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2016年10月07日

冬に気持ちが落ち込む「季節性うつ病」 メンタルを強くする5つの方法

 「落ち込むことが多くなった」「憂鬱な気分がする」「体もだるいし疲れやすくなった」。そう感じている人はいないだろうか? もしそうであれば、秋から冬にかけて発症が増える「季節性うつ病」が疑われる。
冬になると発症が増える「ウインターブルー」
 うつ病の中に、秋から冬にかけて毎年症状があらわれる「季節性うつ病」がある。この病気は、「季節性感情障害」(SAD)ともいわれている。

 季節性うつ病の特徴は周期性にある。毎年、日照時間が短くなる10月から11月にかけて症状があらわれはじめ、日差しが長くなる3月頃になると回復するというサイクルを繰り返す。その症状から「ウインターブルー」(冬季うつ病)という別名がある。

 季節性うつ病は、症状が重いと日常生活に支障をきたすこともある深刻な病気だ。

季節性うつ病の主な症状
□ 気分が落ち込むことが多い
□ 以前ならこなせた仕事をうまく処理できない
□ ぐったりとして疲れやすい、体を動かすのがおっくうになる
□ 今まで楽しんできたことを楽しめない
□ 考えたり、集中する力が明らかに落ちている
□ ふだんより睡眠時間が長くなったり、朝起きられなくなる
□ 食欲が減退したり、逆に亢進し、炭水化物を中心に食べ過ぎてしまう
なぜ秋から冬にかけて発症が増えるのか
 なぜ秋から冬にかけての時期に季節性うつ病を発症しやすくなるのかというと、日照時間が減ることによって、脳内における「セロトニン トランスポーター」(SERT)と呼ばれるタンパク質の量が著しく変動するためだ。

 デンマークのコペンハーゲン大学の研究チームは、季節性うつ病の患者と健康な人を対象に、陽電子断層撮影法(PET)という検査を行い、脳にどのような変化が起きているかを調べた。

 その結果、うつ病の兆候がみられる人、特に冬に発症した人は夏に発症した人に比べ、SERTレベルが5%高くなっていることが判明した。

 SERTは脳内の神経伝達物質である「セロトニン」を回収することで、神経伝達を調節している。SERTレベルが上昇し、セロトニンの量が不足することが、うつ病の一因になっている。
「体内時計」の乱れも原因に
 季節性うつ病のもうひとつの原因は、「体内時計」の乱れだ。理化学研究所脳科学総合研究センターの研究チームは、冬に体内時計が乱れやすくなる理由を調べた。

 人の体には「概日時計」と呼ばれる体内時計を調整する機能が備わっており、睡眠と覚醒や、ホルモン分泌のリズムを整えている。脳の視床下部にある「視交叉上核」と呼ばれる神経が、体中の概日時計をコントロールし、いわばオーケストラの指揮者のような役割を果たしている。

 例えば時差ボケやシフトワーク、不規則な生活が続くと、気分がすぐれなくなったり、体調不良が起こるのは、視交叉上核がうまく働かなくなるからだ。暗い時間が長い秋や冬になり、この概日時計が日差しの明暗に同調できなくなると、生理機能に影響が出てくる。

 研究グループは、概日時計を調整する領域は2つあり、夏には反発しあって同調性のズレが大きくなり、冬には引き合って小さくなることを突き止めた。視交叉上核は1日の周期だけでなく、1年の周期も読みとっているという。
朝の光を積極的に浴びると改善する
 季節性うつ病の予防や治療には、午前中に起床して太陽の光を浴びる、規則正しい生活習慣が効果的だ。日差しが短くなり始める秋からは、ウォーキングや通勤時間などを活用し、積極的に朝の光を浴びるとよい。

 日中に太陽光を浴びるとセロトニンという物質が作られる。セロトニンは、脳から分泌される睡眠ホルモンであるメラトニンの原料となる。太陽の光が少ない冬の期間は、セロトニン減少が起きメラトニンが十分に生成されない。

 メラトニンには、季節のリズム、睡眠・覚醒リズム、ホルモン分泌のリズムといった概日時計を調整する作用があり、不足することで変調をきたしやすくなる。
季節性うつ病を緩和するための5つの対処法
 米国家庭医アカデミーは、季節性うつ病の対処法として次のことをアドバイスしている。

1 栄養バランスの良い食事をする

 セロトニンが不足すると、脳の働きに不調が起こる。食事でセロトニン生成に必要なタンパク質やビタミン、ミネラルなどの栄養素を十分に摂取することが大切だ。肉、魚、大豆などのタンパク質にはセロトニンの生成に必要な必須アミノ酸のひとつである「トリプトファン」が含まれているので、過不足なく摂ることが勧められる。

2 ウォーキングなどの運動をする

 寒い季節はできるだけ動きたくないかもしれないが、運動を習慣化することで心身にもたらされる改善効果は大きい。

 活発な運動によって、気持ちをコントロールする神経伝達物質のひとつ「ドーパミン」が分泌され、気分が落ち込んでいたり、イライラに悩まされているときに、症状を改善する効果を得られる。

 日光のもとで早歩きするだけでも大きな違いがある。運動をすることで、爽快感や活動的な気分も得られる。運動をはじめることは、生活スタイルを改善するための第一歩になる。

3 自分の感情を話せる人をみつけよう

 季節性うつ病を抱えて、一人で悩んでいると、気持ちの落ち込みが余計に増大してしまう。そこで、その気持ちを誰かに話してみよう。

 もし身近に自分の感情を話せる人がいないのなら、サポートグループを見つけて、そこで自分の気持ちを話してみよう。なるべく外に出て人に会うことで、気持ちがすっきりするのが実感できるはずだ。

 直接的な「社会参加」に加え、自然や歴史に触れたり、地域の隠れた名店を探すなどの趣味をもったり、誰かとおしゃべりをしたりすることもきっかけになる。

4 自宅・仕事場を明るくする

 季節性うつ病の改善に必要なのは、自然の光により多く当たることだ。とはいえ、冬は日が短くなるので、なかなかそうもいかない。可能であれば、自宅や仕事場の照明を明るいものに取り替えると効果的だ。

 治療では「高照度光療法」が行われることが多い。太陽光やそれと同等の光を浴びることで体内時計を調節して生体リズムを整える治療法で、多くの患者で効果があるという。

5 「ToDoリスト」を作り整理する

 やるべきことが山積みになっていると、気分も萎えがちだが、タスクやプロジェクトが順序良く、きちんと整理されていると、落ち込みや憂鬱感を緩和できる。

 「ToDoリスト」を作成し、実行可能なものに優先順序を付けて、自分に合った生産性向上スタイルを身に付けると、自分が取り組むべき目標やタスクが明確になる。手付かずのタスクだらけになり、頭を悩ますことからも解放される。タスクからタスクへスムーズに移ることができれば、気分が落ち込むことも少なくなる可能性がある。

American Academy of Family Physicians(米国家庭医アカデミー 2016年9月12日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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