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2014年12月02日

特定保健指導で医療費が3割減に 厚労省WGが糖尿病などで検証

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 厚生労働省は21日、特定保健指導に参加した人のメタボリックシンドローム関連の疾患(高血圧症・脂質異常症・糖尿病)の医療費は、参加しなかった人に比べて3割以上低かったとする調査結果を公表した。
特定保健指導には医療費の削減効果がある
 特定健診(メタボ健診)後の特定保健指導は、40〜74歳を対象に2008年度から始まった。腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上で、かつ血糖、血圧、脂質のうち1つでも異常があれば、生活習慣の改善を促す保健指導を行う。

 同省のワーキンググループが2008〜11年度の4年間で、初めて保健指導の対象となった約22万人を検証。各年度で保健指導の参加者と不参加者を分けて、メタボ関連疾患である高血圧症、脂質異常症、糖尿病で、翌年度の通院医療費を比較した。

 その結果、2008年度に特定保健指導を受けた人の翌年度の医療費は保健指導を受けなかった人に比べて男性は5,340円(34.8%)、女性は7,550円(34.0%)低かった。

 4月に公表された中間報告でも、特定保健指導によって、翌年の検査値データが改善したことが示された。積極的支援の終了者の方が不参加者よりも、腹囲、体重をはじめ血圧、脂質、血糖などの検査指標に有意に改善していた。動機付け支援終了者でも、有意な改善を認める検査項目が多かった。

 今回解析しなかった脳卒中や心筋梗塞、糖尿病合併症についても、年度内に公表する予定だ。ワーキンググループは「特定保健指導に一定程度の効果があることが明らかになった」と指摘している。

特定保健指導の効果を22万超を対象に検証
 厚生労働省は、特定保健指導の積極的支援などを終了した人で、翌年度の医療費の適正化効果が得られたことを示す、「レセプト情報・特定健康診査等情報データベース」(NDB)の分析結果を公表した。

 調査結果は、同省の「特定健診・保健指導の医療費適正化効果等の検証のためのワーキンググループ」がまとめたもの。分析の対象となった保険者数は22万1,404人。

 2008〜2011年度の特定健診で測定した腹囲や血圧などが基準値を上回り、特定保健指導の対象になった人のうち、▽はじめて特定保健指導を受け6ヵ月後の評価を終了した人(介入群)、▽過去に一度も特定保健指導を受けていない人(対照群)を対象とした。

 翌年度の1人当たりの入院外医療費を算出して比べることで、特定保健指導の医療費適正化効果を調べた。

 調査では、短期的な医療費の影響を把握するため、メタボリックシンドロームの関連疾患である高血圧症と脂質異常症、糖尿病の3疾患の外来受診について、レセプトを用いて合併症に移行する前段階の治療(主として投薬治療)の保険診療費を算出した。

 その際、脳卒中や心筋梗塞、糖尿病合併症については、発症までに10年以上の期間を要する場合が多いことから、今回の分析の対象から外した。

 また、活用したのは全保険者のデータのうち、2009〜2012年度に特定健診のデータがある加入者について、その年度のレセプトデータと8割以上突合できる保険者のものに限定した。

 該当するのは計365保険者で、その内訳は国民健康保険が321、健康保険組合が2、共済組合が42。全国健康保険協会(協会けんぽ)のデータは入っていない。

積極的支援の参加者は医療費が3割以上減少
 その結果、例えば2008年度の積極的支援の参加者と不参加者とで、翌年度の1人当たり入院外医療費を比べると、男性では参加者1万20円、不参加者1万5,360円となり、参加者の方が5,340円(34.8%)低かった。

 それ以外の年度でも保険診療費は参加者の方が低くなり、その差は2009年度に特定保健指導した場合で7,030円、2010年度で5,320円、2011年度で5,020円だった。

 女性も同様の傾向で、その差は2008年度に特定保健指導した場合で7,550円(34.0%)だった。2009年度で4,380円、2010年度で4,790円、2011年度で2,590円となり、いずれも積極的支援の参加者で保険診療費は低くなっていた。

 なお、特定保健指導のうち、積極的支援よりも支援対象者への関与が少ない動機付け支援についても分析したところ、40〜64歳では参加者と不参加者の差が小さく、有意な差がみられない年齢階級や年度も少なからずあったという。ただ、65歳以上では、男女とも参加者の医療費が不参加者と比べて有意に低かった。

 特定保健指導の参加者(40〜64歳)の保険診療費の平均値を比べたところ、翌年度の保険診療費の平均値を100%とすると、介入群の平均値は、▽積極的支援(男性65.2%、女性66.0%)、▽動機付け支援(男性65.9%、女性80.0%)となり、いずれも介入群の方が低かった。

 ワーキンググループは分析結果について、「特定保健指導に参加することで、健康への関心が高まる。これまで健診を受けていたが十分説明を受けていなかった人が、動機付け支援の初回面接を機会に、健康管理の必要性を理解し、薬物治療に入る前に生活習慣改善に取り組みたいという意欲が高まるのではないか。地域の健康づくり資源の情報を得る機会が増えることなども影響している」と考察している。

第13回保険者による健診・保健指導等に関する検討会(厚生労働省 2014年11月21日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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