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グルカゴンによる低血糖対策が日本は不十分 1型糖尿病患者を調査
2013年09月27日
カテゴリー:1型糖尿病 2013年  糖尿病合併症 

 意識障害を伴う重症低血糖の対処法としてグルカゴン注射が推奨されているが、日本の1型糖尿病患者の間ではグルカゴンが十分に活用されていない可能性があることが、患者を対象とした調査で明らかになった。

グルカゴン所持を希望した患者は39%
 低血糖のほとんどは、血糖値を下げるために使用するインスリンや経口血糖降下薬などの糖尿病治療薬が原因で起こる。すなわち、注射で補ったインスリンの量、あるいは経口血糖降下薬の効果が血糖値を正常化するのに必要な量を上回ったときに起こる。具体的には、食事が遅れたときや、食事の量が少なかったとき、運動や労働がいつもより多かったとき、空腹時に運動を行ったとき、インスリンの単位数を間違えたとき、インスリンを注射した直後に激しい運動をしたときなどに、低血糖は起こりやすい。

 低血糖の対処法として、経口摂取が可能な場合は、ブドウ糖またはブドウ糖を含む飲料水を摂取することが推奨されている。しかし、重症低血糖が起こると、患者自身では対処できなくなってしまう。とくに意識障害を伴う場合は、経口摂取が不可能になってしまうという問題がある。

 日本糖尿病学会編『糖尿病治療ガイド2012-2013』では、「経口摂取が不可能な場合、ブドウ糖や砂糖を口唇と歯肉の間に塗りつけ、また、グルカゴンがあれば1バイアル(1mg)を家族が注射するとともに、直ちに主治医と連絡をとり医療機関へ運ぶ。1型糖尿病患者では、あらかじめグルカゴン注射液を患者に渡し、その注射方法について家族を教育しておくことが望ましい」と推奨している。

 厚生労働省の研究班(研究代表者:坂根直樹・京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室長)は、実際に1型糖尿病患者の間でグルカゴンがどれだけ利用されているかを調査した。

 研究班は、国内16ヵ所の医療機関を受診している15歳以上の1型糖尿病患者208人を対象に、自己回答式アンケートを行った。血糖値が50mg/dL未満の場合を低血糖とし、低血糖が起こった頻度を質問した。

グルカゴンの十分な説明を受けていない可能性
 「グルカゴンを所持しているか」、「使用したことがあるか」といった現状の調査を行い、さらにグルカゴンの効能に関する説明をした後で「グルカゴンの所持を希望するか」といった質問をした。

 その結果、グルカゴンを実際に所持していると回答した患者は15.9%で、うち実際に使用した経験があるのは6.0%であることが判明した。一方、グルカゴンの効能を知った上で、所持を希望した患者は39.0%に上った。

 低血糖が起こった頻度は、インスリン療法の種類(ペン型注入器による頻回注射法、インスリンポンプの使用)や、インスリンの剤型(溶解インスリンアナログ製剤、その他のインスリン製剤)では有意差がなかった。

 グルカゴン所持の背景をロジスティック回帰分析で探ったところ、グルカゴン知識テストの結果(オッズ比=24.1、95%信頼区間 3.2-183.3、P=0.002)と、1年以内の重症低血糖症の経験(オッズ比=4.8、95%信頼区間 2.0-12.0、P=0.001)とグルカゴン所持の関連性が見られた。すなわちグルカゴンに関する知識の豊富な患者と過去1年以内に重症低血糖症の経験がある患者に、グルカゴンを所持しているものが多いことが明らかになった。

 今回の調査で示されたグルカゴンの所持率15.9%は、カナダ(82%)、ニュージーランド(54%)、オーストラリア(92%)、イスラエル(60%)に比べ際立って低い。

 重症低血糖が起きた場合にグルカゴンを使用することが治療ガイドラインで推奨されているにもかかわらず、実際には十分に活用されているとはいえない現状について、調査に当たった国立病院機構京都医療センター糖尿病センターの村田敬氏は「本調査において、実際にグルカゴンを所持している患者の割合とグルカゴンの所持を希望する患者の割合に少なからぬ差が見られることから、主治医などからグルカゴンについて十分に説明を受けていない可能性が考えられる」と、指摘している。

Glucagon Underutilized Among Type 1 Diabetes Mellitus Patients in Japan
Diabetes Technology & Therapeutics, Volume 15 Number 9, 2013.

参考文献:日本糖尿病学会編「糖尿病治療ガイド2012-2013 血糖コントロール目標改訂版」
[ Terahata ]
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