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「下肢末梢動脈疾患指導管理加算」(下肢救済加算)の基礎知識と実践 ▶

Part2. 重症下肢虚血(CLI)の病態と
治療について

一般的にフットケアというと、爪切り、胼胝けずり、足浴・保湿をイメージする医療従事者が多いようですが、それだけでは透析患者の足を救うことはできません。

重要なことは、足を観察し何が起こっているのかを、特に血流に関して評価すること、つまり、足に対して何かを行う前に、「診る」ということです。

次に重要なことは、適切な治療が行える病院へ「紹介する」こと(連携)です。この2つの要件が算定できるようになったことは、重症下肢虚血を早期発見するための医療制度として画期的といえます。

足を「診る」こと

重症下肢虚血(CLI)とは末梢動脈疾患が重症化したもののことで、末梢動脈疾患(PAD)は、四肢の動脈の閉塞または狭窄による血流障害による動脈疾患のことをいいます。また、粥状動脈硬化や血管の中膜の石灰化による閉塞性動脈硬化症(ASO、現在はCLIとほぼ同義)と血管炎の病態を呈するバージャー病もPADには含まれます(図1)。

図1 PADの概念

PADの概念

病 態

動脈の閉塞または狭窄によって末梢組織が虚血状態になります。PADは本来四肢の動脈疾患のことを意味しますが、動脈硬化や石灰化は全身の動脈で起こります。したがって、脳梗塞や心筋梗塞といった重篤な脈管の疾患とも深い関係にあります。PADやそれが進行したCLI患者(表1)では、脳梗塞や心筋梗塞を起こす可能性が高いことがわかっています(図2図3)。また、透析導入前からの腎臓病や糖尿病に起因する動脈の石灰化が関与しているといわれています。透析導入後にリンやカルシウムをコントロールすることによって、石灰化の進行を遅らせることが可能です。

表1 末梢動脈疾患の分類:症状によるFontaine分類

末梢動脈疾患の分類:症状によるFontaine分類

図2 末梢動脈疾患、冠動脈疾患、脳血管疾患とそれぞれの合併頻度

末梢動脈疾患、冠動脈疾患、脳血管疾患とそれぞれの合併頻度

末梢動脈疾患、冠動脈疾患、脳血管疾患は、それぞれ合併して存在することも多い
Bhatt DL, et al: International prevalence, recognition, and treatment of cardiovascular risk factors in outpatients with atherothrombosis. JAMA. 2006; 295: 180-9.をもとに作成)
図3 末梢動脈疾患患者の生存率

末梢動脈疾患患者の生存率

(TASC Ⅱ Working Group/日本脈管学会訳:末梢動脈疾患の疫学.
下肢閉塞性動脈硬化症の診断・治療方針 Ⅱ. メディカルトリビューン, 2007, p.24. より転載)

早期発見のために必要なこと:
スクリーニング(視診、触診、ドップラー、客観的指標)

視 診

黒色乾燥壊死があるときは、虚血であることが簡単に判断できますが、壊死がないときは観察には経験が必要です。また、虚血足趾にはチアノーゼ(紫色から赤黒い皮膚色)を認めることがあります。

クリニックでも簡単にできる虚血の検査には以下のようなものがあります。仰臥位で下肢を挙上すると、下肢の色が肌色から白色に変化し、下肢を下ろすとピンク色に戻る変化を認めることがあります。これは、下肢が挙上された高さに対しての重力に抗して足趾まで血流を送ることができないこと、つまり虚血傾向にあることを意味しています。

虚血があると、爪の成長が遅くなりますし、足趾の毛がなくなり無毛になります。皮膚の性状も弾力がなくなり、見た目はツルツルになることもあります。

表2 神経原性か虚血性化の判別
(神経障害性足病変とPADの特徴の比較)
疼痛の有無 少ない あり
皮膚の状態 胼胝、亀裂 ツルツル(平滑)、テカテカ(光沢)
潰瘍の部位 足底、ときに足背、骨突出部 踵部、足趾
創の状態 湿 潤 乾燥(ミイラ化)
感 染 ※1 起こしやすい 起こしにくい(血行再建後に起こす)
足部の毛 あり なし
Capillary refill time ※2 5秒以内 5秒以上
皮膚の温度 なま温かい 冷たい
足部の動脈の拍動 触知できる 触知できない
足の変形 足全体 足 趾
※1 感染:腱や腱膜に沿って上行し、歩行や足関節の運動で増悪する。
※2 Capillary refill time:足部皮膚を、観察者の指で圧迫をして、患者の皮膚が白くなったところ(毛細血管から血液が排出された状態)から、肌色(毛細血管に血液が戻ってきた状態)にどのくらい時間がかかるかというテスト。健常者は早く、1秒以内でほとんどわからないくらい早いが、CLI、PADは、30秒以上かかることもある。
触 診

触診は重要です。虚血性変化があると、足の温度は低下します。そのため皮膚の温度と動脈の拍動を観察します。脈を触れる場所は中枢から、鼠径部:大腿動脈、膝:膝窩動脈、前脛骨動脈の末梢の足背動脈(足背)と後脛骨動脈(アキレス腱の内果側)の足部では2カ所です。下肢には3 本の動脈がありますが、下腿と足部において腓骨動脈は触知できません。

ドップラーによる聴診

触知できない腓骨動脈もドップラーでは聴取可能です。透析における石灰化例では、動脈が硬化しているために触診で拍動が触知できないことが多くみられます。そのようなときには、ドップラーにて聴診を行います。しかし、さらに高度石灰化症例では、ドップラーの音波も石灰化した中膜に反射して聴取できないこともあります。

客観的指標:ABI、SPP

客観的虚血の指標としては、足関節上腕血圧比(ankle brachial index ; ABI)や皮膚灌流圧(skin perfusion pressure ; SPP)を用いるのが一般的です。

今回の診療報酬改定でもABIとSPPによる血流評価が記載されています(ABI値0.7以下、SPP値40mmHg以下では専門病院へ紹介)。血流計測は、以前より月に一度100点を算定可能です。特にSPPは、40mmHg以下であると創傷治癒が進行しないので血行再建の対象とされ、SPPの数値40mmHg以上を目標として血行再建が行われます。

今回の診療報酬改定から、経皮酸素分圧TcPO2による虚血評価も100点算定できるようになりました。

コラム: ABIの正常値にご用心
ABI は、マンシェットで血管を圧迫してつぶし、動脈の流れが途絶えるところを計測しています。しかし透析の高度石灰化症例においては血管が硬く、マンシェットで動脈がつぶれないために、正常値に近い値が出ます。 つまり実際には虚血があるのにABI 値が0.9 〜1と正常値に近い数字が出ることがあります。このような場合でもSPP 値は比較的正確に虚血を評価することが可能です。一方SPP にも欠点があります。虚血の著しい患者では、疼痛を認めて計測ができない場合や、不随意運動で足が動く場合には正確に計測ができません。SPP と同時に計測できるPVR という脈波計測は、臨床的経験が必要ですが、SPP 値だけでなく石灰化や虚血の予測も可能となります。

(2016年05月)

Act Against Amputation
-なくそう、下肢切断-

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