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足をむしばむ11のリスク

 糖尿病の患者さんは、糖尿病がない人の15〜40倍も足の切断のリスクが高いと報告1)されており、糖尿病足病変は糖尿病の重大な合併症のひとつです。

 糖尿病の合併症を予防するためには、早期発見や早期介入が重要です。例えば、糖尿病腎症の早期発見には尿中の微量アルブミンの測定や、糖尿病網膜症の早期発見のためには定期的な眼科の受診などが推奨されています。そして、糖尿病の足病変に関しては、1年に1回の足の診察が推奨されています。足の診察から、将来、足潰瘍や切断のリスクを有する方を見つけ、綿密な個別指導を行う必要があるといわれています2, 3)

 世界からは、いくつものリスクやリスク分類が糖尿病足病変の発症を予防するために提案されています。代表的なものでは、「足の切断や潰瘍(かいよう)の既往がある」、「糖尿病神経障害がある」、「末梢動脈疾患がある」、「足趾が変形している」4つの要素です。そしてそれ以外にも「視力障害」2, 4)、「肥満」、「喫煙」2)、「血糖値が高い、糖尿病罹病期間が長い」、「腎機能障害」、「胼胝」4)、「安全靴や長靴などを使用する肉体労働者」5)などがリスクとしてあげられています2, 4, 6)ので、ご自身がいくつリスクをもつか確認してみてください。

1「足の切断や潰瘍(かいよう)の既往のある方」
 過去に足の傷や切断の既往のある方はもっとも足潰瘍の再発の危険が高いといわれております7)。足趾を1本でも切断すると、残された足趾も変形します。切断や潰瘍により足の変形は、足の裏の接地面積を減少させ足の裏にかかる圧が増大して新たな傷の原因となります。既往のない方と比べると、3〜78倍の足の潰瘍の再発率であると報告4)されておりもっとも注意が必要です。1〜2ヶ月毎に足の診察が推奨されています2)

2「糖尿病神経障害を有する方」

 糖尿病神経障害は糖尿病足潰瘍の最も重要な原因です。神経障害は高血糖が持続することによる神経の変成や神経を栄養する細い血管が障害されることで血流が低下することで生じてきます。糖尿病神経障害が進行すると、運動神経の障害により足の筋肉のバランスが崩れ、ハンマートゥなどの足趾の変形をきたします。足の変形は、足の裏の接地面積が減少するので、足の裏にかかる圧が増大して胼胝(べんち)の形成の原因や靴擦れの原因ともなります。

 自律神経障害により、皮膚が乾燥しやすくなります。乾燥による皮膚の亀裂は感染の侵入口となりますので注意が必要です。

 知覚神経障害は足の感覚低下を引き起こします。感覚が低下することで、怪我や火傷しても気が付くのが遅れてしまいます。糖尿病神経障害がある方は3〜6ヶ月毎の足の診察が推奨されています2)

3「末梢動脈疾患のある方」
 末梢動脈疾患(PAD)は糖尿病足潰瘍の原因の3割を占め、そしてしばしば再発の原因となります2)。そのため末梢動脈疾患を早めに発見することは非常に重要です。足が冷たい、足の色が悪い、長く歩いていると足が痛くなる方は、末梢動脈疾患が原因ではないか確認が必要です。足の動脈が触知できるか担当医に相談しましょう。ABI(足関節/上腕血圧比)を測定することも重要です。特にABIを測定した方がよい方は、50歳以上の糖尿病患者さん、50歳以下でも喫煙者や高血圧や脂質異常症などを有する方は5年に1回はABIを測定することが推奨されています8)。末梢動脈疾患のある方は足の診察は2〜3ヶ月毎に行うことが推奨されています2)

4「足趾の変形がある方」
 糖尿病神経障害や足に合わない靴、安全靴などを長期に使用することは足趾の変形の原因となります。足の変形は、足の裏の接地面積が減少するので、足の裏にかかる圧が増大します。足趾の変形がある方が、狭い靴や足に合わない靴を履いていると傷を作りやすくなります。また糖尿病の方は足の関節が固いという報告もあります。

5「視力障害(矯正視力0.5以下」

 糖尿病網膜症などが原因で視力が低下すると、足の潰瘍に気がつくことが難しいばかりでなく、足に傷ができてもそれを自分の眼で確認することが困難となります。

視力が0.5未満の方は0.5以上の方と比べて、糖尿病足潰瘍のリスクが1.9倍という報告もあります6)。視力障害があると見えないために、障害物を避けることができずに足をけがしてしまったり、爪切りで足の皮膚を切ってしまったり、靴の中に石などが入っていてもわからずにけがをしたりと、足に傷を作りやすくなるのも特徴です。自分で見えなければ、家族や友人、医療者に足に傷がないか確認してもらいましょう。

6「血糖値が高い、糖尿病の罹病期間が長い方」
 糖尿病は血糖値が高い期間が長ければ長いほど神経障害や血流障害などの合併症が進行しやすくなり、足潰瘍にも罹患しやすいという報告もあります6)。また糖尿病罹病期間が10年以上の方は10年未満の方と比較して、糖尿病足潰瘍のリスクが3倍であるという報告もあります6)。よりよい血糖コントロールを目指しましょう。そして10年以上の糖尿病歴のある方は、特に合併症に注意が必要です。

7「透析や腎機能障害」
 糖尿病による腎機能障害がある方や、透析を行っている患者さんは動脈硬化が進行している方が多く、末梢動脈疾患を合併しやすくなります。糖尿病の方では神経障害も合併していることも多く、足潰瘍や壊疽(えそ)の症状が自覚できずに、早めに発見することが難しくなります。定期的に足を診察してもらいましょう。

8「肥満」
 肥満によって、お腹が邪魔をして、足の爪を切るのも、足の裏を確認することも難しくなるうえに、体の重み自体で足に負荷がかかります。

9「加齢」
 歳をとると、身体が固くなり、細かい動作が難しくなったり、視力が低下したりします。爪切りを自分ですることが難しくなる方や歩いた時に転びやすくなることで、足に傷をつくりやすくなることがあります。自分でできること、ほかの人の手を借りることで上手に生活に取り入れる工夫をする必要があります。

10「喫煙」
 喫煙は、末梢動脈疾患のリスクだけではなく、糖尿病神経障害の増悪因子ともいわれています。また喫煙は、吸わない人と比べて、少なくとも10年寿命を短くするという報告9)もありますので禁煙を勧めます。

11「安全靴や長靴などを使用する肉体労働者」
 安全靴は、工事現場など足への危険を伴う場所で使用される靴ですが、足先への落下や釘などから足を守るために中底が鋼板でできています。鋼板でできているため、靴底が適切な位置(足趾の付け根あたり)で曲がりません。そのため足趾の変形の原因となります。また長靴は暑くむれやすくなり、水虫の原因ともなりますし足への負担も大きくなります。これらの靴をはき仕事をされている方は、普段は足にあった靴を履き、また足を清潔に保ってください。

最後に
 糖尿病足病変の発生予防には、足の定期的な診察とともにともに、フットケアの教育と予防的なフットケアが重要であることは示されています10)。ご自身のリスクを参考にして、足への関心を深めていただければ幸いです。

執筆:富田益臣(東京済生会中央病院糖尿病内分泌内科)


【出典】
1) Monteiro-Soares M, Boyko EJ, Ribeiro J, Ribeiro I, Dinis-Ribeiro M (2011) Risk stratification systems for diabetic foot ulcers: a systematic review. Diabetologia 54:1190-1199.

2) Boulton AJ, Armstrong DG, Albert SF, Frykberg RG, Hellman R, Kirkman MS, Lavery LA, Lemaster JW, Mills JL, Sr., Mueller MJ, Sheehan P, Wukich DK, American Diabetes A, American Association of Clinical E (2008) Comprehensive foot examination and risk assessment: a report of the task force of the foot care interest group of the American Diabetes Association, with endorsement by the American Association of Clinical Endocrinologists. Diabetes Care 31:1679-1685.

3) 日本糖尿病学会 編 (2010) 科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン. 南江堂, 115−125

4) Leese GP, Reid F, Green V, McAlpine R, Cunningham S, Emslie-Smith AM, Morris AD, McMurray B, Connacher AC (2006) Stratification of foot ulcer risk in patients with diabetes: a population-based study. International journal of clinical practice 60:541-545.

5) Tomita M, Kabeya Y, Okisugi M, Kawasaki M, Katsuki T, Oikawa Y, Shimada A, Atsumi Y (2014) Development and assessment of a simple scoring system for the risk of developing diabetic foot. Diabetology International 02.

6) Boyko EJ, Ahroni JH, Stensel V, Forsberg RC, Davignon DR, Smith DG (1999) A prospective study of risk factors for diabetic foot ulcer. The Seattle Diabetic Foot Study. Diabetes care 22:1036-1042.

7) Singh N, Armstrong DG, Lipsky BA (2005) Preventing foot ulcers in patients with diabetes. JAMA 293:217-228.

8) AmericanDiabetesAssociation (2003) Peripheral arterial disease in people with diabetes. Diabetes care 26:3333-3341.

9) Jha P, Ramasundarahettige C, Landsman V, Rostron B, Thun M, Anderson RN, McAfee T, Peto R (2013) 21st-century hazards of smoking and benefits of cessation in the United States. N Engl J Med 368:341-350.

10) Apelqvist J, Bakker K, van Houtum WH, Nabuurs-Franssen MH, Schaper NC (2000) International consensus and practical guidelines on the management and the prevention of the diabetic foot. International Working Group on the Diabetic Foot. Diabetes/metabolism research and reviews 16 Suppl 1:S84-92.

(2016年04月)

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