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透析クリニックでのフットケア ▶

Part2. 「どうはじめる?」

実際に、透析クリニックでフットケアをはじめる際には、どのようにしたらよいのでしょうか。このパートでは、下落合クリニックがどのようにフットケアを実践しているかを通してクリニックでのフットケアのはじめ方・実施の仕方を解説します。

透析クリニックでのフットケアの開始
〜透析クリニックでのフットケアチームの立ち上げ〜

透析クリニックでフットケアをはじめるとき、どのようなことからはじめていけばよいのかを具体的に解説します。

透析クリニックは透析が専門ですので、足病の専門の医師や看護師はいないことがほとんどです。まず足病の勉強から始めましょう。
日本フットケア学会や日本下肢救済・足病学会が行っているセミナーや研修、企業などが行っている勉強会や研究会に参加して、フットケアの知識や方法を学習しましょう。
自分の透析クリニックで、自分が講師となり勉強会を開きましょう。勉強会に集まった仲間とフットケアチームを結成して、一緒に学会や研究会に参加しましょう。
フットケアチームのやる気と知識が高まったところで、実際にクリニックでのフットチェックを開始します。初めてフットケアチームが活動するクリニックでは、患者さんが足を見せたがらないことがあります。必要性をよく説明して、全患者さんの足の状態を確認しましょう。胼胝のある患者さん、乾燥が強い患者さん、足の変形のある患者さんなど、足に問題を抱えている患者さんが多くいることがわかります。
足に問題を抱えている患者さんの状態をフットケアチームの全員が共有できる、フットチェックシートなど記録媒体を作成します。
まずできることから始めましょう(無理はしない)。セルフケアの指導、足浴、乾燥肢への保湿、爪切り、巻き爪の処置、胼胝の処置、潰瘍の処置などを行っていきます(「透析クリニックでの足病治療」参照 ▶)。
医師や臨床工学技士の理解と協力を得ることが重要。
医師には胼胝からの潰瘍発症の際、一緒に潰瘍の治療を行う、処置の指示をもらうなどの必要があります。また、自施設で治療できない場合は、皮膚科や形成外科などの適切な医療機関を紹介してもらうことが必要です。
臨床工学技士には、透析中のフットチェックやフットケア中に、透析業務の多くを依存することになります。理解と協力を得ることが、自施設でのフットケアチーム成功の鍵となります。可能であれば、臨床工学技士もフットケアチームの一員に加えましょう。ABIやSPPなどの下肢血流評価をお願いして情報共有しましょう。
管理栄養士の協力も重要です。栄養状態の保持は足病の予防や治療に重要です。管理栄養士による栄養指導や生活状態のチェックなども情報共有することにより、より良いフットケアが可能です。

下落合クリニックでのフットケアの実際

 血液透析患者さんは週3回、3〜5時間程度は否応なく来院します。この機会、この時間中に足病の教育、フットチェック、フットケア、下肢の血流評価を行うべきでしょう。下落合クリニックのフットケアチームは全職員で取り組みます(図13)。

図13 下落合クリニックのフットケアチーム

下落合クリニックのフットケアチーム

患者さんが透析室に入室
医師・看護師・臨床工学技士が穿刺を行い透析を開始
透析開始後から透析終了までの間

● 看護助手(炭酸泉浴の準備)
● 看護師はフットチェックやフットケア(爪切り、乾燥や胼胝の処置)(図14・図15)
● 臨床工学技士はABIやSPPなどの下肢血流測定(図16)
● 医師は回診や下肢潰瘍など創傷のある患者さんの治療(図17)

医師・看護師・臨床工学技士が返血して透析が終了
図14 看護師による処置

看護師による処置

図15 フットケアナースによる処置

フットケアナースによる処置

図16 臨床工学技士によるSPPおよびABIの測定

臨床工学技士によるSPPおよびABIの測定

図17 医師のフット回診と創処置

医師のフット回診と創処置

下落合クリニックでの足病の情報共有と管理

下落合クリニックの情報共有の仕方と管理ツールを紹介します。

管理ツールのメニュー画面には、実施データ入力・患者情報入力・実施履歴・次回予定検索の項目があります(図18)。
図18 当院での足情報・フットケア管理ツール

当院での足情報・フットケア管理ツール

フットチェック・フットケアを行った場合、実施デ−タ入力ボタンを押し、患者氏名リストから該当患者氏名を選択します。実施日の入力を行い、実施者を選択します。備考欄に実施内容や特記事項・検査結果・次回の予定(例えば2週間後に必要など)を入力します。入力後はデータを登録して完了です(図19)。
図19 実施データ入力画面

実施データ入力画面

全患者情報は、あいうえお順に全患者氏名を配列、月曜日クール・火曜日クール・時間帯・直近のケア内容・セルフケア状況が確認できます(図20)。
図20 全患者さんの情報(あいうえお順)

全患者さんの情報(あいうえお順)

実施履歴はフットケアやフットチェックの実施履歴で、実施日順に表記されます(図21)。
図21 全患者さんの実施履歴

全患者さんの実施履歴

次回予定の検索画面では、前回のフットチェックから何日経過しているかを確認して、経過日数に合わせてフットチェックの予定を組んでいます(図22)。フットチェックやフットケアの目安を図23に示します。
図22 次回予定の検索画面

次回予定の検索画面

図23 当院での医師・看護師のフットケア・チェック

当院での医師・看護師のフットケア・チェック

フットチェックやフットケアを行った際は、デジタルカメラで撮影して患者さん個々のフォルダに保存し、変化を比較します(図24)。
図24 全患者さんの足や潰瘍および創傷の写真ファイル

全患者さんの足や潰瘍および創傷の写真ファイル

下落合クリニックでの下肢血流評価と基幹病院との病診連携

 Part1でも触れましたが、平成28年4月より「人工透析患者の下肢末梢動脈疾患重症化予防の評価」として 「下肢末梢動脈疾患指導管理加算」が算定可能となりました。下肢の血流障害を適切に評価し、他の保険医療機関と連携して早期に治療を行うことを評価するため、ABI検査0.7以下またはSPP検査40mmHg以下の患者さんについては、専門的な治療体制を有している保険医療機関へ紹介を行っていることが主な算定要件です。

 当院では、臨床工学技士による年1回以上の下肢血流評価が全患者さんに行われます。当院のABIとSPPの分布からわかりますが(図25)、いずれの検査にも長所と短所があることから、組み合わせての評価が重要です。PADが疑われるABI 0.9未満の群にも、SPPが正常である50mmHg以上の患者さんがおり、逆にABI正常と考えられる0.9 〜 1.3の群にも、PADが疑われるSPP50mmHg未満の患者さんが存在しています。

図25 ABIとSPPの下肢数と分布

ABIとSPPの下肢数と分布

 当院ではABI0.9以上かつSPP50mmHg以上の患者さん(いずれも正常)は年1 回の下肢血流検査、ABI0.9未満またはSPP50mmHg未満の患者さん(いずれか低下でPADの疑い)は3カ月に1回の下肢血流検査、そして、このスクリーニングの過程で、ABI0.8未満またはSPP40mmHg未満となった場合、循環器科や血管外科を有する専門施設へ紹介しています(管理加算基準とは紹介基準のABI値が異なる*)(図26)。この際は事前に、下肢動脈の画像検査(CT AngioまたはMR Angio)を施行して、狭窄病変の有無、狭窄病変の場所や程度を確認し、紹介病院を決定しています。ただし、緊急を要する病態の患者さんは、すぐに血管内治療(EVT)やバイパス術を含む足病管理の可能な医療施設に紹介しています。

*加算基準ができる以前から下落合クリニックでは評価して紹介を行っており、下落合クリニックでの基準がすでにあったため。

図26 当院での下肢血流検査と病診連携

当院での下肢血流検査と病診連携

まとめ

 繰り返しになりますが、しっかりとした透析合併症の管理を行うことにより、患者さんの透析導入後の生存率は向上しており、透析を行っていない方と大きく変わらない生活ができるようになりました。患者さんが仕事や趣味を継続して、家族や友人との生活を楽しみながら長生きしてく、このサポートを行っていくことが、われわれ透析医療従事者の使命です。すべての透析施設で、医師、看護師、臨床工学技士、管理栄養士がチーム医療を行い、透析患者さんの合併症を軽減できるように努めていくことが重要です。

(2017年06月)

Act Against Amputation
-なくそう、下肢切断-

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Faculty Member/Clinical Reporter
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