ニュース

2019年02月22日

糖尿病の人が「ナッツ」を食べると心血管疾患リスクが低下 1.6万人を調査

 ナッツを習慣として食べている2型糖尿病の人は、心血管疾患や脳卒中の危険性を下げられることが、ハーバード大学公衆衛生大学院などの研究で明らかになった。この研究は、米国心臓病学会(AHA)が発行する医学誌「Circulation Research」に発表された。
ナッツには不飽和脂肪酸が多く含まれる
 2型糖尿病の人の多くはコレステロール値が高くなりやすく、脂質異常症を併発しやすい。これらは心疾患や脳卒中の危険性を上昇させる。

 ナッツには不飽和脂肪酸が多く含まれる。不飽和脂肪酸には、悪玉のLDLコレステロールや中性脂肪を減らし、動脈硬化を防ぐ作用がある。

 ナッツはほかにも、マグネシウムやカルシウム、カリウムなどのミネラル類、食物繊維、フィトケミカル、ビタミンEや葉酸といったビタミン類も含まれる。

 これまで、ナッツが心筋梗塞などの心疾患やメタボリックシンドロームの改善に役立つという研究が発表されているが、心臓病のリスクの高い2型糖尿病の人が食べると、どのような効果を得られるかは分かっていなかった。

関連情報
2型糖尿病患者1.6万人を長期調査
 研究はハーバード大学公衆衛生大学院などによるもので、対象となったのは、看護師健康調査(1980〜2014年)と医療従事者追跡研究(1986〜2014年)に参加し、研究開始前に2型糖尿病と診断された1万6,217人の医療従事者。

 参加者は健康診断を定期的に受け、食事についてのアンケートに答えた。アンケートにはナッツについての質問が含まれ、クルミ、アーモンド、カシューナッツ、ブラジルナッツ、ピスタチオ、ペカン、マカダミアナッツ、ヘーゼルナッツ、松の実の摂取頻度などが尋ねられた。

 追跡期間中に、心血管疾患を発症したのが3,336例(冠動脈性心疾患が2,567例、脳卒中が789例)、死亡したのが5,682例(心血管疾患が1,663例、がんが1,297例)だった。
食事改善が遅すぎることはない
 「今回の研究では、2型糖尿病の患者がナッツを食べると、心血管疾患の合併と早死が減ること示す証拠が得られました。食事療法にナッツ類を含めることが勧められます」と、ハーバード大学公衆衛生大学院栄養学部のギャン リウ氏は言う。

 糖尿病を発症していない人でも、食事に適量のナッツを加えることは、どの年齢においても有益である可能性があるという。「2型糖尿病と診断された人にとって、食事スタイルを改善するのが遅すぎるということはありません」と、リウ氏は付け加えている。

 ナッツをどれだけ食べればよいのか? 心臓病の予防の観点からは、少量でよいので、なるべく毎日ナッツを食べると効果的だという。

 ナッツ1サービングの重量は28〜34gで、カロリーは160〜200kcalぐらい。その半分が脂肪で、そのうち80〜90%が不飽和脂肪酸だ。
ナッツを食べていた人で心血管疾患が17%低下
 研究では、週にナッツを5サービング食べていた人では、1ヵ月に1サービング未満しか食べなかった人に比べ、総心血管疾患の発症率は17%低下し、冠動脈性心疾患の発症率は20%低下し、心血管疾患死は34%、全死因による死亡は31%、それぞれ低下するという結果になった。

 糖尿病と診断された後で、食習慣を変えてナッツを食べるようになった人では、食習慣を変えなかった人に比べ、心血管疾患のリスクは11%低下し、冠動脈性心疾患のリスクは15%低下し、心血管疾患死は25%、全死因による死亡は27%、それぞれ低下した。

 毎回の食事にナッツを加えることで、心血管疾患のリスクを3%、心血管疾患による死亡のリスクを6%、それぞれ減らせるという。

 カナダのトロント大学が行った別の研究でも、2型糖尿病患者が炭水化物をナッツ類に置き換えると、血糖コントロールが改善することが示されている。

 この研究では、経口血糖降下薬を服用中でHbA1c値が6.5〜8.0%の2型糖尿病患者108人を対象に、炭水化物の摂取を「ナッツ類75g/日」「全粒粉マフィン188g/日」などに置き換えて、3ヵ月間調査した。

 その結果、ナッツ摂取群ではマフィン摂取群に比べてHbA1c値が0.19%低下し、LDLコレステロールが8.9mg/dL低下した。これらは心疾患のリスク因子になる。
血管性疾患を予防する効果的な方法が求められている
 なぜナッツが心臓の健康に有用であるかを示す科学的なメカニズムには不明の点も多いが、研究者は、ナッツが血糖や血圧のコントロール、脂肪代謝の改善、血管機能の改善、炎症の抑制などと関連していると指摘している。

 「心血管疾患は心臓発作や死亡の主な原因です。2型糖尿病の人ではこれらに加え、脳卒中の危険性も高まります」と、カリフォルニア大学サンフランシスコ医学部のプラカシュ ディードワニア教授は言う。「糖尿病に合併するこれらの血管性疾患を予防するために、効果的な方法が求められています」。

 アーモンド、クルミ、ピスタチオなどのナッツ類は、比較的入手しやすく、食事療法に取り入れるのは難しくない。「一度に大量のナッツを食べるのは勧められませんが、毎食に少し加えるだけならすぐに実行できます。不健康な生活スタイルを改善し、運動を習慣として続けて、健康的な食事を続けることが求められています」と、ディードワニア教授は指摘している。

Eating nuts may reduce cardiovascular disease risk for people with diabetes(米国心臓学会 2019年2月19日)
Eating a daily serving of nuts linked with lower risk of heart disease(ハーバード大学公衆衛生大学院 2018年2月)
Nut Consumption in Relation to Cardiovascular Disease Incidence and Mortality among Patients with Diabetes Mellitus(Circulation Research 2019年2月19日)
Dietary fat is good? Dietary fat is bad? Coming to consensus(ハーバード大学公衆衛生大学院 2018年11月15日)
Nuts as a replacement for carbohydrates in the diabetic diet: a reanalysis of a randomised controlled trial(Diabetologia 2018年5月23日)
Know Diabetes by Heart(米国心臓学会)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲