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2017年07月28日

20歳から体重5kg増加は健康リスク 体重を増やさない10の方法

 多くの人は年齢を重ねると体重が増加するが、20歳前後の頃と比べ中年期に体重を5kg以上増やすと、2型糖尿病や高血圧、心血管疾患などの危険性が上昇することが明らかになった。
 「毎日の少しの工夫を積み重ねれば、体重増加は防げます。保健指導者は体重増加が健康にもたらす影響について、患者によく説明するべきです」と、ハーバード大学の研究者は述べている。
20歳の頃と比べ体重が増えた? 健康に大きな影響が
 20歳前後の頃と比べ、中年期に体重を5kg以上増やした人は、体重増加を2.3kgに抑えた人に比べ、2型糖尿病、高血圧、心血管疾患、がんなどの発症率が上昇することが、ハーバード公衆衛生大学院の研究によって明らかにされた。研究は「米国医師会雑誌」(JAMA)に発表された。

 「成人早期から成人期までの体重増加の影響を体系的に調べたはじめての研究です。健康に歳を重ねるために、わずかな体重の増加でも注意が必要であることが分かりました」と、ハーバード公衆衛生大学院栄養疫学部のフランク フー教授は言う。

 ほとんどの人は、20歳頃から中年期にかけて体重を増やす。1年当たりの体重増加量は比較的小さいので、当人や医師が気付くことは少ないかもしれないが、それが累積すると健康に大きな影響をもたらす可能性がある。
体重が5kg増えると糖尿病リスクは30%上昇
 研究チームは、「看護師健康調査」(1976~2012年)と、「医療従事者フォローアップ研究」(1986~2012年)に参加した9万2,837人の男女の追跡データを解析した。

 参加者は、女性では18歳、男性では21歳から、それぞれ55歳までの体重増加について自己申告した。期間中、大半の人で体重の増加がみられ、女性では平均10kg、男性では平均8.6kg増えていた。

 データを解析したところ、成人早期からの体重増加が2.3kg以内の人と比べると、体重が5kg以上増えた人では、健康上のさまざまな障害があらわれやすいことが判明した。

 体重が5kg増えるごとに発症リスクは、2型糖尿病では30%、高血圧では14%、心血管疾患では8%、肥満が関連するがんでは6%、それぞれ上昇することが明らかになった。喫煙経験のない人でも早死のリスクは5%上昇し、健康に歳を重ねられる割合は17%減少した。

 「保健指導を行う人は体重増加が健康にもたらす悪影響についてアドバイスするべきです。健康的な食事と運動によって体重増加をふせぐことができます」と、ハーバード公衆衛生大学院のヤン ゼン氏は言う。
体重を増やさないための10の方法
 「体重増加の原因は、食事のエネルギー摂取量が身体活動量を上回っていることです。したがって、エネルギー摂取量を減らし、身体活動量を増やし、より多くのエネルギーを消費すると体重は減ります。しかし、体重増加を引き起こしやすい生活スタイルは、人によってさまざまであることに留意するべきです」と、ゼン氏は指摘する。

 「食事にちょっとした工夫を加えたり、生活習慣を改善するだけで、体重の増減に違いが出てきます。注意しないと体重は増えてしまいますが、食事や生活スタイルを少し改善し、それを積み重ねると、生涯にわたり健康的な体重を維持できるようになります」と、ゼン氏は言う。

 ハーバード公衆衛生大学院では、体重増加を防ぐために、下記のことに注意するよう勧めている。

● 全粒穀物など精製されていない食品を増やす

 精製されていない全粒穀物、野菜、果物、ナッツ類、ヨーグルトなど、加工度の低い食品は、精製された食品に比べゆっくりと消化・吸収され、食後の血糖値の上昇とインスリンの過剰な分泌を抑えてくれる。これらは食欲を抑える効果もある体にやさしい食品だ。

 反対に、白パン、精白米、加工肉、糖分の多い甘い飲料など、加工度の高い食品をなるべく減らすことが、体重増加を防ぐのに役立つ可能性がある。

● グリセミック指数が低い食品を選ぶ

 食後の血糖値の上昇の程度をあらわす「グリセミック指数」(GI)が低い食品を選んで食べている人は体重増加が少ないという報告がある。野菜や果物であっても炭水化物が多いものはGI値が高く、体重が増えやすいので注意が必要だ。

 トウモロコシやジャガイモなどのイモ類は野菜の中ではGI値が高い。反対に、大豆、カリフラワー、リンゴ、ブルーベリーなどはGI値が低い。もっとも、チョコレート、ドーナッツ、ショートケーキなどのGI値の高い菓子類に比べれば、どんなものであれ野菜が勧められる。

● 朝食をしっかりとる

 1日の最初の食事である朝食をしっかりととり、日中を活発に過ごすことが体の代謝を高め、カロリー消費の向上にもつながる。特に10歳代の子供で、朝食をスキップすると体重増加や肥満の危険性が増すという調査結果がある。

 朝食をとることで、脳に必要なエネルギーが供給される。また、朝食をとることで、食欲を増進させる働きをもつホルモンであるグレリンが抑えられる。

● アルコールに注意

 過度の飲酒は体重増加につながるという報告がある。アルコールは高カロリーであるのに加え、ビール、日本酒などの醸造酒には糖質なども含まれており、そうしたお酒をたくさん飲めば、摂取するカロリーも増えていく。やはり、適量を守ることが大切だ

 アルコールは食欲を刺激し、高カロリーのおつまみを食べ過ぎてしまうおそれがある。サラダや野菜スティックといった食物繊維が多く、低カロリーのものを食べると良い。

● 「低脂肪」と表示された食品に注意

 「低脂肪」と表示された加工食品が増えているが、低脂肪であっても糖質などが多く含まれ、カロリーの高い食品が少なくない。そうした食品を食べ過ぎると体重は増える。加工食品の栄養表示を良く見て、全体のカロリーをチェックする必要がある。

● 野菜ジュースは健康的?

 野菜やフルーツを多く食べることに、健康的なイメージを抱く人は多いが、糖質の多い野菜ジュースやフルーツジュースによる代用は難しい。野菜やフルーツをそのまま食べると2型糖尿病の発症リスクが低下するのに対し、ジュースを飲むとかえって糖尿病リスクが上昇するという調査結果がある。

 ジュースに加工される際に、野菜やフルーツの栄養素であるフィトケミカルや食物繊維が失われる。たとえ糖質を添加していない100%の野菜ジュースやフルーツジュースであっても、飲み過ぎには注意が必要だ。

● ファストフードを食べ過ぎない

 ファストフードのテイクアウトやコンビニで購入した食品ばかりを食べていて、野菜や果物を十分に摂っていないと、体重が増えやすい。最近は栄養バランスを配慮したメニューも増えているが、ファストフードの多くは高カロリーで栄養価が低い。

 ファストフードを多く食べている人は、そうでない人に比べ、体重が増えやすく、中性脂肪値が高く、メタボリックシンドロームになりやすいという調査結果があるので注意が必要だ。

● 食品のサイズが大きくなっている

 レストランやスーパーマーケットで売られている加工食品のパッケージのサイズはこの数十年で大きくなっている。世界がん研究基金(WCRF)の調査によると、ハンバーガーのサイズは1980年以来大きくなっているという。

 対策として、外食ではなるべくゆっくり食べて、満腹感を感じたら食べることをやめることが勧められる。ゆっくり食べることで満足感を得やすくなり、食べ過ぎを防ぐことができる。スーパーやコンビニなどで加工食品を買うときは、その食品が本当に必要かを考えてみよう。

● ストレスに対処する

 ストレスを受けると体によくないものを食べる方向に走りがちになる。特に高カロリーの甘い食品を欲しくなることを、多くの人が経験している。過大なストレスを受ける状態が続くと、食事のエネルギーの摂取量が増える一方で、消費量は低下し、余計に太りやすくなるという悪循環に陥りやすい。

 ストレス要因を常に避けるのは難しいが、肥満への対策のひとつとして、冷蔵庫や戸棚に健康的な食品を置いておくという手段がある。そうすればストレスに直面したとき、高脂肪の食品に走るかわりに、健康的なものを手に取ることができるだろう。

 ウォーキングなどの運動を習慣化すると、ストレスと戦うのに役立つエンドルフィンなどのホルモンの分泌が増え、メンタル面の健康を促進するのに役立つ。エネルギーの消費も増え、体重が減りやすくなる。

● テレビの見過ぎに注意

 1日でテレビの視聴時間が長いと、不活発な生活習慣が定着しやすくなる。それに加えて、多くの人はテレビを見ながら飲食をするので、エネルギーの摂取量が増えやすい。テレビの前で過ごす時間を減らし、アクティブな生活を心がけることが体重コントロールには必要だ。

● 睡眠を改善する

 睡眠不足が体重増加につながりやすいことが多くの研究で確かめられている。体と心の健康を保つために、質の良い睡眠が必要だ。調査では睡眠時間が6〜8時間の人で肥満が少なく、6時間未満の人で多い傾向が示された。夜眠れないなど、睡眠の問題を抱えている場合は、医師など専門家に相談してアドバイスを得よう。

Older, heavier, more at risk(ハーバード大学 2017年7月18日)
Weight gain from early to middle adulthood may increase risk of major chronic diseases and mortality(ハーバード大学 2017年7月18日)
Obesity Prevention Source(ハーバード公衆衛生大学院 )
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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