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透析クリニックでのフットケア ▶

Part1. 「どんなことをすればいい?」

平成28年度の診療報酬改定では、「下肢末梢動脈疾患指導管理加算」が新設されました。これに伴い、今後透析クリニックで足の観察やフットケアを実施する機会が増えていくと考えられます。まずは、透析クリニックでは、どのようなフットケアが求められているのかを解説します。

わが国の慢性透析患者さんの現況と透析施設での足病管理の重要性

 透析患者さんは増加の一途を辿っていて現在約32万人です。つまり日本では約400人に1人が透析患者さんということになります。また、90年代後半から糖尿病性腎症が増加しており、実に透析患者さんの約4割が糖尿病です。併せて、患者さんは年々高齢化していて平均年齢は67.5歳、また15年以上透析をしている長期透析患者さんも4万5千人以上います(文献1)。

 このような状況から、動脈硬化に合併した心脳血管疾患、免疫低下による感染症による死亡が、死因の上位を占めています。2014年末の日本透析医学会の調査では、透析患者さんの死因の第1位は心不全(26.3%)、第2位は感染症(20.9%)、第3位は悪性腫瘍(9.0%)、第4位は脳血管障害(7.1%)、第5位は心筋梗塞(4.3%)となっています(文献1、図1)。 この死因調査には、末梢動脈疾患(peripheral arterial disease:PAD)に合併した感染症、下肢切断のための入院中の心筋梗塞や脳梗塞などの詳しい分析はないことから、透析患者さんの死因にどのくらい足病が関与するのかはわかりません。しかし、足病を合併した多くの患者さんは、心臓や脳の血管疾患を合併していることが多く、下肢の潰瘍から感染症を発症することがあります。

 また、死亡の原因となるかどうかにかかわらず、下肢切断となった場合、ADLが低下して透析施設への通院が困難となるだけでなく、外出の頻度などが減少してQOLが低下します。このような状況とならないためには、患者さんの自己管理とともに、透析施設での医療従事者による足の観察やフットケア、下肢の血流評価が重要となります。

図1 慢性透析患者さんの死亡原因の推移

慢性透析患者さんの死亡原因の推移

日本透析医学会:図説わが国の慢性透析療法の現況(2014年12月31日現在). 2016,p.26より引用

文献1)日本透析医学会:図説わが国の慢性透析療法の現況(2014年12月31日現在)


透析患者さんのPADおよび下肢切断後の生存率

 透析患者さんのPAD合併での死亡率や下肢切断後の死亡率が報告されています(文献2)。PADに罹患している透析患者さんは、PADに罹患していない透析患者さんと比較して生存率が低率です(図2)。そして、透析患者さんが下肢切断となった場合の生存率は、非透析患者さんと比較して極めて低率です(図3)。わが国の四肢切断数は年々増加しており(図4)、PADの予防、早期発見・早期治療による下肢切断の回避が、透析患者さんの生存率の改善、ADLやQOLの維持や向上に重要となります。

図2 わが国の透析患者さんにおけるPADの有無別生存率

わが国の透析患者さんにおけるPADの有無別生存率

Rajagopalan S,et al:Peripheral arterial disease in patients with end-stage renal disease:observations from the Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study(DOPPS).Circulation 2006;114(18):1914-22をもとに作成
図3 下肢切断術後の非透析患者さんと透析患者さんの生存率

下肢切断術後の非透析患者さんと透析患者さんの生存率

Aulivola B, Hile CN, Hamdan AD, Sheahan MG, Veraldi JR, Skillman JJ, Campbell DR, Scovell SD, LoGerfo FW, Pomposelli FB Jr.:Major lower extremity amputation. Arch Surg 2004;139:395-9.
図4 慢性透析患者さんの四肢切断数と割合の推移

慢性透析患者さんの四肢切断数と割合の推移

日本透析医学会:わが国の慢性透析療法の現況CD-ROM版2009年末〜2014年末をもとに作成

文献2)Rajagopalan S,et al:Peripheral arterial disease in patients with end-stage renal disease:observations from the Dialysis Outcomes and Practice Patterns Study(DOPPS).Circulation 2006;114(18):1914-22.


透析施設で取り組む足病管理のメリットと透析管理の重要性

 週3回の血液透析への通院は、透析患者さんにとって負担かもしれませんが、週3回の通院により、医療従事者の頻回な教育や管理、治療が受けられる利点があります(表1)。

表1 透析施設で足病管理に取り組むメリット
  • (ア)週に3 回、必ず来院することで
    • ① 足病変発症の予防
    • ② 異常の早期発見・早期治療
    • ③ フットチェック、フットケアの継続
  • (イ)患者さんとのコミュニケーションにより生活状況を把握
  • (ウ)患者さんへの足病の指導を定期的に行い、足への関心を高める機会となる

 しかし、足病管理の重要性の啓発が十分に進んでいないため、透析クリニックでの管理・治療の状況はさまざまです。透析を行うだけで足病の管理を全く行わない施設から、週3回の通院のたびに足のケアを行っている施設まで、施設による違いがあります。平成28年度の診療報酬改定で、「透析施設での下肢血流評価」と「血流低下患者さんの専門施設への紹介」という足病管理の連携が健康保険で算定できるようになりました。これにより、従来足病にあまり関心のなかった透析施設でも、今後は関心が高まると考えられます。保険請求のためではなく、患者さんのための足病管理の普及を期待しています。

 ただし、透析クリニックは足病専門クリニックではないため、質の高い透析医療を提供することが大前提であり、それを実施することが足病の予防に繋がります。質の高い透析医療とは具体的には、食事や内服薬によるカルシウム・リンの管理、低栄養とならない栄養の管理、エリスロポエチン製剤による腎性貧血の管理、ドライウェイトの設定や内服薬による血圧管理、患者さん個々に適した透析方法の選択などが挙げられます。さらに、足病を含む透析患者さんの動脈硬化の予防には、透析施設での多くの合併症の管理・治療が必要です。こうした透析合併症の管理をしっかりと行うことにより、患者さんの透析導入後の生存率は向上し、透析を行っていない人と大きくは変わらない生活ができるようになります。長期透析合併症の1 つである足病の管理を行い、患者さんのADLやQOL、そして生存率を低下させないために、医師・看護師・臨床工学技士・管理栄養士がチーム医療を行い、透析患者さんの合併症を軽減できるように努めることが重要です。

透析クリニックでの足病治療

1. 患者指導

 足病は日常生活で足をぶつけたり、足に合わない靴を履く、靴に小石などが入っているなどの些細なことから発症して悪化します。まず、患者さん一人ひとりにパンフレットなどを用いて、足病の重要性と足の観察やセルフケアの重要性を伝えます。定期的に患者勉強会を開催して、全員に啓発することも重要です。その際には、入浴時の足の洗浄や入浴後の保湿の大切さ、保湿剤の塗布方法なども含めたセルフケアの指導を行います。

 ただし、透析患者さんや糖尿病患者さんでは、知覚神経障害や視力障害などにより、足病が発症しても気付かない人が多く存在します。透析クリニックでの重症度に応じたフットチェックやフットケアが重要となります(当院での例、「図23 当院での医師・看護師のフットケア・チェック ▶」を参照ください)。

2. 足浴

 多くは透析中にフットケアを行う前の前処置として行います(特に炭酸泉浴は末梢循環の促進作用がある)。足浴後によく乾かして、趾間はしっかりと拭き取ります。その後にヒルドイド®クリームやワセリンなどを用いて皮膚の保湿を行います。

3. 乾燥や亀裂(図5)

図5 角化に潰瘍を合併した症例

角化に潰瘍を合併した症例

 乾燥の強い患者さんでは足に痛みが出たり、乾燥がひどくなると亀裂が生じて、そこに感染を起こすことで足病へとつながります。このような患者さんには、透析室で足浴を行います。また、患者さんには自宅での入浴後の保湿を勧めます。

4. 胼胝(べんち)(図6)

図6 胼胝に潰瘍を合併

胼胝に潰瘍を合併

 胼胝のある患者さんは、放置すると胼胝部に外力が持続的に加わり潰瘍を形成したり、潰瘍から感染を起こしたりする可能性があります。胼胝はコーンカッターやグラインダーを使用して薄くします。この際に深く削りすぎて出血を起こさないように注意します。

 また、胼胝により同じ場所に繰り返して圧迫や摩擦が加わると、皮膚が限局的に肥厚して硬くなります。外圧が1カ所に加わらないような、足の環境を靴などで改善する指導を行う必要があります。また、自分の足に合った靴がない場合、フットウェアの作製が必要になります(図7)。

図7 当院でのフットウェア作製の手順

当院でのフットウェア作製の手順

5. 白癬症(図8、図9)

図8 足白癬の治療開始と3カ月後

足白癬の治療開始と3カ月後

図9 爪白癬に対するクレナフィン®使用開始時と4カ月後

爪白癬に対するクレナフィン使用開始時と4カ月後

 足白癬や爪白癬が疑われる患者さんの場合、皮膚や爪をKOH直接鏡検で観察し、白癬症かどうか診断を行います(KOH直接鏡検は外注検査可能)。透析患者さんの白癬有病率は高率です。足白癬や爪白癬の診断がついたら治療を開始します。

 白癬には内服薬がありますが、腎障害のある患者さんでは高い血中濃度が持続して、肝機能障害を起こす可能性があることから、外用薬での治療を優先します。以前は爪白癬の外用薬での治療は難しかったのですが、2014年に発売されたクレナフィン®爪外用液により、多くの爪白癬が治せるようになりました。

6. 爪のケア

 爪のケアを行う前には、爪の状態を評価して、必要があれば足浴を適宜行います。

 ゾンデを使用して爪溝と皮膚を分けて、角質や汚れを除去します。爪切りは爪の状態により、ニッパーや爪やすりを使い分けます。

 爪の切り方はスクエアオフにし、深爪や爪を丸く切る、爪を斜めに切ることは巻き爪の原因となるため行わないようにします。

7. 巻き爪・陥入爪

 爪の状態や疼痛、炎症がないかを確認します。爪が巻いている部分や陥入部分に細いやすりを入れて削り除圧します。治療後は巻いている爪が皮膚に食い込まないようにテーピングや陥入部分へのコットン挿入などを行います。

 爪切りの指導も重要で、陥入を嫌うあまり深爪にしている患者さんがいるため、深爪による悪影響を説明し、爪やすりを用いて整える方法を説明します。

8. 潰瘍の治療(図10)

図10 右1趾の感染を合併した潰瘍の治療

右1趾の感染を合併した潰瘍の治療

 潰瘍の治療は傷の状態や感染の有無などにより異なります。透析中に治療を行う場合は、生理食塩水などで洗浄した後に、感染や滲出液の有無・量などにより、適切な消毒薬での消毒(行わない場合もある)、ドレッシング材や軟膏の選択を行い治療します。創部の状態はデジタルカメラで適宜撮影して、状態の変化を他のスタッフと共有します。創部の変化に応じて、処置内容も変化していきます。また、潰瘍ができた原因を除去しなければ、創部が改善した後も再発を繰り返して足病が悪化します。靴や生活環境の確認などを行い、原因を除去することも重要です。

9. PAD治療全般

 図11に示すようにPAD治療は、透析管理、血流改善、創部処置と多岐にわたります。自施設で不可能なことを無理に行う必要はありませんが、医師・看護師・臨床工学技士・管理栄養士がスキルアップをして、少しでも患者さんのためになる治療ができるようにしていきたいものです。

図11 PADの治療

PADの治療

透析クリニックを起点とした病診連携と足病治療

 下肢血流低下患者さんを循環器医が透析クリニックに見つけに来たり、潰瘍や膿瘍の患者さんを皮膚科医や形成外科医が透析クリニックに見つけに来ることはありません。まずは透析クリニックで透析医や看護師が発見して、紹介することから連携や治療が始まることを忘れないでください。まず、患者さんの訴えに耳を傾け、足を観察したり触ったり、動脈を触知したりすることが重要です。下肢の血流低下が疑われれば足関節上腕血圧比(ankle brachial index:ABI)や皮膚灌流圧(skin perfusion pressure:SPP)などの血流検査を行う、足病変があれば処置や治療を行います。そして、基幹病院に紹介した場合でも、それで終わりではありません。透析室でできる処置や治療は、週3回は透析クリニックで行います。基幹病院と協力して連携した医療を行うことが重要です(図12

図12 透析施設と他診療科との連携

透析施設と他診療科との連携

(2017年06月)

Act Against Amputation
-なくそう、下肢切断-

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