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2017年02月24日

がん5年後生存率が69%に 10年生存率は58%余 がん研究センター

 日本人の2人に1人はがんを発症するとされているが、特に糖尿病のある人はそうでない人に比べ、がんの発症リスクが高い。がん検診を受けて早期発見・治療をすれば、寿命を延ばせる。
 国立がん研究センターは、全国45万3,035症例のデータをもとに、がん患者全体の5年生存率は69.4%、10年生存率は58.5%だったとする調査結果を公表した。
がん生存率が向上 がん医療の進歩が影響
 調査は国立がん研究センターの研究班が、去年から毎年公表しているもので、今年は、2003年までの4年間に全国のがん専門病院など32の医療機関で、がんと診断された患者約4万5,000人のデータをもとに、18種類のがんについて診断から5年後と10年後の相対生存率をまとめた。

 その結果、がん患者全体の5年後の相対生存率は69.4%、10年後の相対生存率は58.5%だった。

 集計対象となったのは、5年相対生存率が2006年~2008年に診断治療を行い、一定の条件を満たした12万1,263症例。10年相対生存率は、2000年から2003年に診断治療を行った症例のうち、一定の条件を満たした4万5,359症例。

 全部位全臨床病期の5年相対生存率は、1997年の62.0%から徐々に改善している。検診などによる早期発見の取り組みや、内視鏡治療、抗がん剤や放射線治療などがん医療の進歩が生存率の向上につながったとみられる。

 研究チームは「約10年以上前にがんにかかった人の生存率は向上している。現在はさらに治療が進歩しているので、今後も治療成績は向上するとみられる」と指摘している。
がんの早期発見の重要性が明確に 「主要五大がん」で生存率に差
 がんの中でも「肺がん」「大腸がん」「乳がん」「胃がん」「子宮がん」は、死亡者数が多く、がん検診の効果が科学的に証明されており、「主要五大がん」と言われている。

 全症例の相対生存率は、進行度を示すステージ1からステージ4までを合わせた生存率。どの部位のがんもステージ1の生存率は進行したステージ4よりも際立って高い。

 ステージ1だけをみると、5年相対生存率は、「大腸がん」「乳がん」「胃がん」「子宮がん」は90%を超えており、「肺がん」でも80%を超えている。

 しかし、ステージ4の生存率は、「肺がん」4.8%、「大腸がん」19.6%、「乳がん」、「胃がん」7.3%と大きく低下する。

 「五大がん」の生存率を高めるために必要なのは、がん検診の普及による早期発見・治療だ。がん治療では、検診でがんを早期発見することが、いかに大切かが示されている。

 一方、早期発見が難しい肝臓や膵臓のがんはステージ1でも40~50%で、ステージ4では1~3%に下がる。膵臓がんに代表される難治がんの効果的な治療法開発も重要な課題となっている。

5年相対生存率

肺がん
全症例:44.7%、ステージ1:83.8%、ステージ2:50.1%、ステージ3:22.4%、ステージ4:4.8%

大腸がん
全症例:76.3%、ステージ1:98.9%、ステージ2:91.6%、ステージ3:84.3%、ステージ4:19.6%

乳がん
全症例:93.6%、ステージ1:100.0%、ステージ2:95.7%、ステージ3:82.6%、ステージ4:34.9%

胃がん
全症例:74.5%、ステージ1:98.1%、ステージ2:66.4%、ステージ3:47.3%、ステージ4:7.3%

子宮がん
全症例:86.4%、ステージ1:95.7%、ステージ2:87.8%、ステージ3:70.9%、ステージ4:15.5%

10年相対生存率

肺がん
全症例:32.6%、ステージ1:68.3%、ステージ2:28.8%、ステージ3:16.0%、ステージ4:3.4%

大腸がん
全症例:69.2%、ステージ1:95.3%、ステージ2:81.5%、ステージ3:74.3%、ステージ4:8.3%

乳がん
全症例:81.7%、ステージ1:95.0%、ステージ2:86.2%、ステージ3:54.7%、ステージ4:14.5%

胃がん
全症例:67.3%、ステージ1:93.9%、ステージ2:55.8%、ステージ3:38.1%、ステージ4:7.0%

子宮がん
全症例:81.9%、ステージ1:93.8%、ステージ2:76.5%、ステージ3:57.1%、ステージ4:9.3%

 なお、今回発表するデータは、全国がん(成人病)センター協議会(全がん協)の協力を得て集計したもの。診断治療症例について部位別5年相対生存率、10年相対生存率は集計し、全がん協ホームページで公開されている。

* 相対生存率
 すべての死亡を計算に含めた生存率を「実測生存率」というが、この中にはがん以外の死因による死亡も含まれる。がん以外の死因で死亡する可能性を補正するために、患者集団と同じ性、年齢構成の一般集団における生存率を、がんに罹患していなかった場合の「期待生存率」として計算し、がん患者について計測した生存率(実測生存率)を、対象者と同じ性・年齢・分布をもつ日本人の期待生存確率で割ったものを「相対生存率」という。

全がん協加盟がん専門診療施設の診断治療症例について 5年生存率、10年生存率データ更新(国立がん研究センター)
データが公表されている全国がん(成人病)センター協議会のサイト
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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