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2019年04月01日

「ファストフード」は健康的になったか? 糖尿病や肥満にも影響 30年間の調査の結果

 「ファストフードは不健康」という風評が広がって以来、チェーン店を展開している企業は健康的なメニューを増やすなどして対策している。しかし、米国のボストン大学は「ファストフードは30年前よりもさらに不健康になっている」という調査結果を発表した。
健康的なメニューも増えたが、全体では悪化
 ファストフードは米国で1950年代に登場し、世界の食文化を劇的に変えた。日本でも利用者はこの30年間で大幅に増えている。多くの国でチェーン店を展開している企業の多くは、効率を高めるため各国で共通のメニューを提供している。今回の研究は日本人にも参考になるものだ。

 「ファストフードの普及は、費用対効果と時間の節約をもたらしましたが、その代償として低栄養と高カロリーの食事の摂取の増加をもたらしました。米国ではファストフードが摂取カロリーの11%を占めています」と、ボストン大学公衆衛生学部のモーガン マクロリー氏は言う。

 「今日のファストフード店のメニューでは数多くの選択肢が提供されています。確かに健康的なメニューもありますが、カロリー、サイズ、塩分含有量などは全体的にはむしろ悪化しているのです」と、マクロリー氏は指摘する。

 この研究は、米国農務省の農業研究サービスの支援を受けて行われ、詳細は米国栄養士会が発行する「Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics」に発表された。

関連情報
肥満や2型糖尿病、心臓病の増加に関連
 研究によると、現在のファストフードで摂取するカロリーは、メインメニューにサイドメニューを付けると、平均で767kcalになる。1日の成人の総摂取カロリーの平均を2,000kcalとすると、ファストフードが40%近くを占めることになる。これに高カロリーの清涼飲料を追加すると、カロリー比率は45〜50%に上昇する。

 とくに季節限定の商品は、調査期間を通して利用可能な商品よりも健康的でない傾向があるという。ファストフードのチェーン店は世界中で増えており、米国では20歳以上の成人の37%がファストフードを週に1回以上利用している。

 「食生活をめぐる環境は過去数十年で大きく変化しており、ファストフードの人気は高い。肥満や2型糖尿病などの慢性疾患や心臓病の増加と関連があると考えざるをえません」と、マクロリー氏は指摘する。

 研究チームは、米国人のファストフードの利用状況について、1986年、1991年、2016の3回に分けて、ファストフードを1,787のカテゴリーに分類して調査。マクドナルド、デイリークイーン、ケンタッキーフライドチキンなど、米国の上位10位のファストフードチェーン店のメニューを調査した。メニュー項目、摂取カロリー、ポーションサイズ、エネルギー密度、食塩・カルシウム・鉄分などの栄養素の摂取について調べた。
ファストフードのカロリーと塩分が30年間で増加
 ファストフードのメニューを「メインメニュー」「サイドメニュー」「デザート」の3つのカテゴリーに分けて解析。その結果、次のことが明らかになった――。

・ ファストフードのメインメニュー、サイドメニュー、デザートの品目数の合計は30年間で2.26倍に増えた。1年あたり平均して22.9品目増えている計算になる。

・ ファストフードのカロリーは、3つのカテゴリーすべてで大幅に増加している。もっともカロリーが増えたのはデザートで、10年間で1食あたり62kcal、30年間で200kcal近く増えた。続いてメインメニューは10年間で30kcal、30年間で100kcal近く増加した。これらは主にポーションサイズの増加によるものだ。

・ カロリーだけでなく、塩分(ナトリウム)もほとんどのメニューで増加している。塩分は30年間で1日あたりメインメニューで4.6%、サイドメニューで3.9%、デザートで1.2%、それぞれ増えた。

 調査したチェーン店10件のち4件で、カルシウムと鉄の含有量について調査したところ、カルシウムはサラダやデザートで、鉄分はデザートでそれぞれ増加した。カルシウムと鉄の含有量が増えたことは、骨の健康を保ち貧血を予防するために歓迎すべきことだ。

 しかし、カロリーと塩分が増えていることは、肥満や2型糖尿病、高血圧、脂質異常症の予防・改善の観点からみると好ましくない。
消費者が健康的な選択をできるよう工夫を
 「ファストフードで過剰なカロリーと塩分を摂取しないために、創造的な解決策をみつける必要があります。メニューにカロリーや栄養の表示をするチェーン店が増えてきたのは良い傾向ですが、まだ十分ではありません。サイズを小さくし価格も安くしたメニューを増やすなど、もっと変化が必要です」と、マクロリー氏は指摘する。

 米国でも肥満や2型糖尿病の増加が深刻な問題になっており、これらに強く関連する食事スタイルをいかに改善するかが課題になっている。「消費者が自分の健康について関心をもち、健康的な選択をしやすくする工夫が必要です」と強調している。

Thirty years of fast food: Greater variety, but more salt, larger portions, and added calories(米国栄養士会 2019年2月27日)
Fast Food Restaurants Have Expanded More Than Their Menus(ボストン大学 2019年2月27日)
Thirty years of fast food: Greater variety, but more salt, larger portions, and added calories(Journal of the Academy of Nutrition and Dietetics 2019年2月27日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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