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2017年10月10日

「低カロリー食」で老化を防げて寿命も延びる 腹八分目で若返ろう

 低カロリー食が寿命を延ばすことはこれまでも報告されていたが、老化のメカニズムに関係する体内時計に影響することが、新たな研究ではじめて明らかになった。
 将来はカロリーコントロールで体内時計を制御し、老化を食い止められるようになるかもしれない。
低カロリー食が老化を遅くするメカニズムを解明
 カリフォルニア大学の研究グループが、老化と代謝メカニズムの関連や、低カロリーの食事がもたらす効果を調べた研究で、細胞のエネルギー代謝をコントロールする「体内時計」(概日リズム)が、老化に伴い衰えやすいことが分かった。

 しかし低カロリーの食事は、正常なエネルギー代謝の維持と老化防止に役立つことも明らかになった。古くから「腹八分目」が健康の秘訣だとされているが、この研究では、30%のカロリー制限が「腹八分目」の科学的根拠となることが示された。

 体内時計のメカニズムは若いときは活発に機能しているが、高齢化すると正常な機能を失いやすい。

 しかし高齢化しても30%の低カロリー食をとると、加齢にともなう体内時の変化を抑えられることが、マウスを対象とした実験で明らかになった。

 低カロリー食に体内時計を若返らせる効果があることが分かれば、老化を防ぐ効果的な方法がみつかる可能性がある。
低カロリー食により体内時計が若い状態を保持
 カリフォルニア大学の研究グループは生後8ヵ月と18ヵ月のマウスの肝臓の細胞を詳しく調べた。肝臓には栄養から得たエネルギーを細胞に供給する機能がある。

 その結果、24時間サイクルの「体内時計」(概日リズム)は、代謝のメカニズムが老化したマウスでも機能しているが、摂取カロリーによって大きな変化があることが分かった。

 研究チームは、バルセロナ生物医学研究所との共同研究で、若年マウスと高齢マウスの皮膚から採取した幹細胞の生物時計機能を調べており、そこでも低カロリーの食事によって、体内時計の機能が若い状態を保持することを確認している。

 カロリーをコントロールした食事によって、幹細胞の体内時計を正常に維持することで、若い状態を保てることを解明すれば、老化防止の方法を現実的に開発できる可能性がある。

 「低カロリー食は、加齢の影響を生物学的に抑えるのに大きく役立ちます。幹細胞のリズムを若く保つことは、細胞組織が概日リズムを保ったまま再生していくために必要です」とカリフォルニア大学のサルバドール ベニタフ氏は言う。
体内時計の働きにサーチュイン遺伝子が関わる
 「いつまでも歳をとらずに、長生きしたい」。そんな不老長寿への夢が、必ずしも夢ではなくなってきた。最近の研究で、老化を遅らせ、寿命を延ばす「サーチュイン遺伝子」(長寿遺伝子)の存在が明らかになったからだ。

 今回の研究で分かった重要なことは、体内時計の働きにサーチュイン遺伝子が大きく関わっていることだ。

 この遺伝子は誰もが持っており、上手に働かせれば寿命が延ばせる可能性も秘めている。

 寿命を延ばす働きをすると考えられている「サーチュイン遺伝子」。その作用を解き明かそうと世界中の研究者が挑戦しているが、詳しい作用メカニズムはまだすべて明らかにされていない。

 サーチュイン遺伝子を活性化すると、細胞内でエネルギー源を作り出すミトコンドリアが増え、細胞内の異常なタンパク質や古くなったミトコンドリアが除去されて、新しく生まれ変わるオートファジー(自食作用)というメカニズムが働く。

 それに伴い、細胞を傷つける活性酸素の除去、細胞の修復、脂肪の燃焼、2型糖尿病や動脈硬化の改善、さらには認知症の予防など、さまざまな好ましい影響がもたらされる。

 サーチュインにはSIRT1からSIRT7まで7種類あるが、この中でSIRT1の研究がもっとも多く行われている。今回のカリフォルニア大学の研究で、SIRT1は体内時計にも作用することが明らかになった。

 これまで10年余りに渡る世界中の研究者らの研究で、SIRT1をはじめとしたサーチュインは実に多彩な働きをすることが分かってきた。この長寿遺伝時を活性化することで、寿命を延ばせる可能性がある。
低カロリー食と運動の両立するとさらに効果的
 この長寿遺伝子はいつも働いてくれるわけではない。ある条件が満たされたときにだけスイッチがオンになる。

 その条件のひとつがカロリー制限だ。カロリー制限が長寿遺伝子を活性化させることは、さまざまな研究によって実証されている。

 食べ過ぎは長寿遺伝子のスイッチが入ろうとしているのを妨げる行為になる。とくに単純糖質の摂り過ぎは、インスリンの急激な分泌を促すので注意が必要だ。

 運動も長寿遺伝子のスイッチをオンにする効果的な方法だ。ルイジアナ州立大学などの研究グループの研究では、食事制限でカロリーを12.5%カットし、運動で消費カロリーを12.5%増やすと、カロリーを25%制限したのと同じ効果があることが確かめられている。

 この研究は、運動習慣のない48人の男女が参加して、6ヵ月かけて行われた。カロリー制限と運動の両方を行ったグループでは、空腹時インスリン値が低下することが分かった。

 低カロリー食と運動の両立は、「いつまでも歳をとらずに、長生きしたい」という願望を現実のものにするために効果的で、糖代謝など老化に関連するいくつかの測定値を改善することを確認したという。

Link between biological clock and aging revealed(カリフォルニア大学 2017年8月10日)
Aged Stem Cells Reprogram Their Daily Rhythmic Functions to Adapt to Stress(Cell 2017年8月10日)
Effect of 6-Month Calorie Restriction on Biomarkers of Longevity, Metabolic Adaptation, and Oxidative Stress in Overweight Individuals - A Randomized Controlled Trial(JAMA 2006年4月5日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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