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2018年05月21日

加工食品で血圧が上昇 「味噌」には高血圧を抑える効果が

 高血圧は、血圧が慢性的に高い病気で、体に多くの悪影響を及ぼす。予防・改善するために食生活がとても重要だ。日本の代表的な発酵食品である味噌が、血圧の上昇を抑え、脳卒中や心筋梗塞などの予防に役立つ可能性があるという研究が発表された。
なぜ食塩を摂り過ぎると血圧が上昇するのか
 高血圧や脳卒中は日本人に多い疾患だ。高血圧は心臓に負担をかけ、左室肥大や心房細動などを増加させる。心筋梗塞を含む心疾患は、日本人の死亡原因の第2位、脳卒中などの脳血管疾患は第4位と、いずれも上位を占めている。脳卒中は、寝たきりになる原因疾患の第1位でもある。

 食事で食塩を多く摂っていると高血圧をまねき、動脈硬化から脳卒中や心筋梗塞を引き起こすなど、命に関わる病気のリスクを高めてしまう。

 なぜ食塩を摂り過ぎると血圧が上昇するのか? 塩を摂り過ぎると、のどが渇いてしまうので、水をたくさん飲む。すると、血液の量が増えるため血圧が上がる。その状態のままでは危険なため、腎臓の働きによって水と塩分を尿として体外に排出し、バランスを保っている。ところが、腎臓が処理できないほどに塩分を摂り過ぎてしまうと、血圧の高い状態が続いてしまう。

関連情報
食塩の約7割は加工食品に含まれる
 高血圧を予防するには、食塩の摂取量を適切な量に抑えることが大切だ。食事ガイドイランでは、成人男性の場合は1日8g未満、成人女性の場合は1日7g未満に抑えることが目標となっている。日本高血圧学会は、高血圧の人の場合は1日6g未満に抑えることを推奨している。

 減塩で大事なことは、何から食塩をとっているか知ることだ。食塩の約7割は加工食品に含まれる。ハム・ソーセージ、漬物、塩蔵品・練り物などは食塩の多い食品だ。

 塩味のわかりやすい食品だけでなく、塩味に気づきにくい食品、例えば、食パンやドレッシング、清涼飲料などにも塩分が含まれる。知らずに食塩の摂り過ぎにつながるので注意が必要だ。自分がどれくらい食塩をとっているのかを知るために、食品のパッケージに記載されている栄養成分表示を見ることを習慣にしよう。
「味噌」に血圧の上昇を抑える効果
 日本の代表的な発酵食品である味噌が、血圧の上昇を抑え、脳卒中や心筋梗塞などの予防に役立つ可能性があることが、広島大学の研究で明らかになった。塩分による味付けを、味噌を含む発酵食品に代えることで、血圧の上昇を抑え、脳卒中が減少することが期待できるという。

 研究は、広島大学の渡邊敦光・名誉教授と広島大学大学院医歯薬保健学研究科の吉栖正生教授らの研究グループによるもの。「味噌を中心とした日本型の食事スタイルの再評価が必要」と、研究者は述べている。

 味噌は日本人にとって古くからのソウルフードであり、食生活から切り離せない食材だ。日本の代表的な発酵食品である味噌が、健康や長寿に良いことは知られているが、食塩の過剰摂取につながるおそれがあることも指摘されてきた。

 しかし、「日本人は食生活で塩分を多く摂取しているが、心筋梗塞などが少なく、長生きしていることは海外でも関心を集めている。味噌には塩分の影響を緩和する物質が含まれており、熟成みそは特にその効果が強いと考えられる」と、研究者は述べている。
日本型の食事スタイルを再評価
 研究では、味噌には血圧上昇を抑制する効能があり、とくに熟成した味噌の中に血圧を抑制したり、血糖値を低下させたりする成分や、抗酸化作用を持つ成分が含まれていることが分かった。

 こうした成分は発酵熟成の過程で産生され、さまざまな成分の作用が合わさり、混合物として作用することが生体にとって有用なものになるという。

 閉経後の女性が味噌などに含まれるイソフラボンを多く摂取すると、脳卒中や心筋梗塞を抑えられることが、国立循環器病研究センターの研究でも明らかになっている。

 「味噌を含む発酵食品を摂取することが、がんや高血圧などの減少につながる可能性がある。食塩を多く摂取することの弊害が問題になっているなかで、味噌を摂取する日本型の食事スタイルの重要性はますます高まっている」と、研究者は述べている

日本高血圧学会 減塩委員会
Protective effects of Japanese soybean paste (miso) on stroke in stroke-prone spontaneously hypertensive rats (SHRSP)(American Journal of Hypertension 2017年7月31日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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