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2019年03月01日

認知症と腸内細菌が強く関連 認知症患者で少ない菌が判明

 腸内細菌と認知症の発症は強く関連することが、国立長寿医療研究センターの研究で明らかになった。認知症の人は腸内で「バクテロイデス」という菌が少ないという。
うんちを調べれば認知症のリスクが分かる?
 糖尿病と認知症は関連が深い。日本が世界に誇る疫学調査である久山町研究では、高血糖が認知症(血管性認知症およびアルツハイマー病)の危険因子であることが示された。いかに認知症を予防するかが大きな課題になっている。

 認知症の有病者数は、全世界で2015年には4,680万人だったが、2050年までに3倍に増えると予測されている。日本でも、2012年に65歳以上の15%に当たる462万人が認知症とみらており、今後も増加傾向が続く。

 一方、腸内細菌については、糖尿病や肥満、心疾患にも影響すると考えられている。腸内には数百から1,000種類の細菌が生息しており、その構成は年齢や食事などで変化する。

 認知症発症との因果関係は不明だが、腸内の細菌状態が脳の炎症を引き起こす可能性が指摘されている。

 そこで国立長寿医療研究センターの研究グループは、認知症患者とそうでない患者とのあいだで腸内細菌叢の組成に違いがあるのではないかと考えた。

 もの忘れ外来の受診患者から128例(平均年齢 74歳)の検便サンプルを採取して、腸内細菌叢と認知機能との関連を分析した。

 研究は、国立長寿医療研究センターもの忘れセンター副センター長の佐治直樹氏らによるもので、詳細は科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

関連情報
認知症の人は腸内のバクテロイデスが少ない傾向
 認知症と診断されたのは34例、非認知症は94例だった。認知機能検査や頭部MRI検査などを行い、検便サンプルを同センターのバイオバンクに収集した。

 検便サンプルを微生物解析を行うテクノスルガ・ラボに送付し、「T-RFLP法」(糞便から細菌由来のDNAを抽出し腸内細菌叢を網羅的に解析する手法)を用いて、認知症の有無によって腸内細菌の組成に違いがあるかを調べた。

 その結果、腸内細菌叢の組成の変化が認知症の独立した関連因子であることが明らかになった。

 細菌の割合により、エンテロタイプI(バクテロイデスが多いタイプ)、同II(プレボテラが多いタイプ)、同III(その他の細菌が多いタイプ)の3タイプに分類したところ、認知症患者はエンテロタイプIが少なく、エンテロタイプIIIが多かった。

 バクテロイデスは、日本人の腸内で多い最近で、日和見菌として分類されることが多いが、最近では腸管免疫で重要な働きをすることも分かっており、人体に有用な作用が期待されている。

 詳しく解析したところ、バクテロイデスは、認知症でない患者の45%から検出されたのに対し、認知症患者からは15%にとどまった。また、バクテロイデスが多い患者は、そうでない患者に比べて認知症の罹患率が約10分の1になった。
認知症と食習慣との関連を調査
 佐治氏は「今回の研究は症例数が少ない横断研究でありであるため、因果関係を証明するものではない」としながらも、「バクテロイデスの少なさとその他の細菌の多さは、認知症との関連性が高いことが示された」と述べている。

 「腸内細菌の詳細な解析が認知症の治療法や予防法の開発のための新たな切り口になるかもしれない。食生活や栄養環境を見直すことで、認知症のリスクを減らせる可能性がある」と話している。

 同センターは、東北大学などと共同で、食事習慣・栄養の視点から、腸内環境との関連についてさらに調査を進める予定だ。

国立長寿医療研究センター もの忘れセンター
Analysis of the relationship between the gut microbiome and dementia: a cross-sectional study conducted in Japan(Scientific Reports 2019年1月30日)
Proportional changes in the gut microbiome: a risk factor for cardiovascular disease and dementia?(Hypertension Research 2019年1月31日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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