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2014年04月18日

糖尿病患者になりやすい遺伝子を発見 新たな治療法の開発に期待

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医療の進歩
 2型糖尿病患者で高頻度に認められる2ヵ所のゲノム構造多型を、東北大学大学院医学系研究科糖尿病代謝内科学分野の片桐秀樹教授らの研究グループが新たに発見した。以前の研究で糖尿病との関連を報告していた別の部位のゲノム構造異常がある糖尿病患者は、今回の2ヵ所の異常も併せもつことが多い。3ヵ所すべてに異常があれば、非常に糖尿病になりやすいという。

 日本に950万人いる糖尿病有病数の大多数を2型糖尿病が占めている。2型糖尿病は生活習慣要素に加え、家族内での発症が多く、遺伝因子も大きく関わることが知られている。一方で過去の研究では、発症リスクが最大でも1.4倍程度の一塩基遺伝子多型(SNP)しか発見されておらず、「糖尿病体質」を説明する決め手に欠けていた。

 そこで研究グループは2011年に、35歳未満発症の日本人2型糖尿病患者100例と日本人健常対照者100例に対して、ゲノムコピー数多型(CNV)の解析を行った。CNVは大きな構造変化を伴う新たな種類の遺伝子多型で、遺伝子などの配列の重複や欠失を伴う500塩基対以上の大きなゲノム領域の構造変化だ。現在までにCNVはヒトゲノム上に約1万6,000ヵ所あることが確認されている。

 その結果、2型糖尿病群の100例中13例と極めて高頻度に認められるゲノム構造異常(第4番染色体4p16.3領域におけるコピー数の減少)を世界ではじめて発見した。今回の研究では、同じ2型糖尿病群と健常コントロール群の解析をさらに進め、2型糖尿病と関連するさらに2ヵ所のゲノム構造異常(第16染色体16q24.2-3領域と第22染色体22q13.31-33領域)を発見した。

 さらに、1人の患者が3ヵ所のゲノム異常を併せもつことが多いことを突き止めた。糖尿病群では100例中11例に3ヵ所のゲノム異常がみつかったが、健常対照者では100例中ゼロだった。

2型糖尿病患者で見出された3ヵ所のゲノム構造異常 糖尿病リスクのマーカーとなることが期待される
 このことから、3ヵ所の部位にゲノム異常があると糖尿病になりやすいこと、つまりこれらの部位が糖尿病発症を正確に予測するDNAマーカーになることが明らかになった。2型糖尿病患者の血縁者などにこれらのゲノム異常を検査することで、糖尿病の発症や病態を予測できるようになる。2型糖尿病の遺伝的なリスクが高い人でも、発症前からの生活習慣への介入により、発症を防ぐことが可能になるという。

 今回の研究は、2型糖尿病の遺伝的要因の解明に大きく貢献するもので、本検査法に関して特許も出願した。研究グループは「複数のゲノム構造異常をもとつ人が糖尿病群に多くみられたことから、ゲノム構造変化を起こす原因、つまりゲノム構造修復機能低下のような体質が2型糖尿病発症につながる可能性などが考えられる。全く新しい視点からの発症遺伝因子の解明や、新たな治療法も開発できる可能性がある」とみている。

 この研究成果は、「PLOS ONE」に4月7日付けで「Simultaneous copy number losses within multiple subtelomeric regions in early-onset type2 diabetes mellitus」のタイトルで発表された。

東北大学大学院医学系研究科 糖尿病代謝内科学分野
Simultaneous copy number losses within multiple subtelomeric regions in early-onset type2 diabetes mellitus(PLOS ONE 2014年4月7日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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