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30. インスリン療法を続けて50年 第1回「リリー インスリン50年賞」表彰式
2003年12月

 11月17日、インスリン療法を50年以上継続している患者さんを表彰する第1回「リリー インスリン50年賞」(主催:日本イーライリリー)の表彰式が都内で行われました。3名の1型糖尿病患者さんが受賞し、名前を刻印した純銀製のメダル(右写真)が贈呈されました。

 受賞された患者さんのお話から、一言で要約することのできない、たくさんの思いが伝わってきました。そのときの模様をご紹介します。

受賞者されたのは下記の3名の患者さんです。

白水正明さん (福岡県福岡市在住)

向井孝子さん (埼玉県川越市在住)

林 良春さん (兵庫県姫路市在住)


表彰式から
(右)白水正明さん (中)向井孝子さん (左)林 良春さん
表彰式から
向井さんがメダルを受け取るところです。向井さんは糖尿病を乗り越え、二人のお子さんを出産しました。

スピーチをする林さん
林さんは12歳で発症し、インスリン治療を開始しました。5年間、病院から通学。 その後、在宅注射で治療を続けながら、経営者として活躍しました。
■糖尿病と50年

 人生において50年は長い時間です。今回受賞された患者さんは、その長い時間を糖尿病とともに歩んでこられた方々です。

 現在では糖尿病は、国民病といえるほど増えており、ありふれた病気になっていますが、1950年代のわが国では、国民の摂取エネルギー量が少なかったので、全体では患者数の少ない病気でした。

 白水さんは1933年生まれで19歳のときに、向井さんは1936年生まれで17歳のときに、林さんは1941年生まれで12歳のときにそれぞれ発症しました。生命を維持するためにインスリン治療が必要と診断されました(当時は1型糖尿病、2型糖尿病の区別はありませんでした)。

 治療に使われたのは動物の膵抽出物によるインスリンで、精製度の劣ったものでした。現在のような患者さんの必要に合わせたさまざまな種類のインスリン製剤はありませんでした。また、便利なカートリッジタイプの注入器(ペン型注射器など)はなく、シリンジタイプの注射器が使われました。

 そのような困難を乗り越えて、血糖コントロールの重要さを理解し、治療を続けられたことは賞賛に値する、ほんとうに凄いことです。

■患者さんの頑張り

 1950年代の初め頃は、ヘモグロビンA1Cなどの検査はなく、尿糖と血糖の検査を病院で行うことが大切でした。また、現在のような在宅自己注射は認められていなかったので、患者さんの中には毎日病院に通ったり、病院から学校に通ったり、長期の入院を強いられた人もいました。いまでは考えられない大変な苦労を強いられていました。

 糖尿病に関する情報も不足していました。「糖尿病は年輩の方の病気」と思われていたので、若年の糖尿病患者さんは周囲からなかなか理解を得られなかったそうです。さらに、患者さん同士で励まし合い、情報を交換する機会は多くはありませんでした。現在からみると、想像を越える困難の中にいたといえます。インスリン治療や、人生の局面でうまくいかない事もあり、山あり谷ありだったというお話が続きました。

 糖尿病は、患者さんご自身がよく理解し、治療に取り組むことが必要な病気です。そして、治療を投げ出したり、あきらめたりしないで続けることが大切です。今回受賞された患者さんは、困難の中で主治医の指示を守り、生活習慣を規則正しくし、適度な運動を行い、ときには気分転換を上手に行う工夫を続け、現在に至っています。他の患者さんの参考になる点がたくさんあります。

 短い時間のスピーチの言葉の端々に、しみじみとした思いが込められているのが伝わってきました。

■医療スタッフ、家族への感謝の気持ち


懇親会でスピーチをする
大森安恵先生
大森先生は向井さんの2回目のご出産のときに診察されました。糖尿病のある方の出産は、東京女子医科大学では向井さんが初めてです。
 主治医と医療スタッフへの感謝の気持ちが大きいこと、それから、ご家族の精神的な支えがとても大きかったことも話されました。先生方からもお祝いの言葉があり、患者さんの受賞を心から喜んでおられることが伝わってきました。主治医の先生方も50年という時間を患者さんとともに歩まれていたことが強く感じられました。

 この50年間にインスリン製剤にはさまざまな改良や開発が重ねられ、患者さんの負担は少なくなりました。精製度が改善され、遺伝子組換えヒトインスリンが使われるようになりました。また、速効型インスリン、中間型インスリン、混合型インスリン、さらに超速効型インスリンなどさまざまなインスリン製剤が使われるようになりました。今後もより進歩したインスリン製剤が開発され、治療に使われることになります。

 現在の糖尿病患者さんは、以前に比べ恵まれている点がたくさんありますが、今回受賞された患者さんのご苦労と頑張りを知ることは、今後の糖尿病の療養に必ず役に立つことだと思いました。

■リリー インスリン50年賞

 1921年、米国でバンティングとベストによってインスリンが発見され、その翌年に世界で初めてインスリン製剤化がイーライリリー社によって成功しました。そして、1923年にインスリン製剤が初めて発売され、同年に日本に輸入され治療に使われました。今年はインスリン発売80周年にあたります。「リリー インスリン50年賞」は、これを記念して日本イーライリリーが主催し、行われています。

 なお、「リリー インスリン50年賞」は来年以降も継続され、2004年度の表彰に向けた応募も開始される予定です。

●関連情報
  日本イーライリリー

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INDEX
  1. 厚生白書に見る糖尿病
  2. 糖尿病の患者数と医療費の推移
  3. 目で見る病型、病気のかたち
  4. 糖尿病食と減塩食
  5. 5分でわかる糖尿病
  6. インスリンを打つということ、食事を摂るということ
  7. 足がビリビリ? 神経障害
  8. 糖尿病ネットワークを担当して
  9. 『糖尿病からの帰還』を読んで
  10. 眼鏡をかけるとよく見える?
  11. 糖尿病の方が加入できる保険
  12. 糖尿病と人工透析(1999)
  13. 長時間、飛行機に乗る際に
  14. 高血糖は高血圧や高脂血症より、健康上の問題として認識されにくい
  15. インスリン誕生の地
  16. GOLD・たばこ・糖尿病
  17. 「糖尿病ネットワーク」開設5周年
  18. 食後3時間以上経過して血糖値200以上の人の頻度、ほか
  19. 超速効型インスリンは、山を削って谷を埋める
  20. 尿糖を調べてみよう
  21. 生活習慣病の一次予防に向けて
  22. “インスリンに頼る”という表現
  23. 民間療法
  24. 「日臨内研究2000」にみる、糖尿病性神経障害とわが国の糖尿病の実態
  25. 糖尿病の食事療法
  26. 雑感『生活エンジョイ物語』
  27. 血糖値の情報量
  28. 女性糖尿病患者はどこに?〜性差と病名について〜
  29. 気になったセールストーク
  30. インスリン療法を続けて50年 第1回「リリー インスリン50年賞」表彰式
  31. 糖尿病患者として世界で初めて南極点へ到達 ウイル・クロスさん
  32. 糖尿病とたばこ
  33. 旅行者血栓症
  34. インスリン療法を続けて50年
  35. 糖尿病患者さんの年末・年始の過ごし方