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 No.3
目で見る病型、病気のかたち
(2000.8)

 患者さん対象に書かれた医学書をみると、実にたくさんの病気が載っています。その数の多さといったら、病気がこれだけあるのに一つも該当しない健康な人って本当にいるのだろうか、と疑いたくなるくらいです。
 そういった本には、病気の診断に必要な検査や治療法などが実に親切に、こと細かに解説されています。ただ、同じようなパターンにあてはめて記載されているため、今一つそれぞれの病気の全体像(特徴)がわかりづらいのではないかと思うのは、私だけでしょうか?
 もちろん、一冊の本にまとめたりシリーズで出版する以上は、パターンを統一しなければならないという事情もあるとは思うのですが、家庭医学書を読む人が最も知りたいことは、いったいいつになったら病気になる前と同じ生活を送れるのか、あるいはこの先この病気が自分の人生にどういう影響を及ぼすのか、ということなのではないでしょうか。
 などと勝手なことを考えつつ思いついたのが下の図です。

■健康レベルと生活快適度は一致しない!?

 横軸は「年齢」、縦軸は「生活快適度」です。「生活快適度」とは、よくいわれるQOL(quality of life)という言葉と同じかもしれませんが、健康か否かを表す度合い「健康レベル」ではありません。生活が快適だからといって、その人が必ず健康だとはいえませんから。
 これといった病気がなくても、恐らくある程度高齢になれば少しずつ生活の快適度は低くなるものでしょう青い線。病気にかかったり事故にあうと、生活の快適度は急に下がってしまいます赤い線。入院期間中はもちろん、退院後の自宅療養、定期的な通院が必要ですから、完全に治るまでは、病気になる前の生活快適度は取り戻せません。
 病気の種類によって、治療による生活の束縛度、治療期間はまちまちです。例えば足を骨折した場合、生活快適度は途端に大きく低下しますが、数か月もすればほとんどは元の生活快適度を取り戻せることでしょう。心臓病や脳卒中では、病気の重症度にもよりますが、退院後もある程度生活快適度は制限されたものになります。リウマチなどの自覚症状を伴う慢性疾患は、治療期間は長いことが多いですが、治療によって快適度は少し向上することと思います。

■自覚症状のない慢性疾患の治療

 さて、糖尿病はどうでしょうか。
 糖尿病と診断され、食事療法や運動療法を適切に続けていこうとすれば、恐らく生活快適度は、それまでより少し低くなるかもしれません緑の線。しかし、治療を続けていれば、そのまま健康な人の線と平行で経過することでしょう。
 逆に糖尿病を放置していれば、それまでどおりの生活が続くのですから、以前どおりの生活快適度が続きます赤い線。でも、その状態が長くは続かないことはみなさんはご存じのとおりです。合併症が起きると生活快適度は下がり始め、やがて、きちんと治療している人の線を乗り越えて、合併症の進行とともにどんどん生活快適度が低くなっていくはずです。

■糖尿病と人生設計

 同じようなことは、高血圧をはじめ自覚症状の少ない慢性疾患全般に言えることかもしれません。しかし、数多くの合併症が起こり得る糖尿病は、とくにこの辺りの理解が大切な病気なのだと考えられます。  以上は、このホームページをご覧になっている方には改めていうまでもないことなのでしょう。ただ、もしまだ「血糖値が高いだけで症状もないのに、なぜ食事を減らしたりしなければいけないのか。医学辞典を読んだけど、どうも腑に落ちない」という人がいたとしたら、この図を理解の一助にしていただき、人生設計にお役立ていただければ幸いです。

(ペンネーム 大久保)

 
自宅入院
 糖尿病コラム
  
 35. インスリン療法を続けて50年
 34. 糖尿病患者さんの年末・年始の
   過ごし方
 33. 旅行者血栓症
 32. 糖尿病とたばこ

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