ニュース

2015年09月10日

アジア系米国人で糖尿病が急増 半数以上が「治療を受けていない」

 米国の成人の半数が糖尿病、または糖尿病予備群であること明らかになった。日系人を含むアジア系米国人で糖尿病有病率が高く、半数以上は糖尿病と診断されておらず治療も受けていないという。
米国の成人の半数が糖尿病か糖尿病予備群
 米国の成人人口の約半数が糖尿病、または糖尿病予備群であることが明らかなった。2011~12年の調査によると、成人の12.3%が糖尿病で、38.0%が糖尿病予備群である「糖尿病前症」と推定されている。

 調査は米国立糖尿病・消化器病・腎臓病研究所(NIDDK)の研究チームによるもので、2万6,000人以上の米国人を対象に実施された。糖尿病の判定は空腹時血糖および食後2時間血糖によって行われた。

 それによると、米国の糖尿病有病率は1988~94年には9.8%だったが、2001~02年には10.8%に、2011~12年には12.3%にそれぞれ上昇した。

 糖尿病患者の数は、過去数十年にわたって増加を続けていたが、現在は横ばいの傾向にあるという。

アジア系で糖尿病発症率が上昇
 研究者によると、「糖尿病の有病率が頭打ちになった」兆候がみられるという。これについては、2007~2012年に米国での肥満傾向が、ほぼ横ばい状態になったことと一致している。

 ただし、この傾向は日系人を含むアジア系にはあてはまらないという。アジア系では糖尿病発症率が上昇している。

 糖尿病有病率は、白人で11.3%であるのに対し、アジア系で20.6%となっており2倍近く高い。さらに、アジア系の51%は糖尿病と診断されておらず、自分が糖尿病であることを知らないという。

 糖尿病は米国で主要な死因となっている。糖尿病の治療を行わずに放置しておくと、やがて心臓病や脳卒中を発症しやすくなる。神経障害や腎臓病、失明などの危険性も高まる。

 「糖尿病を発症する人を早期に発見して、治療を開始することが、糖尿病合併症を防ぐために必要です。我々は糖尿病をもつ人を助けるために治療を行えます。しかし、治療を行うために、糖尿病の診断が必要です」と、NIDDKのグリフィン ロジャーズ氏は言う。

 肥満が増えると2型糖尿病の発症率か上昇する傾向があるが、アジア系は体格指数(BMI)が低い段階で2型糖尿病を発症しやすいことが知られている。

 米国健康・栄養調査(NHANES)のデータによると、米国人のBMIの平均は29で、BMIが25~30であると過体重と判定される。アジア系ではBMIの平均は25以下だが、糖尿病の発症率は高い。

 アジア系は遺伝的に、欧米人に比べてインスリン分泌能が低く、痩せていても2型糖尿病を発症しやすい。それに加えて、米国ではアジア系で欧米型の肥満が増えている。

アジア系は“BMI 23以上”の段階で要注意
 アジア系の人のほとんどは、米国式の生活パターンに適応し、食生活などは伝統的なスタイルから大きく変化している。炭水化物中心の食事から肉食に変わり、カロリーと脂肪の摂取が増え、ファストフードなどを多く摂取するようになった。車で移動するようになり、ウォーキングや運動の頻度は減っている。

 遺伝的な要因と生活習慣による要因が重なり、糖尿病を発症する。運動不足や身体活動の低下も、糖尿病の要因となっている。

 「アジア系の糖尿病ではやせている人が多い。太っていなくとも糖尿病になりやすい体質といえる。ただし、やせていても、腹囲周囲径をみると、体に脂肪がたまっている人が多い。内臓脂肪の蓄積が2型糖尿病の要因となっているおそれがある」と、研究者は指摘している。

 また、アジア系の糖尿病患者では、糖尿病の診断が遅れるケースが多く、血糖コントロールがすでに悪くなった状態で診断されることが多い。

 米国糖尿病協会(ADA)は、「健診で糖尿病を早期発見するために、アジア系では“BMI 23以上”の段階でスクリーニング検査を行う必要がある」と指摘している。

 ジョスリン糖尿病センターの研究者は「アジア系米国人は、肥満のレベルに至っていなくても糖尿病と診断されている。従来の“BMI 25以上”という基準を適用し続ければ、糖尿病リスクのある多くのアジア系米国人が見逃されるだろう」と述べている。

Half of American Adults Have Diabetes or Prediabetes(アメリカ国立衛生研究所 2015年9月8日)
Prevalence of and Trends in Diabetes Among Adults in the United States, 1988-2012(米国医師会雑誌 2015年9月8日)

[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲