ニュース

2018年10月12日

たった一晩の「睡眠不足」が糖尿病を悪化 睡眠改善のための7ヵ条

 単なる「睡眠不足」だと思って油断していると、心身の不調につながりやすい。十分に眠れないことは、小さな問題ではない。睡眠不足を解消すると糖尿病やメタボが改善するという研究が報告されている。
睡眠不足で糖尿病やメタボのリスクが上昇
 「寝床に入っても寝つきが悪い」「眠るのが困難で質のよい睡眠を得られない」「睡眠をとる時間が十分に確保できていない」など、睡眠に関する悩みをもつ人は多い。

 睡眠不足が続くと、気力や体力、思考能力が著しく低下してしまうが、睡眠不足の影響はそれだけではない。何日も続くとさまざまな心身の不調の原因となる。

 睡眠不足が慢性化すると、空腹時血糖値が上昇し、基礎インスリン分泌能が低下するなど、メタボリックシンドロームや糖尿病のリスクが上昇するという調査結果がある。

 不眠のある人、睡眠が極端に短い人や長い人では、2型糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病が起こりやすいことが分かっている。さらには、睡眠不足は、食欲を高め、肥満の原因にもなる。動脈硬化、心臓病や脳卒中を発症する危険性が高まる。

 多くの人の場合、睡眠時間が7時間を切ると、睡眠の負債が発生しはじめる。早く返済すればさほど問題はないが、睡眠不足が続いているという人は、睡眠を改善するための対策をするべきだ。

関連情報
睡眠時間が6時間未満の人は血糖値が上昇
 睡眠時間は長くても短くても、健康リスクが高まる。韓国のソウル大学医学部の研究チームが13万人以上を対象に行った調査によると、睡眠時間が6時間未満の人はメタボリックシンドロームや2型糖尿病のリスクが上昇するという。

 調査では、メタボや糖尿病のリスクがもっとも低いのは睡眠時間が7〜8時間の人で、睡眠時間が6時間未満の人や、10時間を超える睡眠過多の人でリスクが上昇するという、U字型の分布を示すことが示された。

 睡眠不足を解消すると、眠気をなくせるだけでなく、空腹時血糖値の低下、基礎インスリン分泌能(HOMA-β)の増大などを得られ、2型糖尿病のリスクが低下することが明らかになった。

 睡眠不足により食欲に関連するホルモンの分泌が影響を受ける。睡眠不足により、食欲を増進するグレリンが増え、食欲を抑制するレプチンが減る。さらに、これにより食欲を亢進させるオレキシンが増え、とくに糖質の多い食品を食べたくなるという。

 「6時間未満の睡眠時間が続いている人は、メタボや2型糖尿病を予防・改善するために、睡眠習慣の見直しをするべきです」と、研究者は述べている。
たった一晩の睡眠不足で健康リスクが高まる
 睡眠不足が続くと糖尿病や肥満のリスクが高まることは、多くの研究で確かめられている。

 たった一晩でも睡眠不足になると肥満につながる。米国のノースウェスタン大学はそのメカニズムの一端を解明した。

 研究チームは、平均年齢22.3歳の男性15人の2日間の睡眠を調べた。参加者には1日目は8時間以上の睡眠をとってもらい、2日目の晩には「一晩中眠らない群」と「8時間以上の睡眠をとる群」に分けて比較した。

 皮下脂肪と骨格筋の組織のサンプルを採取して、遺伝子やタンパク質の発現量を調べたところ、一晩眠らないだけで代謝に異常が起こり、骨格筋の組織が減少し、脂肪が溜まるのが促されることが分かった。

 不眠により、概日リズムの調節に関わる遺伝子やタンパク質が変化し、体の代謝機能に異常があらわれるという。

 「2型糖尿病や肥満のリスクを高めるのは、不健康な食事や運動不足だけではありません。たった一晩だけでも質の良い睡眠を得られないと、体重増加のリスクが高まります」と研究者は指摘する。
睡眠を改善するための10ヵ条
 適切な量と質の良い睡眠には、心身の疲労を回復する作用がある。睡眠に問題を抱えている人は、生活スタイルを改善し、必要なときは専門家に相談し、1日も早く質の良い睡眠を得られるようにすることが大切だ。

 米国睡眠学会は、睡眠時間を十分に確保し、質の良い睡眠を得るために、次のことをアドバイスしている。

<< 睡眠を改善するための7ヵ条 >>

1 起きた時に朝日を浴びる

 寝床に入る時間が遅くなっても、朝は一定の時間に起きて、太陽の光を浴び、1日のリズムを刻む体内時計をきちんと調整することが、夜眠くなる時刻を一定にすることにつながる。

 朝はカーテンを開けるなどして太陽の光を浴びることが大切だ。そうすると、体内時計がリセットされ、夜の一定時刻になると自然に眠る準備がはじまり、寝つきが良くなる。

2 ウォーキングなどの運動をする

 適度な運動をする習慣は、睡眠と覚醒のリズムにメリハリをつけ、良い睡眠につながる。日中の適度な運動が、寝つきを良くし、夜中に目が覚めてしまう「中途覚醒」を減らすことにつながる。

 適度な運動を行うことも大切だ。昼間に運動習慣のある人たちは、よく眠れるという調査報告がある。ウォーキングなどの無理なく毎日続けられる運動を習慣にすると、質の良い睡眠を得られやすくなる。

3 寝る前にリラックスする時間帯をつくる

 睡眠に大きく関わるのが自律神経の働きだ。自律神経には、体が活動しているときや緊張したときに優位になる交感神経と、リラックスしているときに優位になる副交感神経がある。

 眠ろうとするときに、緊張や不安、興奮などがあると交感神経が優位の状態が続き、体がリラックスした状態に切り替わらないため、なかなか寝つくことができない。

 それを防ぐためには、寝る前に体がリラックスした副交感神経が優位の状態に向かう移行期をつくる工夫が必要だ。

 就寝前の飲食や激しい運動は刺激になり、寝つきを悪くするので気を付けよう。入浴も寝床につく2時間ほど前にを済ませておくと効果的。

4 休日前に夜更かししない 昼寝を活用する

 休日は、平日の疲れをとりたいと考えて、長めに眠るという人は少なくない。また、休みの前日は夜更かしをして、休日の日中を寝て過ごす人もいる。

 しかし、休日に遅くまで寝ていると、朝の太陽の光を浴びるチャンスを逃してしまい、そのために体内時計のリズムが乱れ、寝つきが悪くなる原因になる。

 疲れを取るために休日は多めに眠りたいという場合は、平日との起床時刻の差を2時間以内にすると、体内時計のずれが大きくならない。

 どうしても眠たいという場合は、昼寝をして、不足分の睡眠時間をカバーすると良い。昼寝が長すぎると、今度は夜に寝つきが悪くなってしまうので、長時間はとらないようにする。

5 眠る前にアルコールを飲まない

 寝酒は、寝つきを良くすることもあるが、その後の睡眠を不安定にし、中途覚醒しやすくなる。寝酒を続けていると睡眠の質がさらに悪化するので注意が必要だ。

6 カフェインにも注意

 カフェイン入りの飲料にも注意が必要だ。寝る前の3〜4時間はカフェインを含む飲料などは控えよう。コーヒーや緑茶、紅茶のほか、栄養ドリンクなどにもカフェインは入っている。

7 寝つけないときはリラックスできることをする

 寝つけないのに寝床にいると、昼間は気にならなかったことが雑念として頭に浮かんでくる。「眠れなかったらどうしよう」と不安になりやすい。

 こうしたときは、いったん寝床を離れ、リラックスできることをしよう。「眠ろう」という意識から離れるために、別の場所で自分の好きなことをすると良い。

 たとえば、ソファーにゆったり座って、好きな音楽を聴いたり、本を読んだりする。一般的な家庭の照明やテレビの明るさであれば、睡眠に影響することはあまりない。

 日々の生活の中で睡眠時間はともすれば犠牲になりがちだ。しかし、睡眠問題は静かにしかし着実に心身の健康を蝕む。

 睡眠習慣の問題や睡眠障害を放置せず、自分の睡眠状態に疑問を感じたら、かかりつけ医に相談をしてみよう。

Sleeping too much or not enough may have bad effects on health(BMC Public Health 2018年6月12日)
Association between sleep duration and metabolic syndrome: a cross-sectional study(BMC Public Health 2018年6月13日)
One night of sleep loss negatively impacts fat, muscle tissue(ノースウェスタン大学 2018年8月27日)
Acute sleep loss results in tissue-specific alterations in genome-wide DNA methylation state and metabolic fuel utilization in humans(Science Advances 2018年8月22日)
Evolve Sleep(米国睡眠学会)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲