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2014年05月28日

アルコールを飲みすぎてない? 知っておきたい「飲酒ルール」

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食事療法
 世界保健機関(WHO)はアルコール性疾患に関するレポート「アルコールと健康 2014」を5月12日に発表した。世界のアルコールが原因の死亡者の数は年間330万人に上るという。
年間330万人がアルコールが原因で死亡
 世界保健機関(WHO)が発表したレポート「アルコールと健康 2014」によると、アルコールの消費量は世界的に増加傾向にある。

 調査は、WHOに加盟する194ヵ国を対象に行われた。それによると、アルコールが原因で死亡する人の数は世界中で年間330万人に上る。

 亡くなった人の20人に1人がアルコールが原因だったと推定されている。その数は、結核やエイズ(後天性免疫不全症候群)などを上回る。

 また、アルコールが原因の死亡の死因でもっとも多かったのは心臓病と糖尿病で、33.4%を占めた。過度の飲酒は、がんの発症リスクも高める。がんは死因の12.5%を占めていた。

日本人男性の3人に1人以上はアルコールを飲み過ぎている
 世界の15歳以上の人の平均アルコール摂取量は年間6.2リットルに上る。1日に缶ビールを1本ずつ飲んでいる計算になる。

 しかし、深刻なのは深酒する人が増えていることだ。38.3%は年間に17リットル(1日に缶ビール2.6本)のアルコールを飲んでいるという。

 日本では、アルコール摂取量の平均は年間人口当たり7.2リットルに上り、飲酒習慣のある人に限ると、男性は平均13.7リットル(1日に缶ビール2.1本)、女性は平均6.7リットル(同1本)のアルコールを消費している。

 飲酒習慣のある日本人のうち、男性の36.9%と女性の12.0%は、アルコールを飲み過ぎている。

 「アルコールが健康に障害をもたらすことを、もっと多くの人に認知してもらう必要があります。実際には、多くの国で効果的な対策がとられていません」と、WHOの非感染性疾患分野の責任者であるオレグ チェストノフ氏は言う。

 アルコールの関税を上げる、飲酒可能年齢を引き上げる、市場に出るアルコール類の量を制限するなどの対策を行っているのは、全体の3分の1の66ヵ国だった。

これだけは知っておきたい「健康を守るための飲酒ルール」
 アルコールは、アルコールそのもの作用や、アルコールの代謝に伴い血糖値に影響を与える。多量飲酒は血糖コントロールが乱れる原因となり、特に肝障害や膵障害が加わるとコントロールが難しくなる。そのため、糖尿病患者は多量飲酒は避けるべきとされている。

 適度な飲酒はむしろ健康に良いと思っている人は少なくない。実際に「お酒を飲み過ぎたり、まったく飲まないよりも、適度に飲むことで死亡率は低くなる」、「適度な飲酒は糖尿病の発病に抑制的に働く」という調査結果も発表されている。

 しかし、アルコールの健康増進の効果を得られるのは、適量を飲んでいる場合に限られる。アルコールの適量には個人差があり、同じ人であってもその日の状態によって酔い具合が異なるため、一概には決められない。

 糖尿病のある人では、肝臓病や合併症のある人では、基本的に禁酒が求められるが、米メイヨークリニックは、「健康を守るための飲酒ルール」を提案している。これをもとにご自分や家族の飲酒習慣をもう一度振り返ってみてはいかがだろう。

健康を守るための飲酒ルール

・ 適度な飲酒を守る 缶ビールは1〜2本以下が目安
 一般的に2〜2.5ドリンクのお酒を限度にすると、飲み過ぎを防げる。これはアルコール量にすると約20〜25g、缶入りビール(350mL)だと1〜1.5本に相当する。このくらいの量であれば、ほどよくお酒を楽しめるというわけだ。

・ 定期的に肝臓の検査を受ける
 アルコールは主に肝臓で代謝されるので、飲みすぎにより肝臓病が起こりやすくなる。はじめは脂肪肝で、飲み続けているとアルコール性肝炎に進展することもある。定期的に肝機能検査を受けて、飲み過ぎていないかチェックしよう。

・ ビールを飲むと顔が赤くなる人は要注意
 ビールコップ1杯程度で顔面紅潮が起こる人は、フラッシング反応が起こる体質の人だ。アルコールからできたアセトアルデヒドの分解が遅いため、こうした反応が起こる。この体質の人は、食道や咽頭のがんなどのリスクが高いことが分かっている。

・ 女性・高齢者はお酒を少なめに
 中年男性に比べて、女性や高齢者は飲酒量を控えた方が良い。女性の飲酒には「血中アルコール濃度が高くなりやすい」、「乳がんや胎児性アルコール症など女性特有の疾患リスクが高まる」「早期に肝硬変などになりやすい」などのリスクが伴う。缶入りビール1本以下を目安すると良い。

・ お酒の飲み過ぎは認知症の原因にも
 大量飲酒は脳萎縮につながる。大量の飲酒は認知症の危険性を高めることが、いくつかの研究で確かめられている。ただし、適度な飲酒であれば、認知症の予防になる可能性もある。「お酒に飲まれない」ようにして、ほどほどのところで切り上げるのが効果的だ。

・ 食事と一緒にゆっくりと
 空腹時に一気に飲んだりすると、アルコールの血中濃度が急速に上がり、悪酔いしたり場合によっては急性アルコール中毒を引き起こす。体を守るためにも濃い酒は薄めて飲むようにしよう。

・ アルコールは睡眠の質を悪くする 寝酒を控えよう
 アルコールは少量なら気持ちをリラックスさせたり、眠くなる効果があるが、大量に飲むと、睡眠を浅くする。飲むと寝つきは良くなるが、夜中に目覚めてその後なかなか眠れないという現象が起こる。健康な深い睡眠を得るためには、アルコールの力を借りない方が良い。

・ 薬の治療中は飲酒をなるべく控える
 アルコールは薬の効果を強めたり弱めたりする。また睡眠薬などといっしょに飲むと、互いの作用を高める場合がある。薬はお酒で飲まないようにしたい。

・ 妊娠・授乳中はノーアルコール
 妊娠中の女性が飲酒をすると、胎児性アルコール症候群(胎児に発育遅滞や器官形成不全などが起こる疾患)や発育障害を引き起こす。妊娠中あるいは妊娠しようとしている女性はアルコールを断つことが必要。

WHO calls on governments to do more to prevent alcohol-related deaths and diseases(世界保健機関 2014年5月12日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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