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2017年07月14日

座ったままの時間が長いと血液がドロドロに 立ち上がって運動を

 体を動かさないで座ったまま過ごす時間が長いと、血液がドロドロになり、動脈硬化が進みやすくなるおそれがあるという研究が発表された。
 座位時間が長い生活をしている人は、ときおり立ち上がり軽い運動をし、1日に30分のウォーキングを続けると良いという。
座位中心の生活は喫煙と同じくらい悪い
 「英国人は1日に平均8時間を座って過ごし、その半分はデスクワークなどに費やされます。このことが、英国人の死亡原因の4分の1以上を占める心血管疾患に危険性を高めています」と、英国心臓財団のマイク ナプトン氏は言う。

 「週に適度な運動を150分以上行い、座ったまま過ごす時間が続いたら、休憩を挟んでなるべく体を動かすように、生活スタイルを変えていくべきです。身体活動を増やすために、国民が一丸となって努力する必要があります」と、ナプトン氏は指摘する。

 「座位中心の生活は喫煙と同じくらい悪いのです。同時に、運動は薬になるということも言えます」と強調している。

 体を動かさず、座ったままの時間が長い生活スタイルは、体にとって明らかに害となる。喫煙の害が広く知られるようになり、喫煙率は低下しているが、座ったままの生活は喫煙にも似た悪影響をもたらすという。
ウォーキングなどのアクティブな時間を増やすべき
 スコットランドのエディンバラ大学などの研究チームは、「スコットランド保健調査」の2012~2014年のデータを解析し、1万4,367人のスコットランド人の運動習慣などについて調べた。

 それによると、45~54歳の労働者は1日に平均7.8時間を座ったまま過ごしているという。その時間は高齢の年金受給者よりも長い。

 活発なウォーキングなどの運動を週に150分以上行うことが推奨されているが、この基準を満たしている人でも、座ったまま過ごす時間が長いと、体に悪影響が出てくるという。

 「体を動かさない時間が増加すると、健康上の悪影響が懸念されます。生活を見直して、ウォーキングなどのアクティブな時間を増やすべきです」と、エディンバラ大学のスポーツ運動科学研究所のテッサ ストレイン氏は言う。
座ったまま過ごす時間が長い生活スタイルは危険
 健康上のリスクを軽減するためには、1日を通して座ったまま過ごす時間がどれだけ長いかを知り、意識して体をより多くを動かすことが重要だという。

 過去の研究で、座ったまま体を動かさないことで引き起こされる健康リスクとして、次のことが分かっている。

 座ったまま過ごす時間が4時間増えると――
・ エネルギーの消費量を減少し、エネルギー代謝が悪くなる。
・ 体脂肪を燃焼させるホルモンが不活性になる。
・ 血糖を下げるインスリンの働きが悪くなり、血糖値が上昇しやすくなる。
・ 血管の内皮機能が低下し、交感神経の働きが上がり、血圧が上昇しやすくなる。
・ 脚の筋肉が衰え、肥満になりやすくなる。これらが相乗的に作用し、エネルギー代謝がますます悪くなる。

 座ったまま過ごす時間が長く、身体活動が減ると、▽心臓病、▽2型糖尿病、▽肥満、▽がん、▽背部痛、▽認知症、▽うつ病、▽筋肉変性といった疾患の発症リスクが上昇する。

 「日常生活で必要とされる身体活動のレベルを少しでも超えるものは全て"運動"と言えます。運動するかしないかの違いはとても大きいのです」と、ナプトン氏は指摘する。

 人と並んで話しながら歩いているときに、呼吸をちょっと意識する、あるいは心臓がドキドキ動いていることを自覚するぐらいの速度で歩く――この程度でも立派な運動になる。階段を2階や3階まで歩いて上がるとか、掃除をするといったことも運動だ。

 「座ったまま過ごす時間の多い生活スタイルは、壮年期や中年期に確立されてしまいます。そこならないために、なるべく早く対策するべきです」と強調している。
30分ごとに休憩をとり運動すると中性脂肪値が低下
 ニュージーランドのオタゴ大学の研究では、座位中心の生活スタイルをもつオフィスワーカーにとって、身体活動や運動が重要であることがあらためて示された。

 血液中の中性脂肪値が高まると、血管内皮の細胞が傷つき炎症が起き、動脈硬化の引き金となる。動脈硬化は、中性脂肪やコレステロール値が高いときに起こる深刻な疾患だ。

 運動をすることで、中性脂肪値の上昇が抑えられ、動脈硬化を予防できる可能性がある。

 この研究では、36人の参加者が、無作為化クロスオーバー試験において、2日間の介入を受けた。その結果、座ったままの時間が長引く場合は、途中で休憩を挟み運動をすることが重要であることが示された。

 座ったままの時間が長くとも、1日に30分の適度な運動をした人は、運動習慣もない人に比べ、食後5時間の中性脂肪の上昇値が平均で43.61mg抑えられることが判明した。

 さらに、座ったままの時間が続くときに30分ごとに2分の休憩をとり、体を動かし、さらに1日に30分の適度な運動をした人は、座ったままの時間が長く、運動習慣もない人に比べ、食後5時間の中性脂肪の上昇値が65.86mg抑えられていた。
毎日の生活で身体活動量を増やす工夫を
 「仕事で座っている時間が長いオフィスワーカーは、仕事の合間にときどき2分間の休憩をとり、体を動かし、さらに、毎日30分ウォーキングをすると、動脈硬化や血栓の原因になる中性脂肪を大幅に低下できます」と、オタゴ大学の人間栄養学部のメレディス ペディー氏は言う。

 過去の研究では、オフィスワーカーが30分ごとに2分間の休憩をとり、軽いウォーキングなどの運動をすると、血糖値とインスリン値が低下することも示されている。

 毎日の生活で、ちょっとしたことを工夫すると、身体活動量を増やすことができるという。ペディー氏は次のことを勧めている。

オフィスワーカーが身体活動量を増やす工夫

・ 仕事のミーティングなどは、電話や電子メールで済まさないで、相手に直接話す。

・ 1時間ごとに立ち上がり体操や運動をする。

・ ランチの時間には10~20分ほど歩く。

・ 休憩時間に歩く。家やオフィスの周りを歩くことを習慣にする。

・ ちょっとした用事があるときは、車でなく徒歩で行く。

・ エレベーターやエスカレータを使わず、階段を使う。

・ 家にはテレビのリモコンを近くに置かない。家事は立ったまま行う。

・ スーパーマーケットに買い物に行くときや、歩いて行ける一番遠い場所に駐車する。

Differences by age and sex in the sedentary time of adults in Scotland(Journal of Sports Sciences 2017年6月16日)
Is sitting is the new smoking?(エディンバラ大学 2016年6月1日)
Regular brisk walks and a daily longer one help lower office workers' blood lipids(オタゴ大学 2017年6月27日)
Regular activity breaks combined with physical activity improve postprandial plasma triglyceride, nonesterified fatty acid, and insulin responses in healthy, normal weight adults: A randomized crossover trial(Journal of Clinical Lipidology 2017年6月19日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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