No.19
超速効型インスリンは、山を削って谷を埋める
超速効型インスリン「ヒューマログ(商品名)」が間もなく国内で発売されるとのことです。その販売元の日本イーライリリーの主催で行われた、「より生理的な血糖コントロールをめざして」と題したシンポジウムを見てきましたので、そのとき聞いた話をまとめてみます。
■HbA1Cは血糖変動の平均値
数題の講演があったのですが、講演内容のなかでたびたび取り上げられ、印象に残ったのは、血糖変動の振幅と合併症の関係でした。
現在、糖尿病の治療(血糖コントロール)の指標としては、HbA1Cが多く用いられています。HbA1Cは、検査の時点から過去1〜2カ月の血糖コントロールの状態がわかる重宝な検査値です。
しかしHbA1Cは、血糖変動の平均値を示すため、過去1〜2カ月の間に血糖値が実際にどのくらいの幅で上下動していたかは、わかりません。例えば図1のように、食前も食後もよく血糖コントロールできているAという人と、食前は血糖がかなり低く食後に高血糖になっているBという人を比較した場合、血糖値の平均値であるHbA1Cには、差が現れないということです。
■HbA1Cが同じでも合併症の起こり方が異なる理由は
とはいえ、HbA1Cが同じだからといって、AとBの場合で、合併症の起こる確率が同じというわけではないようです。<
血糖値がある程度以上に高くなっている時間帯(図1のピンクの部分)には、血液が固まりやすくなったり、タンパク質の糖化、酸化ストレスが強まる、遊離脂肪酸が放出される、など、からだによくない現象が起こり、それが合併症を引き起こす原因となります。さらに、それら血糖値が高い時間帯に起きる現象の一部は、血糖値が正常域に低下したあとも、引き続き悪影響を及ぼすようです。
ですから、より理想的な糖尿病管理とは、高血糖状態にある時間を減らし、HbA1Cでは把握できない血糖値の上下動“振幅”を少なくすること、つまり、より健康な人の血糖変動に近づける、ということになります。今回のシンポジウムのテーマが「より生理的な血糖コントロールをめざして」となっているのは、このためなのでしょう。
講演では、山岳地帯の写真と丘陵地帯の写真を対比させ、この辺りのことをわかりやすく解説していました。1日24時間、同じ時間内で、なだらかな山を3回上り下りするのに比べ、急峻な山を上り下りするほうが大変で、からだは疲れます。

図1HbA1Cは血糖変動の平均値
■尿糖が出てなくても糖尿病でないとはいえない
一方、空腹時の血糖値が126mg/dL以上の場合は糖尿病と診断されます。ところが、血糖値が126mg/dL以上でも170mg/dL前後に達していなければ尿糖は検出されませんから、尿糖検査だけでは糖尿病を見逃してしまうことになります。
つまり、尿糖が出ていないからといって糖尿病ではないとはいえないということです。また、じん臓の機能は年齢とともに低下することが多く、高齢者では糖尿病で血糖値が170mg/dLよりさらに高くなっても、尿糖が検出されないこともあります。
なお、血糖値が正常レベルにあるのに尿糖が排泄される「じん性糖尿」という状態もあり、これは糖尿病ではありません。
■尿糖を測ってみよう
このような理由から、糖尿病の可能性を否定するのには尿糖検査は向きませんが、もし尿糖が検出されれば糖尿病の疑いが強いと判断できます。また、尿糖測定でおよその治療経過をみることもできます。ここで、尿糖を測って治療に生かす方法を簡単に紹介しておきます。