糖尿病臨床栄養1・2・3
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糖尿病3分間ラーニング

2. ソフトドリンクケトーシスとスポーツ飲料

本田 佳子(女子栄養大学栄養学部教授)
2006年07月

 症例Aは、27歳、男性、身長172cm、体重85kg(BMI28.7kg/m2)健康診断にてIGT(耐糖能異常)を指摘され減量を指示されていましたが、IT企業の開発担当で就業時間が長時間、デスクワークを理由に、減量は実践できない状況が3年間続いていました。

 5月より気温上昇が続き、発汗が多く、スポーツ飲料を1.5L×3本/日飲み続け2カ月が経過し、口渇・多尿と全身倦怠そして意識が朦朧とした状態で母親に伴われて来院されました。

 随時血糖470mg/dL、総ケトン体は1,100μmol/Lと高値を示していましたが、これまでの健康診断の結果、抗GAD抗体などにより、ソフトドリンクケトーシス(ペットボトル症候群)と診断され、輸液による十分な補給とインスリン療法による治療を行い、その後は、食事療法のみで空腹時血糖値95〜110mg/dLを維持するまでコントロールにいたりました。

 症例Bは、症例Aほど典型的なペットボトル症候群ではありませんが、原因のわからないまま空腹時血糖100〜130mgから180〜210mg/dL、HbA1c6.4〜6.6%から7.2〜7.5%に上昇した、63歳の男性です。

 先に示したように空腹時血糖やHbA1cは良好にコントロールされ、2カ月に一度の外来受診時の体重もBMI22〜22.5と1〜2kg程度の微動にとどまっていました。本年3月に退職し、通勤に相当する運動に代えてウォーキングのコースさがしをするなど積極的に療養生活をおくっておられる方です。

 外来時、血糖上昇の原因を主治医とともに思考・検索しましたが分からないまま、1カ月に一度の外来受診を2回ほど経過しました。血糖コントロールに向けて投薬処方の変更にあたり、食事療法の厳守度の再評価を行いました。摂取エネルギー量、食事内容などの栄養素バランス、食事時刻や回数などの食べ方は、全く問題なく従来評価と変わらない良好な食事療法の厳守状況でした。

 次に、運動療法の状況や一日の生活スケジュールなどを確認すると、お茶・コーヒー等以外は飲まれていなかった方が、健康によいと自宅の庭の手入れの後、5月中旬からスポーツ飲料を1.5L×2本/日を飲んでおられたとのこと。正確には、水1.5Lに対し粉末1パックの用途を水1.5Lに対し2パック溶かし冷蔵庫で冷やして飲み“スポーツ飲料なので健康によい”と思っていたとのこと。

 直ちに、ウーロン茶、薄めの紅茶などに代え、その後の外来受診で、元の血糖コントロール状況に戻った症例でした。

 スポーツ飲料であっても、ブドウ糖液糖、果糖を含有している飲料は、多飲すると高血糖、高浸透圧を引き起こしやすくすることの知識あるいは情報の提供が不十分であったことを反省させられる2症例でした。また、一般に同濃度の糖分でも甘味度は低温では弱く感じるので、冷たい飲料は味覚として捉えるより、意外に多くの糖分を含有していることも提供すべき情報です。

 おりしも、2006年5月3日米国市場の清涼飲料大手3社のコカ・コーラ、ペプシコ、キャドバリー・シュウェップスは、子供の肥満の増加を懸念する健康団体や各州保健局の要求に応じ2009年までに、糖分を加えた炭酸飲料などを公立学校での販売をやめると発表しました。

©2006 本田 佳子

2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した
「NGSP値」で表わされるようになりました。過去の記事はこの変更に未対応の部分があります。

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