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29. 気になったセールストーク
2003年07月
「ヘルスフードエキスポ」という展示会に行ってきました。

 最近よくみかける「血糖値の上昇をおだやかにする」という商品・素材もたくさん出品されていて、どのブースにも、その製品を食べた場合と食べなかった場合の血糖値や HbA1Cの推移を比較した折れ線グラフが掲げられています。折れ線グラフは右側にいくほど両者の間隔が大きく開いて、いかにも効きそうな感じです(よく見ると「n=5」とか書いてあったりして、うーんと唸ってしまうようなのもありますが…)。すでに特定保健用食品になっている製品もあれば、「今、特保をとるべくがんばっているところです」という“もうすぐ特保!”のような商品もあります。

 展示品を見ていると係の人が寄ってきて、いろいろと説明をしてくれます。身分を隠したまま(隠すほどの身分でもないですが)、適当な返事をしつつ聞いていると、たまに「おや、そんなこといっちゃうの?」と思うようなセールストークを聞きます。

「で、お値段はどのくらいなんですか?」
「1日3回毎日食べていただくと、ひと月に2万ちょっとですね」
「へぇーいいお値段ですねー」
「でも毎日インスリンを打ち続けるようになるのなら、月2万円でもこれで予防されたほうがよいのではないかと…」
「はあ・・・」

 とっさのことで、なにも答えられませんでした。

 この説明がこの人の決め台詞として通用しているのであれば、そこからいろいろなことが読み取れそうです。

 まず、その製品を食べ続ければ、本当にインスリン注射が必要な状態を予防できるのか、という疑問が浮かびます。たぶんその証拠はないはずです。反対に、その商品を食べなかったからといって、必ずインスリン注射が必要になるとは限りません。

 次に、「インスリン注射を打ち続けるなら…」という表現が含むマイナスイメージも気になります。そして、そのマイナスイメージが、恐らくインスリン注射に対する社会の平均的なイメージに近いのであろうということ。また、月2万円を高くはないと思って購入する人が、このビジネスが成立する可能性があるほど十分にいると思われること。などなど。
 まだほかにも読み取るべきことがあるかもしれません。

 近年、セルフメディケーションという英語をよく聞きます。日本語では、「自己治療」などと訳されます。その趣旨は、自分の健康を自分で管理し、医療機関での治療が必要となる前段階で病気を食い止めよう、ということだと思います。これまで薬局でしか買えなかった薬の一部がコンビニなどで買えるようになったのも、その一つの流れでしょう。でも、単に消費者の選択肢を増やし利便性を向上させるだけではなくて、正確な健康情報の普及が同時進行で進められることも大切だと思います。
「セルフメディケーションの浸透には、健康食品・サービスの利用者それぞれが自己責任の自覚をもち賢くなる必要性とともに、健康産業業界に携わる人たちの職業意識のボトムアップを促す仕組みも必要ではないか」。これが展示会を見てきた感想です。

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INDEX
  1. 厚生白書に見る糖尿病
  2. 糖尿病の患者数と医療費の推移
  3. 目で見る病型、病気のかたち
  4. 糖尿病食と減塩食
  5. 5分でわかる糖尿病
  6. インスリンを打つということ、食事を摂るということ
  7. 足がビリビリ? 神経障害
  8. 糖尿病ネットワークを担当して
  9. 『糖尿病からの帰還』を読んで
  10. 眼鏡をかけるとよく見える?
  11. 糖尿病の方が加入できる保険
  12. 糖尿病と人工透析(1999)
  13. 長時間、飛行機に乗る際に
  14. 高血糖は高血圧や高脂血症より、健康上の問題として認識されにくい
  15. インスリン誕生の地
  16. GOLD・たばこ・糖尿病
  17. 「糖尿病ネットワーク」開設5周年
  18. 食後3時間以上経過して血糖値200以上の人の頻度、ほか
  19. 超速効型インスリンは、山を削って谷を埋める
  20. 尿糖を調べてみよう
  21. 生活習慣病の一次予防に向けて
  22. “インスリンに頼る”という表現
  23. 民間療法
  24. 「日臨内研究2000」にみる、糖尿病性神経障害とわが国の糖尿病の実態
  25. 糖尿病の食事療法
  26. 雑感『生活エンジョイ物語』
  27. 血糖値の情報量
  28. 女性糖尿病患者はどこに?〜性差と病名について〜
  29. 気になったセールストーク
  30. インスリン療法を続けて50年 第1回「リリー インスリン50年賞」表彰式
  31. 糖尿病患者として世界で初めて南極点へ到達 ウイル・クロスさん
  32. 糖尿病とたばこ
  33. 旅行者血栓症
  34. インスリン療法を続けて50年
  35. 糖尿病患者さんの年末・年始の過ごし方