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2017年02月03日

「低炭水化物ダイエット」は短期間であれば安全 効果には疑問の声も

 低炭水化物ダイエットをこれから始めようという人は注意が必要だ。米国のメイヨー クリニックの研究で、短期間の炭水化物を制限するダイエットは効果があるが、脂質を制限したダイエットに比べて、長期的には減量効果をそれほど得られないことが分かったという。
 「低炭水化物ダイエットの安全性を長期的に確かめた研究はない」と、研究者は注意を促している。
炭水化物を減らすと脂質を摂り過ぎるおそれが
 米国では、肥満が1970年から劇的に増えており、予防できる死亡の原因の2位に挙げられている。肥満対策には2014年に7.4兆円(640億ドル)が費やされ、成人の20%がさまざまなダイエットを試みているという。

 低炭水化物ダイエットは、そのうちのひとつだ。エネルギー源となる3大栄養素の炭水化物、タンパク質、脂質のうち、炭水化物の摂取量を抑える食事法で、日本でも流行している。

 低炭水化物ダイエットには、体重減少に加えて、血圧低下や、血糖コントロール改善の効果があるという研究が発表されている。

 一方で、低炭水化物ダイエットを行うと、炭水化物を減らした分、脂質を摂り過ぎてしまうおそれがある。特に、加工肉の食べ過ぎは、心血管疾患、脳卒中、がんなどリスクにもつながりうる。

 米国農務省などが作った「米国人のための食生活ガイドライン」2015年版では、コレステロール摂取量を制限する項目が削除された。それまでは1日のコレステロールを300mg以下に制限していたが、最近の研究結果をふまえて制限の必要はないとした。その後、赤身肉やハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉の消費が伸びた背景には、ガイドラインの改訂が影響しているという。
長期的な安全性や効果に関するデータはない
 メイヨークリニックの内科医であるヘザー フィールズ氏らは、2005〜2016年に報告された72件の研究を分析し、低炭水化物ダイエットの減量効果や安全性などについて調査した。

 低炭水化物ダイエットは低脂肪ダイエットに比べ、6ヵ月間で体重を1.1~4kg減らし、血圧低下や、血糖コントロールの改善がみられた。しかしその効果は長期的には、脂質制限やカロリー制限による食事と比べて特に優れているということはなかった。

 また、炭水化物を制限した食事を続けた人は、結果的に肉の摂取量が増えることが多く、心血管疾患やがんの発症リスクが上昇するおそれがあるという。

 「低炭水化物ダイエットは、6ヵ月という短期間であれば安全に体重を落とすことができます。しかし、臨床的には低炭水化物ダイエットの方が有利であるとは言えません。炭水化物を減らしても、代わりにソーセージ、ハム、ホットドッグ、ベーコン、グリルなどの加工肉が増えたのでは効果はありません」と、フィールズ氏は言う。

 ひとくちに体重減少といっても、減ったのが体脂肪なのか、それとも筋肉や水分なのかでは、結果は大きく異なるという。また、低炭水化物ダイエットの定義はまちまちで、炭水化物の摂取量を1日に20~60gとしているケースが多く、1日の摂取カロリーに対する比率も4~46%と幅が大きい。

 低炭水化物ダイエットは人気のある食事法だが、その安全性について調べた研究はとても少なく、長期的な安全性についてはほとんど報告されていない。どうすれば安全に行えるかという科学的な根拠も不足しているという。

 「低炭水化物ダイエットを始めようと考えている人に対して、長期的な安全性や効果に関するデータはほとんどないことをあらかじめ伝える必要があるだろう」と、フィールズ氏は指摘している。

 研究は医学誌「Journal of the American Osteopathic Association」に発表された。

Researchers Find Low-Carb Diets Safe in Short Term and Slightly More Effective for Weight Loss Than Low-Fat Diets(米国オステオパシー協会 2016年12月13日)
Are Low-Carbohydrate Diets Safe and Effective?(Journal of the American Osteopathic Association 2016年12月13日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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