ニュース

2019年03月15日

睡眠不足で糖尿病リスクが上昇 週末の寝だめでは不十分 改善するための6ヵ条

 3月15日は世界睡眠学会が定める「世界睡眠デー(World Sleep Day)」。
 睡眠不足により、血糖を調整するインスリンの効きが悪くなる「インスリン抵抗性」が進みやすくなる。
 「生活スタイルを工夫することで睡眠は改善できます。週末の寝だめは解決策になりません」と、専門家はアドバイスしている。
週末の寝だめは睡眠負債の解消にはならない
 睡眠不足が続くと健康への悪影響が借金のように積み重なる「睡眠負債」を抱えてしまう。睡眠不足を放っておくと、肥満や2型糖尿病などの代謝疾患のリスクが高まる。

 睡眠不足は深刻な健康障害だ。平日に忙しくて十分な睡眠をとれなくても、週末に寝だめをすれば、睡眠負債を解消できるだろうか?

 専門家は「週末の寝だめは効果的な戦略になりません。毎日きちんと睡眠時間をとるのがもっとも効果的です」と答えている。
睡眠不足によりインスリン感受性が低下
 コロラド大学ボルダー校のケネス ライト教授(統合生理学)の研究では、睡眠不足が慢性化すると、夕食後に間食をとりたくなり、結果としてカロリー摂取量が増える傾向があることが示された。

 肥満や2型糖尿病などの代謝疾患に対策するために、睡眠不足を解消する必要がある。ただし、週末の寝だめだけでは効果は不十分だ。「週末の寝だめにより体重が増加したり、インスリン感受性が低下する傾向がある」という。

 今回の研究では、36人の健康な男女(平均年齢25.5歳)を対象に、睡眠パターンで3つの群にランダムに割り付けて、研究室で9日間観察した。

 1つ目のグループには毎晩9時間までの睡眠をとってもらい、2番目のグループには睡眠時間を5時間に制限してもらい、3番目のグループにはまず5日間にわたり睡眠時間を5時間に制限してもらった後で、週末には好きなだけ遅くまで寝てもらい、再び、睡眠時間を5時間に戻して2日間過ごしてもらった。

 その結果、睡眠不足だった2つのグループでは、血糖を調節するインスリンの感受性が低下する「インスリン抵抗性」が高まり、夕食後のカロリー摂取量と体重が増えていた。

 さらに、週末に睡眠時間を多くとると夕食後のカロリー摂取量は減少するが、ふたたび5時間睡眠に戻るとカロリー摂取量は増え、インスリン感受性が低下することが分かった。
睡眠時間を十分にとることが大切
 「今回の研究結果は予想していなかったものです。週末に寝だめをした人では、筋肉と肝臓に特異的なインスリン感受性が悪化していました」と、ライト教授は言う

 インスリン抵抗性が続くと、2型糖尿病のリスクが上昇する。慢性的な睡眠不足は糖尿病や肥満と関連が深いことは、これまでの研究でも示されている。

 「慢性的な睡眠不足は、疲れやすさ、集中力や注意力の低下、ストレスを高めるなど、メンタル面にも悪影響が及びます。毎日十分な睡眠時間をとることを心がけるべきです」と指摘している。

 米国睡眠医学会は、ひと晩に7時間以上の睡眠をとることを推奨している。しかし、「多くの人は十分な睡眠をとっていません。米国ではひと晩の睡眠時間が6時間未満という人が7,000万人に上るという調査結果があります」と、米国睡眠医学会会長のロナルド シャービン氏は言う。
20分の昼寝は効果がある
 「人から借りたお金は返済できますが、睡眠負債はそうはいきません。人によっては寝だめにも一定の効果はありますが、どうしても睡眠時間を確保できない場合は、20分の昼寝の方が効果的です」と、ミシガン大学睡眠障害センターのキャシー ゴールドスタイン氏(神経学)は言う。

 人の体は、1日ほぼ24時間の周期でリズムを刻んでいる体内時計の働きによって、夜には眠くなり、朝には目が覚めるようにコントロールされている。体内時計を調整するホルモンのひとつであるメラトニンが入眠を促している。

 一般的にメラトニンは午後9時を過ぎると分泌が増え、翌日の午前中に低下する。夜に眠りにつきにくいと感じるようであれば、体内時計に変調が起きている兆候だという。

 「1日に1時間、睡眠時間がずれただけでも、体内時計に影響が出てきます。最終的には毎日十分な睡眠をとることが目標です。そうすることで代謝や心血管、メンタル面での健康を向上でき、多くのメリットを得られます」と、ゴールドスタイン氏は指摘する。

 たった20分の昼寝であってもリフレッシュ効果を得られることが分かっている。また、休日も規則的な睡眠を心がけることで、体内時計のずれが大きくならず、平日の睡眠の質を改善することにつながる。
睡眠を改善するための6ヵ条
 睡眠を改善するために、ゴールドスタインは次の生活スタイルを勧めている。

  • 7〜8時間の睡眠をとるとることを目標に、スケジュールを調整する。就寝時間も一定にする。これを毎日続けることが大切だ。

  • 朝も一定の時刻に起き朝食とることで、体を目覚めさせる。朝に太陽の光を浴びて、運動するのも効果的だ。

  • 午後になったらカフェイン入り飲料を控え、夜もアルコールを飲み過ぎないようにする。これらは睡眠の質を低下させるおそれがある。

  • ウォーキングなどの運動を習慣的に行うとよく眠れるようになる。運動すると睡眠を促す神経伝達物質が増える。ただし、就寝の直前には行わない。できれば運動は午前や午後に行うと良い。

  • スマートフォンなどのブルーライトは、メラトニンの分泌を抑え、睡眠の妨げになる。スマホやタブレットなどの電子機器には、就寝の2時間前からさわらないようにする。

  • 寝室に入ったら、眠ることに集中する。仕事や雑務、悩みごと、コンピュータを使った作業などを、寝床にもちこまない。

世界睡眠デー
Does extra sleep on the weekends repay your sleep debt? No, researchers say(Cell Press 2019年2月28日)
Ad libitum Weekend Recovery Sleep Fails to Prevent Metabolic Dysregulation during a Repeating Pattern of Insufficient Sleep and Weekend Recovery Sleep(Current Biology 2019年2月28日)
5 Tips for Better Sleep (Counting Sheep Not Required)(ミシガン大学 2017年3月14日)
A Sleep Expert's Shut-Eye Setback: Join Dr. Goldstein's Challenge(ミシガン大学 2017年3月7日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲