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2017年07月05日

経口インスリンの臨床試験が成功 飲み薬でインスリン治療ができる

第77回米国糖尿病学会学術集会
長時間作用型の経口インスリン製剤の臨床試験が成功
インスリングラルギン注射と同等の治療成績

 長時間作用型の経口インスリン製剤が、2型糖尿病の治療で多く使用されている持効型インスリン製剤と同等に血糖コントロールを改善し、しかも安全に使えるという研究が、サンディエゴで開催された第77回米国糖尿病学会学術集会で発表された。
経口インスリン製剤 インスリン注射と同等の血糖コントロールを実現
 開発中の経口インスリン製剤は、通常行われている注射ではなく、飲み薬でインスリンを投与できるというもの。錠剤であれば扱いやすく、患者の服薬コンプライアンスを向上させ、早期のインスリン療法の開始につながる可能性がある。

 ノボ ノルディスク社により開発が進められている経口インスリン製剤「OI338」は、アイルランドのMerrion Pharmaceuticals社が開発している胃腸管吸収促進技術(GIPET)を応用して作られている。腸溶性コーティングされたカプセルにインスリンを封じ込み、腸管で吸収されるようにしてある。吸収されたインスリンは、門脈を通じて肝臓に入り、より生理的なインスリン分泌作用を期待できるという。

 OI338GTの有効性と安全性を、注射製剤であるインスリングラルギンと比較して評価した試験には、インスリン治療を行ったことのない2型糖尿病の患者50人(平均年齢 61歳)が参加した。

 患者は、1日1回のOI338GTの服用する群、もしはくインスリングラルギンU100の1日1回注射する群に無作為に振り分けられ、8週間にわたり治療を受けた。空腹時血糖(FPG)を主要評価項目とした。

 この試験は、「二重盲検、ダブルダミー」試験であり、経口インスリンと経口インスリンのそれぞれの偽薬が用意され、すべての患者は1日1回の注射と1回の経口薬を服用した。

糖尿病患者をインスリン注射から解放する望ましい選択肢
 結果として、経口インスリン製剤の群とインスリングラルギン注射の群は、8週間で空腹時血糖値とHbA1cに有意差がなく、両群ともに血糖値などのパラメーターが改善されたことが示された。

 HbA1cのベースライン時の値と治療終了時の値を比べたところ、経口インスリン群のベースライン時の平均HbA1cは8.1%であり、8週間後には7.3%まで低下した。注射群では平均HbA1cは8.2%から7.1%に低下した。

 空腹時血糖値は、経口インスリン群ではベースライン時に175mg/dLだったのが8週後には129mg/dLに低下した。注射群では164mg/dLから121mg/dLに低下した。

 緊急の対応が必要だった低血糖の頻度は、経口インスリン群が6例7件、グラルギン群が6例11件で発生した。計68件の有害事象が32人の患者で報告されたが、重篤な低血糖は両群ともに発生しなかった。有害事象も両群で同等だった。

 「経口投与できるインスリン製剤が実現可能であることがはじめて示されました。経口インスリンは、患者をインスリン注射から解放する、望ましい選択肢となると、長く考えられていました」と、共同研究者で、ノボ ノルディスク A / Sのグローバル開発プロジェクト担当副社長DScのKarsten Wassermann氏は言う。

 「糖尿病患者がインスリンの自己注射をしなくとも、インスリンを服用できるようになる可能性があります。今回の研究結果は大きな励みになりますが、インスリンの生物学的利用能をさらに高めるために、さらに研究が必要です」としている。

 なお、このOI338GTの開発は現在、一端中断されている。有効性や安全性に問題があるわけではなく、OI338GTを普及させるために必要な投資の商業的な優先度を考慮した上での判断だ。製品化するために必要な技術の改善は、進行中の研究の焦点となっている。

Daily, Long-Acting Oral Insulin Tablet Provides Comparable Glycemic Control to Insulin Glargine Injection in Patients with Type 2 Diabetes(米国糖尿病学会 2017年6月13日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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