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21. 生活習慣病の一次予防に向けて
2001年09月
〜日本生活習慣病予防協会の活動紹介〜

 『生活習慣病』という言葉が登場したのは、今から5年前、平成8年のことです。それまで使われていた『成人病』という言葉は「病気の原因は加齢」という語感があって、「年をとる以上、病気になるのはしかたがない」というイメージがつきまとっていました。成人病に対する行政施策も、病気を早期発見して早期治療を行い病状を進行させないこと、『二次予防』が主眼でした。

 しかし、成人病と呼ばれる病気の多くは、年をとることだけで発病するのではなく、食事のとり方や運動習慣、からだ・心の休養、嗜好などの影響を受けて発病するものです。ですからそれらを見直すことで、病気を予防したり、発病を遅らせることができます。病気の発病後に治療を開始するよりも、それを未然に防ぐほうが、少ない努力で高い効果があがり、個人個人にとっても社会経済的にみても、より効率がよいわけです。

 例えば糖尿病(2型糖尿病)の場合、糖尿病と診断されるほど血糖値が高くなってから血糖コントロールをするには、食事療法や運動療法、薬物療法をきっちり守る必要がありますが、糖尿病予備軍の段階以前なら、比較的簡単な食習慣の見直し、からだをなるべく動かす習慣を身につける、といったことでコントロールできることでしょう。時間をかけて通院したり、薬をたくさん飲む必要もありません。

 このようなことから、病気の発病を予防する『一次予防』が重要視されるようになったのですが、それには「年をとると起きる病気」とのイメージが定着していた『成人病』という言葉では、都合が悪くなってきました。そこで、厚生省(当時)が『生活習慣病』という新しい言葉を提言し、一次予防に力を入れ始めたわけです。

 とはいっても、二次予防が病気と診断された人に対して行う“治療”であるのに対し、一次予防は未だ病気とは診断されていない人に対して行う“指導”または“呼び掛け”ですから、その大切さを訴求するには従来とは違った方法をとる工夫が求められます。生活習慣病は、「なってから治療するより、なる前に予防できるのであれば予防したほうが得」だということは、できるだけ多くの人に知ってもらったほうがよいわけです。それには、正しく整理された情報が数々の手段で伝えられるべきで、その機会は多ければ多いほどよいといえます。

 現在、生活習慣病の一次予防に向けて、行政、医療機関、医薬関連会社などが、さまざまなに活動していますが、そんな中から今回は、昨年9月に発足した『日本生活習慣病予防協会』の池田義雄理事長にお話を伺いましたので、会の活動内容などを紹介します。

■組織の目的、発足の経緯など

 かつて、病気といえば感染症がおもなもので、とくに結核は日本の国民病と恐れら れていました。ところが戦後これらの病気は少なくなり、かわって20年ほど前から増 え始めたのが、遺伝的要素に生活習慣などが加わって発病する、「生活習慣病」と呼ばれる病気です。生活習慣病は、人から人へ感染して患者数が拡大することはありませんが、発病の基盤に生活スタイルが関係しているので、社会構造・生活環境の移り変わりに歩調をあわせ患者数が増加してきました。

 生活習慣病は、生活習慣の良否が病気の発病を左右します。発病を予防し活動的な人生を守るには、病気に関する正しい理解が欠かせません。当会は、このような疾病構造の変化を背景に、生活習慣病に関する正しい理解、予防についての啓発を目的として、1年前に発足しました。

 おりしも昨年、厚生労働省は第3次国民健康づくり対策にあたる「健康日本21」をスタートさせ、生活習慣病の一次予防に力点をおいた取組みを行っています。当会の活動も、健康日本21の運動を側面的に支援するものとなると思います。


  日本人のおもな死因別死亡率の推移(死亡率は人口10万人あたりの死亡数のこと)
  (厚生労働省「人口動態統計」より)

■「生活習慣病」というと、どのような病気が該当するのでしょう

 食べる、飲む、からだを動かす、休む、寝る、たばこ、アルコールなどの生活習慣が病気の発病や進行に関係している疾患群のことです。具体的には、高血圧、糖尿病、高脂血症、精神的な病気の一部、がんなどです。

 これらの病気は、互いに密接なかかわりをもっています。一例をあげると、肥満気味の人は高血圧や糖尿病、その他の病気になりやすくなります。肥満になる原因は多くの場合、生活習慣にあるのですから、生活習慣を見直せば、これらの生活習慣病の発病を予防できる可能性が高いといえます。

■会の名称に“予防”の二文字がついている意図は…

 遺伝的にその病気になりやすい素因があり、それに生活習慣などの環境要因が重なって発病するのが生活習慣病です。遺伝的な素因のある人がすべて発病するとなると、患者数は急増して大変なことになります。病気を早期発見・早期治療することも大切ですが、生活習慣病では発病を未然に防ぐ「予防」が重要なポイントなのです。

■これまでの具体的な活動内容は…

 現在の活動の中心は、講演会の開催とインターネットを通じた情報提供です。講演会は、年10回のペースで首都圏を中心に行っています。毎回おもな生活習慣病のなかから一つをテーマに取り上げ、数名の専門家にご講演いただいています。講演会の内容は、新聞紙上に掲載することなどで、より多くの人に理解していただけるようにしています。また、インターネットのホームページを通じて随時、講演会の告知をしてます。

 さらに近年は、“特保”と呼ばれる厚生労働省認可の「特定保健用食品」が、生活習慣病予防のために広く利用されるようになってきました。当会では、この特保に関する正しい知識の普及をめざして、講演会会場での展示などを積極的に行っています。

●関連情報
  日本生活習慣病予防協会

■今後の展開について

 しばらくは講演会の開催とインターネットの2本が柱となりますが、今後は各県・地域ごとに支部をおき、県単位・支部単位での活動も進めていきたいと思います。2〜3年以内には法人化の予定もあります。

池田義雄理事長
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INDEX
  1. 厚生白書に見る糖尿病
  2. 糖尿病の患者数と医療費の推移
  3. 目で見る病型、病気のかたち
  4. 糖尿病食と減塩食
  5. 5分でわかる糖尿病
  6. インスリンを打つということ、食事を摂るということ
  7. 足がビリビリ? 神経障害
  8. 糖尿病ネットワークを担当して
  9. 『糖尿病からの帰還』を読んで
  10. 眼鏡をかけるとよく見える?
  11. 糖尿病の方が加入できる保険
  12. 糖尿病と人工透析(1999)
  13. 長時間、飛行機に乗る際に
  14. 高血糖は高血圧や高脂血症より、健康上の問題として認識されにくい
  15. インスリン誕生の地
  16. GOLD・たばこ・糖尿病
  17. 「糖尿病ネットワーク」開設5周年
  18. 食後3時間以上経過して血糖値200以上の人の頻度、ほか
  19. 超速効型インスリンは、山を削って谷を埋める
  20. 尿糖を調べてみよう
  21. 生活習慣病の一次予防に向けて
  22. “インスリンに頼る”という表現
  23. 民間療法
  24. 「日臨内研究2000」にみる、糖尿病性神経障害とわが国の糖尿病の実態
  25. 糖尿病の食事療法
  26. 雑感『生活エンジョイ物語』
  27. 血糖値の情報量
  28. 女性糖尿病患者はどこに?〜性差と病名について〜
  29. 気になったセールストーク
  30. インスリン療法を続けて50年 第1回「リリー インスリン50年賞」表彰式
  31. 糖尿病患者として世界で初めて南極点へ到達 ウイル・クロスさん
  32. 糖尿病とたばこ
  33. 旅行者血栓症
  34. インスリン療法を続けて50年
  35. 糖尿病患者さんの年末・年始の過ごし方