No.29
気になったセールストーク
「ヘルスフードエキスポ」という展示会に行ってきました。
最近よくみかける「血糖値の上昇をおだやかにする」という商品・素材もたくさん出品されていて、どのブースにも、その製品を食べた場合と食べなかった場合の血糖値や HbA1Cの推移を比較した折れ線グラフが掲げられています。折れ線グラフは右側にいくほど両者の間隔が大きく開いて、いかにも効きそうな感じです(よく見ると「n=5」とか書いてあったりして、うーんと唸ってしまうようなのもありますが…)。すでに特定保健用食品になっている製品もあれば、「今、特保をとるべくがんばっているところです」という“もうすぐ特保!”のような商品もあります。
展示品を見ていると係の人が寄ってきて、いろいろと説明をしてくれます。身分を隠したまま(隠すほどの身分でもないですが)、適当な返事をしつつ聞いていると、たまに「おや、そんなこといっちゃうの?」と思うようなセールストークを聞きます。
「で、お値段はどのくらいなんですか?」
「1日3回毎日食べていただくと、ひと月に2万ちょっとですね」
「へぇーいいお値段ですねー」
「でも毎日インスリンを打ち続けるようになるのなら、月2万円でもこれで予防されたほうがよいのではないかと…」
「はあ・・・」
とっさのことで、なにも答えられませんでした。
この説明がこの人の決め台詞として通用しているのであれば、そこからいろいろなことが読み取れそうです。
まず、その製品を食べ続ければ、本当にインスリン注射が必要な状態を予防できるのか、という疑問が浮かびます。たぶんその証拠はないはずです。反対に、その商品を食べなかったからといって、必ずインスリン注射が必要になるとは限りません。
次に、「インスリン注射を打ち続けるなら…」という表現が含むマイナスイメージも気になります。そして、そのマイナスイメージが、恐らくインスリン注射に対する社会の平均的なイメージに近いのであろうということ。また、月2万円を高くはないと思って購入する人が、このビジネスが成立する可能性があるほど十分にいると思われること。などなど。
まだほかにも読み取るべきことがあるかもしれません。
近年、セルフメディケーションという英語をよく聞きます。日本語では、「自己治療」などと訳されます。その趣旨は、自分の健康を自分で管理し、医療機関での治療が必要となる前段階で病気を食い止めよう、ということだと思います。これまで薬局でしか買えなかった薬の一部がコンビニなどで買えるようになったのも、その一つの流れでしょう。でも、単に消費者の選択肢を増やし利便性を向上させるだけではなくて、正確な健康情報の普及が同時進行で進められることも大切だと思います。
「セルフメディケーションの浸透には、健康食品・サービスの利用者それぞれが自己責任の自覚をもち賢くなる必要性とともに、健康産業業界に携わる人たちの職業意識のボトムアップを促す仕組みも必要ではないか」。これが展示会を見てきた感想です。