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 No.18
眼鏡をかけるとよく見える?
(2001.6)

 視力が悪くなったら眼鏡やコンタクトをすれば、よく見えるようになります。でもそれは、近視や遠視、あるいは乱視などの屈折異常による視力低下の場合。それ以外の理由で視力が悪くなっているときは、眼鏡をかけたりコンタクトレンズをはめても、よく見えるようにはなりません。
 今回は、視力の話です。糖尿病が原因で視力が低下したり、光を失うことがあるということは、よく知られています。でも、「視力が悪くなったら眼鏡をかければよいではないか」と考えている人もなかにはいるようで、ちょっと不安です。なぜなら、糖尿病で視力が低下するのは、屈折異常が原因ではないからです。

■目の構造はカメラと同じ

 眼球の構造はカメラ(一眼レフカメラ)に似ています。カメラで写真を撮ってプリントがあがるまでには、次のような手順があります。

1.レンズキャップをはずします
キャップをしたままでは、なにも写りません。
>>>眼では、まぶたをあけた状態と同じです。眼は、まぶたをあけている間ずっと、次の2番から5番目までを瞬時に処理し続けます。
2.ピントを合わせます
ピントを合わせないと、ピンボケの写真になります
>>>眼では毛様体がこの役割を担っています。毛様体が水晶体(レンズ)の厚さを調節して、常に網膜(フィルム)にピントが来るようにしています。<
3.露出を決めます
適正な露出にするため、絞りを調節します。明るい所では絞り込み、暗い所では絞りをあけます。露出オーバーやアンダーでは、きれいな写真は撮れません。
>>>虹彩が瞳孔の大きさを調節して、眼球内に入る光の量を調節しています。暗い所では瞳孔が開き、明るいところでは瞳孔が縮みます。
4.シャッターボタンを押します
シャッターが開いた瞬間、レンズを通過した光がフィルムに感光します。
>>>眼の場合は、まぶたを開いているかぎり、ずっと撮影中です。

 このうちどれか一つが欠けても、ちゃんとした写真は仕上がりません。では、眼の仕組みとカメラの構造を対比させながら、眼の病気をみていきましょう。

■屈折異常はレンズを追加して矯正できる

 まず最初は屈折異常です。近視や遠視などが該当します。老視(老眼)は原因が加齢によるものなので、必ずしも病気とはいえませんが、屈折異常と同じような状態です。
 屈折異常は、カメラのレンズにあたる水晶体の厚さの調節がうまくいかないことや、眼球の長さが長すぎたり短すぎるために起こります。カメラにおきかえると、前者はピントリングの故障で近景か遠景のどちらかにしかピントが合わなくなった状態、後者はカメラの設計ミスで、カメラボディーの厚さが厚すぎたり薄すぎる状態です。
 そんなカメラでも、なにも大掛かりな解体修理は必要ありません。レンズの前にもう一枚凹レンズか凸レンズを付けてあげれば、ピントのあった写真を撮れるようになります。屈折異常も同じで、眼鏡やコンタクトレンズでピントの位置を修正してあげれば、視力は矯正できます。

■白内障はレンズの総取り替え

 白内障は、水晶体が濁る病気です。多くは加齢が原因で起きる老化現象のひとつですが、糖尿病だと白内障が起きやすくなります。
 カメラのレンズも長年使っていると、濁りが出でくることがあります。そんなときは、濁ったレンズで光が遮られて、フィルムに鮮明な像が写りません。このような状態では、凹レンズや凸レンズを追加しても意味はありません。そこで、レンズ交換の必要が出てきます。多少値がはりますが、新品のレンズに変えれば、以前どおりきれいな写真が撮れるようになります。
 白内障の治療も全く同じ。濁った水晶体を眼内レンズに置き換える手術で、元どおりの視力が回復します

■網膜は取り替えようがない

 さて、網膜症。糖尿病で一番問題になる眼の合併症です。網膜はカメラにたとえると、フィルムにあたります。網膜症は、網膜に出血が起きてシワになったり傷められたりして、光が当たっても映像を描けなくなる合併症です。つまり、フィルムとしての機能が低下する病気です。あるいは網膜剥離が起きると、フィルムが引き裂かれたのと同じ状態になります。
 ボロボロに破れシワがあるフィルムでは、いくらレンズが新品でも写真は撮れません。もちろん、凹レンズや凸レンズを追加したりしても、全く関係ありません。つまり、眼鏡やコンタクトレンズはなんの役にも立たないのです。
 そして一番問題なのは、網膜の入れ替えはできないということです。カメラならフィルムが駄目だとわかったなら新しいフィルムを入れればよいのに、また、白内障には水晶体のかわりになる眼内レンズがあるのに、網膜症にはそれがありません。レンズよりも安く買えるはずのフィルムがないのです。
 網膜は二度と再生しません。治療手段としては、手術で破れたりシワになったりした網膜を、できるだけ元の状態に近付けてあげることしかできません。手術が一応上手くいっても、元のように見えるとは限りません。一度しわくちゃになったフィルムをのばして、もう一度使うようなものですから。

■網膜症の自覚症状は最後に出る

 糖尿病で視力を失わないためには、まず、網膜症にならないことです。それには血糖値のコントロールが大切です。そして、もし網膜症になったとしても、その進行を抑えることです。それにはなによりもます、網膜症を早期発見することです。
 網膜症で視覚障害が起きるのは、眼底出血や硝子体出血、網膜剥離が起きたときで、それまでは症状が全くないことも少なくありません。自覚症状が出たときはすでに深刻な事態になっている可能性もあるので、自覚症状が出る前に検査を受けて、早期発見を心掛けてください。

●関連情報
  糖尿病セミナー「糖尿病による失明・網膜症
  眼科医からみた失明しないためのアドバイス
  目と健康シリーズ「糖尿病網膜症」「糖尿病黄斑症

 
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