糖尿病ネットワーク

プライマリーケアで3分間!

「AAA足病チェックシート」活用のすすめ
―AAA 3minutes foot check―

下北沢病院 糖尿病センター/足病総合センター
富田 益臣

我が国では、今後高齢化や糖尿病、透析患者の増加により足のトラブルを抱える患者の増加が予想されるため、より早期に足のトラブルに介入する「足病重症化予防」の体制構築が急務となっています。近年、重症の足病患者に対して治療や手術を担う形成外科医や整形外科医などの外科医は増えていますが、足病医のシステムがない本邦では、足の外科医の数は非常に少なく、治療に難渋して切断に至る例も少なくありません。

予防には足を診る事が基本であり、足を守るためにはプライマリーケアを担う医療者が“足病内科医“へ変身する必要があります。足病内科医の役割は、外来や在宅、入院中の足病のハイリスク患者を抽出し、「自分が診る事ができる足疾患」「相談すべき足疾患」「紹介すべき足疾患」を見極められるように足病学の知識や技術を一定以上習得すること、看護師や薬剤師、管理栄養士、理学療法士などと足を守るためのチーム医療を行うことが必要になります。

一般診療の中では、足病変を起こしやすい患者背景を考慮し、「AAAスコア」などを利用したリスクの層別化、そしてここでご紹介する「AAA3分足チェック」などを利用したハイリスク患者への予防的な足の診察、そして標準化がこれからの課題となります。

足の診察方法として、包括的な足の診察方法が提唱されていますが(文献1)、日常診療においてプライマリーケアにおいて診療の間に足の包括的なアセスメントを多くの患者に行うことは時間的に難しいこともあります。また神経障害や血流障害の評価に用いられる診察器具を準備すること、そしてその手技を習得するには一定の時間が必要です。これらの問題を解決するために、米国アリゾナ州立大学Armstorng教授らは、プライマリーケアにおける簡易的な3分間の足の診察方法を提唱しました(文献2)。これを改編した足の診察法が「AAA3分間足病チェック」です。この診察方法は、病歴聴取、足の診察、フットケア教育が3分間で終わるように設定されており、従来の方法と比較して問診から診察、教育まで包括的に含み、そして診察にかかる時間が少ないことが特徴です。

プライマリーケアで3分間!「AAA足病チェックシート」活用のすすめ<br />
―AAA3minutes foot check―

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足病チェックシート活用ガイド

1:病歴聴取(1分)

足病変のハイリスク患者やリスク因子を抽出します。ハイリスク患者とは足潰瘍、足趾、下肢切断の既往、足趾の変形、末梢動脈疾患、糖尿病神経障害を有する患者、また透析患者や関節リウマチにより足趾の変形を有する患者、下肢静脈疾患で浮腫を有する患者などであり、これらの患者は、必ず一度は足の状態を確認するべきです。

糖尿病足病変の最大の予防は血糖コントロールであるため、糖尿病患者では過去の血糖コントロールや細小血管合併症などの糖尿病の病歴とともに、血管内治療などの末梢動脈疾患への治療歴、足の痺れや灼熱感などの糖尿病神経障害の陽性症状、下肢の防御感覚の低下などの陰性症状、また潰瘍の既往歴を確認します。また、血糖コントロール不良の罹病期間の長い糖尿病患者では足の防御感覚が喪失や難治性の潰瘍を有する可能性があり、注意深く問診を行います。もちろん喫煙状況も要チェックです。

2:足の診察(1分)

糖尿病患者や糖尿病が疑われる患者では、診察毎に足の注意深い診察を行うことが理想であり、皮膚や神経、血流、筋骨格系を含めた足の診察を適切に行う必要があります。特に神経障害を有する糖尿病患者の50%以上は無症状であり、感染やひび割れ、前潰瘍病変、皮膚温の変化、血流障害などの兆候に気がついていない可能性があります。

皮膚の評価

足の全体を観察し、皮膚の変色や胼胝、鶏眼、創傷、亀裂、浸軟、爪の変形、陥入爪などの有無を確認します。皮膚の変色や足趾の毛の喪失は血流障害の可能性を疑います。一方、胼胝内の出血は前潰瘍病変の可能性もあります。そして足趾や趾間を注意深く観察して、白癬などの真菌感染や肥厚爪の有無をチェックします。

神経学的評価

糖尿病神経障害により足の防御感覚を喪失した患者では、無自覚の外傷リスクが高く、また自身の足趾の変形を医療者に伝えない可能性があり、そのため医療者が気づかないうちに潰瘍や切断へ進む可能性があります。

プライマリーケアにおけるスクリーニングに有用なのは、アキレス腱反射と128Hzの音叉を用いた振動覚、Semmes-Weinsteinモノフィラメントを用いたピンプリックテストなどが世界中で用いられていますが、購入や手技の習得が必要であり、さらにSemmes-Weinsteinモノフィラメントは定期的な交換が必要です。そのため感覚神経障害の簡易な検査として、目をつぶらせて母趾、3趾、5趾の趾尖部をそっと触るIpswich試験を両側の足裏で行い、刺激を自覚できるか確認する方法も推奨されています(文献3)

筋骨格系評価

糖尿病患者の足底腱膜やアキレス腱は肥厚し、神経障害を有する患者では足底の内在筋の筋萎縮を認めることがあります。そのため足関節の背屈や底屈は減少し、関節可動域が制限されることから、足関節の可動域を確認する必要があります。そして足趾の変形やバニオンは疼痛や歩行障害の原因となり、潰瘍のリスクです。足趾の変形を有する糖尿病患者では、予防的手術も考慮し整形外科などへのコンサルトも重要です。またシャルコー関節症の早期発見のために、足の発赤や熱感を確認します。シャルコー関節症が疑われる場合には足のレントゲンを撮影し、骨折や脱臼の有無を診ます。

血流評価

末梢動脈疾患は糖尿病患者にみられる合併症です。特に糖尿病腎症にて維持透析を開始している糖尿病患者においては下肢の血行障害のリスクが非常に高くなります。最初に両側の後脛骨、足背動脈の拍動を確認します。

3:フットケア教育(1分)

患者教育は糖尿病診療において非常に重要であり、特に足病変を有する糖尿病患者では、足に関わる教育を生涯にわたって受ける必要があります。糖尿病足病変の発症予防には、足の定期検診とともにセルフフットケア教育と予防的フットケアが推奨されます。

フットケア教育を行う目的としては、患者のフットケアの知識、認識、自己防御する態度を向上させ、アドヒアランスを向上させること。そして糖尿病患者が潜在的な足の問題をもっていることを認識させ、問題が生じたときに適切な対応をとれるように気付かせることです。そのためには自宅でのフットケア、靴、そして禁煙や血糖コントロールの重要性、そして足の異常がある場合にはすぐ病院を受診するように繰り返し説明します。

アセスメントを行った後は、リスクに分類して継続的なフォローが必要となります。その頻度については、原疾患や患者の病態の複雑さなどから一概には言えませんが、Armstorngらは「外来でのリスク分類とフォロー間隔」(シート参照)を提唱しており、日常診療に有用です。

リスクの低い患者には、問診で胼胝や水泡、潰瘍の有無を確認すること、履物の評価や指導、爪切りや胼胝削りなどが考えられます。アキレス腱反射が正常でも足に胼胝を有している症例は多いので、神経障害がなくても年に1回は足を診察しましょう。

リスクの高い患者に対しては、これらの介入を1〜3カ月ごと、外来のたびに実施します。視力障害などがある患者では、看護師が医師の指示に基づいて爪切りを施行し、胼胝を削るほうが安全です。もちろん自分で安全に行うことができる患者の爪切りを看護師が行う必要はなく、リスクを見極めて、必要性の高い患者に積極的フットケアの医療資源を集中させることも大切です。

参考文献

1)Boulton AJ, Armstrong DG, Albert SF, Frykberg RG, Hellman R, Kirkman MS, Lavery LA, Lemaster JW, Mills JL, Sr., Mueller MJ, Sheehan P, Wukich DK, American Diabetes A, American Association of Clinical E (2008) Comprehensive foot examination and risk assessment: a report of the task force of the foot care interest group of the American Diabetes Association, with endorsement by the American Association of Clinical Endocrinologists. Diabetes Care 31:1679-1685.
2)Miller JD, Carter E, Shih J, Giovinco NA, Boulton AJ, Mills JL, Armstrong DG (2014) How to do a 3-minute diabetic foot exam. J Fam Pract 63:646-656.
3)Rayman G, Vas PR, Baker N, Taylor CG, Jr., Gooday C, Alder AI, Donohoe M (2011) The Ipswich Touch Test: a simple and novel method to identify inpatients with diabetes at risk of foot ulceration. Diabetes Care 34:1517-1518.

(2018年05月)

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