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2019年04月17日

たばこをやめれば糖尿病のコントロールは改善する 禁煙のメリットは大きい

 5月31日は世界保健機関(WHO)が定めた「世界禁煙デー」。
 たばこをやめたくてもやめられないという人は多い。その理由のひとつは、禁煙後の体重増加だ。
 禁煙に成功した後の数年間は、体重増に気を付けていないと、糖尿病リスクが20%以上上昇することが、米国の17万人以上を対象とした研究で明らかになった。
 ただし、たとえ体重が増えたとしても禁煙によるメリットは大きく、心血管疾患やがんなどのリスクが低下、早死リスクも半減するという。
 さらに、糖尿病があり喫煙習慣のある人が禁煙すると、HbA1cが下がり、血糖コントロールを改善する最大の効果を得られるという研究も発表されている。
禁煙により心血管疾患や早期死亡のリスクが大幅に低下
 ハーバード大学公衆衛生大学院の研究チームの研究で、禁煙後に体重が増えるほど短期的な2型糖尿病リスクが高まる可能性のあることが示された。

 ただし、禁煙による健康へのメリットは極めて大きく、体重増加の程度にかかわらず、長期的には禁煙によって心血管疾患の発症や早期死亡のリスクが大きく低下することも分かった。

 「たばこを吸う人が禁煙をすると、禁煙後の数年間は2型糖尿病や耐糖能異常のリスクが上昇することが知られています。このことが、喫煙者が禁煙をためらう原因のひとつになっています」と、ハーバード大学栄養学部のキ サン准教授は言う。

 「しかし、私たちの研究では、糖尿病リスクを高めるのは、禁煙後の体重の変化であることが分かりました。つまり、体重の増加を抑えられれば、糖尿病リスクは上昇せず、長期的には減量も可能なのです」。

関連情報
たばこを吸う人は禁煙をためらうべきではない
 研究チームは、「看護師健康調査」(Nurses' Health Study)、「看護師健康調査II」(Nurses' Health Study II)、「医療従事者フォローアップ調査」(Health Professionals Follow-Up Study)という3件に大規模研究に登録された17万1,150人の男女の平均19年間のデータを解析した。

 その結果、禁煙してから間もない人の2型糖尿病の発症リスクは、喫煙中の人に比べて平均22%以上高くなっていた。

 糖尿病リスクは禁煙してから5〜7年が経った時点でピークを迎えるものの、その後は徐々に低下していった。

 また、体重の増え方が大きい人ほど2型糖尿病リスクはより高くなり、体重が増えなかった人はリスクが上昇しなかった。また、禁煙後30年経つとリスクはもともとの非喫煙者と同レベルにまで低下した。

 さらに、禁煙により得られる恩恵は、体重増加によるデメリットを上回ることも分かった。体重増が10kg以上だった人ですら、禁煙後は全死因による早死リスクが50%減少、心血管疾患による早死リスクは67%減少したことが明らかになった。

 「禁煙で得られるメリットは明白です。心筋梗塞などの心血管疾患のリスクが大幅に減少するのです。たばこを吸う人は禁煙をためらうべきではありません。ただし、禁煙後の体重増加には気を付けた方が良いでしょう」と、ハーバード大学栄養学部のヤン フー氏は言う。
たばこをやめるとHbA1cが低下 禁煙は血糖コントロールを改善する
 たばこをやめられないもうひとつの理由は、糖尿病のある人では血糖コントロールが悪化する心配があることだ。しかし実際には、禁煙により血糖コントロールはむしろ改善するという研究が発表された。

 研究は、英国のコベントリー大学によるもので、国立プライマリケア保健研究所の支援を得て行われた。研究には喫煙習慣のある2型糖尿病患者1万692人が参加。うち3,131人(29%)が禁煙に成功し、1年間以上たばこを吸っていなかった。

 HbA1cは過去1〜2ヵ月の血糖値の平均を反映する。HbA1cの推移を3年間調べたところ、禁煙した糖尿病患者のHbA1cは平均で0.21%低下した。

 一方で、禁煙できなかった患者は5,831人(55%)。禁煙しなかった患者のHbA1cは同時期にやや上昇した。
禁煙は糖尿病合併症の予防の観点でも重要
 「研究では、禁煙により血糖コントロールが悪化することはないことが示されました。むしろHbA1cを改善するのに禁煙は効果的です」と、コベントリー大学保健・生命科学部のデボラ リセット氏は言う。

 これまでの研究で、糖尿病患者がHbA1cを1%低下させると、心不全の発症リスクが16%低下し、細小血管障害のリスクが37%低下することが示されている。

 禁煙によって血糖コントロールが悪化するという考えが、喫煙習慣のある人が禁煙するのをためらう理由のひとつになっているが、禁煙を試みる時期に血糖コントロールを積極的に強化すれば、HbA1cに悪影響をもたらすことはないという。

 「禁煙は糖尿病合併症の予防の観点でも重要です。糖尿病のある人は、禁煙のための努力をおしむべきではありません。たばこを吸う習慣のある人は、禁煙することで、血糖コントロールを改善するための最大のメリットを得られます」と、リセット氏は強調する。

Weight gain after smoking cessation linked with increased short-term diabetes risk(ハーバード公衆衛生大学院 2018年8月15日)
Smoking Cessation, Weight Change, Type 2 Diabetes, and Mortality(New England Journal of Medicine 2018年8月16日)
Study links quitting smoking with deterioration in diabetes control(コベントリー大学 2015年4月29日)
The association between smoking cessation and glycaemic control in patients with type 2 diabetes: a THIN database cohort study(Lancet Diabetes & Endocrinology 2015年4月29日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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