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2018年07月04日

人工透析の原因1位は「糖尿病腎症」 「日本腎臓病協会」が設立

 日本腎臓学会(JSN)は、「NPO法人 日本腎臓病協会」(JKA)を設立した。JSNとJKAが連携し車の両輪となって、日本の腎臓病診療の向上を目指す。
腎臓病に総力を挙げて取り組む
 日本腎臓学会は、NPO法人日本腎臓病協会(JKA)を設立した。7月16日に東京医科歯科大学鈴木章夫記念講堂で、設立記念式典を開催する。

 腎臓病は糖尿病、脳卒中、心臓病、認知機能障害などと関係しており、患者の健康寿命を損なう要因となっている。その克服には、医療者、行政、市民が連携して、総力を挙げて取り組む必要ある。日本腎臓病協会は連携の核となり、プラットフォームとなるものだ。

 「日本慢性腎臓病対策協議会」(J-CKDI)は、日本腎臓学会・日本透析医学会・日本小児腎臓病学会が中心となり、日本腎臓財団・日本医師会の協力を得て、28団体の賛同を得て発足した。

 J-CKDIの設立から10年が経過したのを機に、今後の在り方を検討した結果、日本腎臓病協会を新たに立ち上げて、事業基盤を強化し、活動の幅も広げることになった。慢性腎臓病(CKD)対策の事業を拡充・強化するという。

 協会の理事長には日本腎臓学会の柏原直樹理事長(川崎医科大学腎臓・高血圧内科学教授)が就任する。会員は医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、検査技師などを想定。賛助会員として、製薬企業など企業・法人にも参加を呼びかけている。

関連情報
かかりつけ医、腎臓専門医、行政との連携体制
 日本腎臓病協会の事業は4つ。(1)CKDの全国での普及啓発活動、診療連携体制の拡充、(2)腎臓病療養指導士制度の運営、(3)産官学プラットフォームであるKRI-J(キドニー・リサーチ・イニシアチブ・ジャパン)による創薬、診断薬開発支援、(4)患者会・関連団体との連携。

 このうち診療連携の体制の拡充は重要だ。かかりつけ医、腎臓専門医、協力医、行政との連携体制を地域の実情にあったかたちで構築する必要がある。日本全国どこにいても、良質な腎臓病の医療を受けられる環境の実現を目指している。

 KRI-Jでは、腎臓病の革新的医療の開発を目指す。腎臓学会、行政機関、製薬・医療機器企業体などが連携し、イノベーション加速のためのプラットフォームとする。
「腎臓病療養指導士」を開始
 また、2017年に日本腎臓学会、日本腎不全看護学会、日本栄養士会、日本腎臓病薬物療法学会が連携し、「腎臓病療養指導士制度」を立ちあげた。今後は日本腎臓病協会がこの運営を行う。

 「腎臓病療養指導士」の資格対象は看護師、管理栄養士、薬剤師の3分野。多職種により包括的に腎臓病に対策する。生活・栄養・服薬と療法選択の療養指導を実施し、医師をサポートし、チーム医療の一員として行動する。

 CKD対策は、(1)発症予防、(2)早期発見・早期介入、(3)重症化予防の3ステップに集約できる。そのために、運動、食事、睡眠などの日常正確の適正化が重要だ。看護師、管理栄養士、薬剤師など多くの職種によるチーム医療や療養支援によって、患者の生活習慣の改善をサポートする。
成人の8人に1人が「慢性腎臓病」(CKD)
 「慢性腎臓病」(CKD)は、腎障害を示す所見や腎機能低下が慢性的に続く状態。腎臓の働き(GFR)が健康な人の60%以下に低下する(GFRが60mL/分/1.73?未満)か、あるいはタンパク尿が出るといった腎臓の異常が続く状態をいう。

 日本のCKD患者は年々増加傾向にあり、全国で1,300万人を超えると推算されている。これは、成人の約8人に1人にあたる数だ。

 CKDの初期には、ほとんど自覚症状はない。貧血、疲労感、むくみなどの症状が現れたときには、病気がかなり進行している可能性がある。定期的に尿検査や血液検査を受けることが重要だ。放置したままにしておくと、末期腎不全となり、人工透析や腎移植を受けなければ生きられなくなってしまう。
CKDに「糖尿病」と「高血圧」が大きく影響
 CKDの発症には、「糖尿病」と「高血圧」が大きく影響し、肥満、メタボリックシンドローム、脂質異常症、高尿酸血症も影響する。さらに、CKDでは、心臓病や脳卒中などの心血管疾患にもなりやすいことが明らかになっており、いかにCKDを治療し、心血管疾患を予防するかが大きな問題となっている。

 人工透析を受けている患者は約33万人で、その数は毎年5,000人ずつ増え続けている。末期腎不全は全世界的に増え続けており、“隠れ腎臓病”のうちに早期発見・治療することが大切だ。

 人工透析の原因になった疾患の1位は「糖尿病腎症」(38.8%)。2016年に透析を開始した患者の原因疾患の1位も糖尿病性腎症(43.2%)だった。糖尿病腎症は糖尿病の合併症のひとつで、腎臓の働きが低下する。

 糖尿病腎症を予防・治療するために、血糖管理が大切だが、血圧管理も欠かせない。目標は130/80mmHg未満で、通常の高血圧の治療より厳しい値となる。
腎臓病は進行すると元に戻せなくなる
 日本腎臓病協会は、CKD対策の事業をはじめとする社会活動へのコミットメント、コミュニケーション・連携の強化などをの基本方針としている。

 腎臓病はひとたび病態が進行し、一定点を越えると治癒できる可能性は低くなり、最終的には生命維持のために人工透析などの腎代替療法が必要となる。

 腎臓病に早期に対策するために、地域社会との密接な関連と、それに立脚する活動も重要となる。同協会は、広く社会に開かれた活動を展開し、腎臓病の克服に向けた取り組みを広く国民に知ってもらう取り組みをするという。

 日本腎臓病協会の柏原直樹理事長は、「腎臓病の克服を目的に据えた活動の道程は平坦でも直線的でもなく、らせんを描きながら漸進的に深化して行くように考えています。未来を遠望し次世代を育成しつつ、倦むことなく、組織として前進して行きたいと決意しています」と述べている。

NPO法人 日本腎臓病協会
一般社団法人 日本腎臓学会
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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