糖尿病ネットワーク
「足病変と闘う現場から」
足病変との闘い——。そこには患者さんのパートナーとなる足病変治療や療養指導の達人たちの熱いサポートが欠かせません。彼らはなぜ“救肢”を志したのでしょうか。このコーナーでは、それぞれの専門分野から足に挑んでいるエキスパート達によるコラムを紹介します。
足病変とフットケアの情報ファイル

「足病変と闘う現場から」 ▶

5. メスをもった内科医

東京都済生会中央病院糖尿病内分泌内科
富田 益臣

 それは医師となり3年目、糖尿病専門医としての研修がはじまった時でした。45歳の2型糖尿病の男性が母趾の潰瘍で入院となり担当となりました。患者さんは独身のサラリーマンで、インスリンを使用しながらもHbA1cはいつも10%以上、BMIも30以上で、合併症も進行していました。あるとき、この方の足に潰瘍ができ入院されました。営業で新しい靴をはき靴ずれができたけれど、糖尿病神経障害のため気がつかず、そのまま放置してひどくなったとのこと。

 この頃の私は足の診察の仕方もわからず、足の治療は皮膚科が行うと決め付け皮膚科の先生にお願いしていました。ですからその患者さんも入院中は皮膚科の外来を受診し足の処置を行っていました。ですが1カ月入院しても潰瘍は治らず、毎日皮膚科で軟膏を塗り病室に帰ってくるということを繰り返していました。私は足を診察しないため、当然傷の状態はよくわかりません。

 ある日、当時の上司の部長回診があり、上司に「足の状態はどうなっているの?」と尋ねられ「皮膚科に任せていますのでわかりません」と私は答えました。すると上司は回診中であるにもかかわらず患者さんの靴、靴下を脱がせ、傷の状態をみると、「これでは治らない」と言い、メスをもってベットサイドでデブリードマンをはじめたのです。内科医にも関わらず、メスをもちデブリードマンを行う姿は3年目の自分にはたいへん衝撃的でした。

 傷がきれいになると上司は「内科医とはいえ、担当の患者さんの傷の状態は把握しないといけない。内科医は全身を診るのが仕事だから。足の指の状態もきちんと診察しなさい」と言いました。全員の前でそのようなことを言われ、冷や汗だらけで狼狽したことは今でも忘れられません。

 さらに当時では珍しかったマゴット治療がこの方に適するのではないかと助言をし、つらく長い回診は終わったのです。その後、マゴット治療を行うことで、この患者さんの傷は急激によくなり退院となりました。現在もこの方に外来でお会いすると、そんな当時の記憶がよみがえります。

 そのことがきっかけで、糖尿病患者さんの足に興味をもち、外来で診察するときもできるだけ靴や靴下を脱がして足の状態を確認し、時間があるときは胼胝や爪の処置も行うようになりました。入院中の患者さんでは、傷の状態の把握、簡単なデブリードマン、外科の先生との治療方針の確認やディスカッションを行うようになりました。

 糖尿病は合併症の病気であり、糖尿病足潰瘍は糖尿病患者さんの重要な合併症です。潰瘍を予防するために糖尿病の患者さんは1年に1回の足の診察が推奨されていますが、糖尿病内科医が足を診察することは非常に少ないのが現状です。

 内科医は、血糖値や感染症の管理などの全身状態の管理だけではなく、デブリードマン、血管内治療のタイミング、歩行指導などのリハビリ、除圧、装具の選択、状況によっては切断の決断、そして退院後の再発予防や教育など、糖尿病内科医が行う仕事はたくさんあると考えています。この分野は非常に多岐にわたりますが、日本では専門家がいなくて、多くの患者さんが適切な治療をうける機会を逃していると実感しています。

 糖尿病患者さんの合併症が進行することがないように、そしていつまでも自分の足で歩けるように、現在は金曜日の午後にフットケア外来として、延べ1000人の患者さんが通院し、医師、看護師や、義肢装具士を中心に大勢のチームメンバーでフットケアを実施しています。そして、全国に同じ志を持つ仲間とともに切磋琢磨していきたいと考えております。

(2014年12月)

Act Against Amputation
-なくそう、下肢切断-

Director Member
Faculty Member/Clinical Reporter
Advisory Member

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