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2014年10月03日

足の血行障害「閉塞性動脈硬化症」はカテーテルで治療できる

 「たびたび休憩しないと歩けなくなった」「足の色が悪い」「足の脈がふれにくい」といった症状のある人はいないだろうか。そうした場合、「下肢閉塞性動脈硬化症」が疑われる。下肢閉塞性動脈硬化症の治療は進歩している。
足の血行障害「下肢閉塞性動脈硬化症」
 下肢閉塞性動脈硬化症は、動脈硬化が原因となり下肢の動脈が細くなる(狭窄する)、あるいは詰まる(閉塞する)病気だ。少し歩くと太ももの裏やふくらはぎが痛くなり、休むと再び歩くことができるという症状(間欠性跛行)が特徴的だ。さらに重症化すると足の冷感が強くなり、安静にしていても足が痛くなる。あるいは足に潰瘍や壊疽ができても治らなくなる。早急な治療を行わなければ、足を切断しなくてはならないこともある。

 下肢閉塞性動脈硬化症の治療法として目覚ましい成果を出しているのが「カテーテル治療」だ。血管内手術の技術の発達により、体の負担が少なく十分な治療効果を得られるようになってきた。適切な治療を受ければ、劇的な症状の改善が望めるという。

 カテーテル治療は、細い管(カテーテル)を血管の中に通し、バルーン(風船)をふくらませて血管を広げ、血管の詰まりなどを取り除く治療法のこと。間歇性跛行の症状では、歩行距離が伸び、安静時痛のある症例では、痛みの改善、また壊死の危険を回避できる。

 カテーテル治療は低侵襲治療で、身体への負担が少ない。血流が回復することで、治療後すぐに足がポカポカするなどの大きな改善を期待できる。血流改善で足の痛みがなくなり、身体が動かしやすくなり、糖尿病の血糖コントロールに欠かせない運動を生活に取り入れるチャンスが広がる。

足潰瘍・壊疽患者のカテーテル治療による血流変化を検証
 国立循環器病研究センター血管科医長の河原田修身氏らの研究チームはこのほど、動脈硬化で足に潰瘍や壊疽を来した患者へのカテーテル治療がもたらす血流改善効果を明らかにした。

 これまで提唱されてきた膝下動脈の血流分布(アンギオサム)理論に従わなくても同等の血流改善効果が得られることが、皮膚潅流圧(SPP)の測定で裏付けられたという。

 アンギオサム理論は、各動脈が支配する皮膚や筋肉、骨などの3次元的な領域を示し治療に活用するという考え方で、特に形成外科の分野で用いられてきた。近年は動脈硬化による足の潰瘍や壊疽の場合でも、皮膚上の2次元的な地図として導入されている。

 膝下には主に3本の動脈が走っており、2次元的な同理論に従えば足背側に傷がある場合は前脛骨動脈を、足底側に傷がある場合は後脛骨動脈を治癒する必要があるが、その有用性は実臨床の場では一定の見解が得られていなかった。

 そこで研究チームは、足の潰瘍や壊疽の患者に、治療前後にレーザードプラー血流計で測定していた足背と足底の皮膚潅流圧(SPP)の変化を後ろ向きに検討した。

 すると理論通りの変化を示したのは半数程度で、残りは前脛骨動脈であれ後脛骨動脈であれ、脛骨動脈のカテーテル治療によって足背と足底ともに同等な血流改善を認められた。

 「実臨床では必ずしも理論上の2次元アンギオサムに従っていない」との見解を示し、その理由の1つに「足の潰瘍や壊疽の患者では各動脈を結ぶネットワークがあり、多くの場合は脛骨動脈1本の治療だけでも足全体の血流が改善する」と、河原田氏は説明している。

 「足の潰瘍や壊疽の患者に対するカテーテル治療では、アンギオサムに固執せず、まずは技術的に安全確実に治療可能と考えられる動脈を治療し、少なくとも1本の血管で血流改善を確立することが重要となる。また、それでも不十分な場合には追加のカテーテル治療を段階的に考慮することが望ましい」とまとめた。

国立循環器病研究センター

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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