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16. GOLD・たばこ・糖尿病
2001年05月
 先日、慢性閉塞性肺疾患(COPD)治療の国際ガイドライン「GOLD(ゴールド)」の発表会見に参加してきました。COPDとは、気管支が狭くなったような症状(おもな症状は息切れやせき、たん)が長引く病気です。世界各国で患者数が増え続けていて、アメリカでは死亡原因の4位にあげられているとのことです。COPDの患者数増加とそれによる死をなんとかして食い止めようと、標準的な治療の普及と社会的関心を喚起するための国際的な活動の始まりが、今回のGOLD発表の目的のようです。
「糖尿病とはあまり関係なさそうだな」というのが会見に参加した率直な感想で、多少持てあまし気味ですが、せっかくなので記事にしてみました。

    COPD:hronic bstructive ulmonary isease
    GOLD:lobal Initiative for Chronic bstructive ungisease
未診断・未治療の人がたくさんいて、そのうち怖いことになる病気「COPD」

 COPDは、発病したからといって直ちに生命に関わる病気ではありません。しかし、病気が進むにつれて症状がひどくなり、からだを動かすのもひと苦労するなど、快適な日常生活が奪われていきます。また、心臓病などの合併症も起きてきます。
 病気そのものを治療することはできず、息苦しさなどの自覚症状の改善と、病気の進行を遅らせて合併症を防ぐことを目的に、対症療法的な治療と呼吸器リハビリテーションが行われます。こうした治療の目的と方法を、患者さんが理解し、確実に、気長に続けていくことが、病気の管理・治療の最大のポイントです。
 これまで、厚生省の調査などでは、国内のCOPDの患者さんはそれほど多くないとされていましたが、最近の調査では、40歳以上の人の5パーセント以上が該当し、しかもその9割以上の人がCOPDと診断されておらず、放置されたままとのことです。

COPDと糖尿病

 で、このGOLDをこのページで取り上げるにはどうすればよいか、あれこれ考えてみました。
 まっ先に思いつくのは、COPDも糖尿病と同じように、患者数が増加していることや、患者さんの治療に対する取り組みが病気の進行を左右すること、未治療の患者さんが多いことです。病気が進行してから「こんなことになるなら早く言って欲しかった…」なんていう患者さんが増えないように、COPDも糖尿病も、一次予防・二次予防に向けて、より一層正しい知識の普及が急がれます。
 また、COPDで気をつけたいのは、なにかの感染症をきっかけに症状が急に悪化する「急性増悪」です。冬場に多く、おもにかぜやインフルエンザがきっかけとなります。ふだんから感染症対策をしっかり立て、なるべく急性増悪を招かないようにしなければいけません。糖尿病の人は感染症にかかりやすい傾向があるので、より注意が必要といえるのかもしれません。
 もうひとつ気になったのは、現在開発中の吸入インスリンのことです。報道によると、そう遠くない将来、吸入型のインスリンがアメリカで上市され、いずれ日本でも発売されるとのことです。吸入型のインスリンが登場すれば、現在の注射による投与よりも心理的なハードルが低くなり、2型の患者さんでコントロールが不十分なまま経過している人などでも、インスリン療法を始めやすくなると考えられています。
 この吸入型インスリン、COPDの患者さんでも使用できるのでしょうか? あるいはCOPDだとインスリンの吸収が一定しにくく、血糖値が不安定になるようなことはないでしょうか? インターネットで調べたものの、探し方が悪いのか、結局よくわかりませんでした。

COPDとたばこ

 ところで、なぜCOPDになるのか、COPDの原因についてですが、最も関係が深いのは「喫煙」です。GOLDでは、COPDをステージ0からステージ3の4段階に病期分類しています。この分類の特徴は、自覚症状や合併症の有無によりステージ1から3に、軽症、中等症、重症と分けている以外に、ステージ0が「リスクを有する状態」とされている点です。
 ステージ0に該当するリスクとは、具体的には「たばこを吸っていて、せきやたんがよく出る」ことです。COPDを発病していなくても、たばこを吸っているという時点ですでにCOPDの前段階なんですよ、ということなのでしょう。ただし、たばこを吸う人の5人に1人の割り合いでCOPDが発病するといわれていて、同じようにたばこを吸っていてもCOPDになる人とならない人がいるわけです。その差には、遺伝的なことも関係しているようです。
 ここで思いつくのは、肥満と糖尿病の関係です。もし、GOLDのステージ0の考え方を糖尿病(2型糖尿病)に当てはめるのなら、それは「肥満」が該当するのではないでしょうか。もちろん、喫煙とCOPDの関係と同じように、肥満している人のすべてが糖尿病になるわけではありません。あるいは肥満でなければ糖尿病にならないわけでもありません。糖尿病になるかならないかは、やはり遺伝的な要素も関与しています。
 しかし、糖尿病の人の約8割が現在または過去に肥満の時期があったとされる以上、喫煙とCOPDの関係と同じように、両者には強い繋がりがあるといえそうです。このことから、たとえばBMI25以上(日本人の場合)を糖尿病のステージ0とする、という考え方があってもいいように思います。


糖尿病とたばこ

 たばこの話のついでに、糖尿病と喫煙の関係について触れます。喫煙がからだに害を及ぼすことはもう世界の常識です。たばこは吸わないほうがいいにきまっています。
 糖尿病の人の場合、糖尿病でない人に禁煙がすすめられるよりも、もう少し積極的に禁煙を考える必要があります。喫煙は血流を悪化させたり、血管の壁を傷つけて動脈硬化を進行させるからです。糖尿病の合併症の多くは血流障害により起こるものですし、糖尿病の人は動脈硬化が進みやすく、喫煙はそのスピードをさらに早めてしまいます。
 このようなことを理解したうえでなお、たばこを吸い続けるのなら、その人の人生観でしょうから仕方ありません。ただ、少なくても周囲にたばこを吸わない人がいる場所では、遠慮していただきたいものです。

 今回は、GOLDをやや強引に糖尿病に結びつけ、思いついたことを書き並べてみました。  

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INDEX
  1. 厚生白書に見る糖尿病
  2. 糖尿病の患者数と医療費の推移
  3. 目で見る病型、病気のかたち
  4. 糖尿病食と減塩食
  5. 5分でわかる糖尿病
  6. インスリンを打つということ、食事を摂るということ
  7. 足がビリビリ? 神経障害
  8. 糖尿病ネットワークを担当して
  9. 『糖尿病からの帰還』を読んで
  10. 眼鏡をかけるとよく見える?
  11. 糖尿病の方が加入できる保険
  12. 糖尿病と人工透析(1999)
  13. 長時間、飛行機に乗る際に
  14. 高血糖は高血圧や高脂血症より、健康上の問題として認識されにくい
  15. インスリン誕生の地
  16. GOLD・たばこ・糖尿病
  17. 「糖尿病ネットワーク」開設5周年
  18. 食後3時間以上経過して血糖値200以上の人の頻度、ほか
  19. 超速効型インスリンは、山を削って谷を埋める
  20. 尿糖を調べてみよう
  21. 生活習慣病の一次予防に向けて
  22. “インスリンに頼る”という表現
  23. 民間療法
  24. 「日臨内研究2000」にみる、糖尿病性神経障害とわが国の糖尿病の実態
  25. 糖尿病の食事療法
  26. 雑感『生活エンジョイ物語』
  27. 血糖値の情報量
  28. 女性糖尿病患者はどこに?〜性差と病名について〜
  29. 気になったセールストーク
  30. インスリン療法を続けて50年 第1回「リリー インスリン50年賞」表彰式
  31. 糖尿病患者として世界で初めて南極点へ到達 ウイル・クロスさん
  32. 糖尿病とたばこ
  33. 旅行者血栓症
  34. インスリン療法を続けて50年
  35. 糖尿病患者さんの年末・年始の過ごし方