研究期間の終了時にインスリン自己分泌が保たれている者もいた。

 BCAAは、小麦麦芽や大豆、ナッツ類、肉類などに多く含まれる。体内で生成することのできないアミノ酸で、筋肉量の維持などに欠かせない栄養素だ。BCAAのひとつであるロイシンが、インスリン分泌に関わっているとみられている。

 また、オメガ3系脂肪酸はイワシ、マグロ、サバなどの魚に多く含まれる。魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)には、炎症を抑制する生理活性作用があると考えれている。

 なお、これらの栄養素が、β細胞の減少をくいとめるのか、それとも残像するβ細胞のインスリン分泌を高める作用をするのかは、現在の時点では不明だ。また、これらの栄養素をサプリメントで摂取した場合に、同様の効果を期待できるかもよく分かっていない。

Diet additions may help youth with Type 1 diabetes keep producing own insulin(ノースカロライナ大学 2013年7月16日)
Nutritional Factors and Preservation of C-Peptide in Youth With Recently Diagnosed Type 1 Diabetes(Diabetes Care 36:1842–1850, 2013)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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