
東京都済生会中央病院糖尿病内分泌内科
富田 益臣
骨髄炎の患者さんの抗生剤の投与期間をどうすればよいか悩んだことありませんか? Diabetes Care2014年11月20日号に、糖尿病足潰瘍で骨髄炎を有する患者さんへの抗生剤の投与期間についての研究の論文(1)が掲載されましたのでご紹介します。
2012年にLipskyらにより報告されたガイドライン(2)では、腐骨の除去を行わない場合、また、残存している場合には、3カ月以上の抗生剤の投与が推奨されていますが、近年の抗生剤治療の進歩により治療期間が短縮出来る可能性が推測されます。
この研究は、フランスで行われた他施設の前向きの無作為比較試験で、糖尿病骨髄炎の非外科的治療として、6週間の抗生剤治療、または12週間の抗生剤治療の比較を目的として行われました。
2007年1月から2009年1月にフランスの5つの病院で行われ、40人が参加しました。そのうち20人を6週間の抗生剤投与群、20人を12週間の抗生剤投与群に割り付けられました。ベースラインの患者背景や検出された菌に差はなく、骨髄炎の寛解は6週間投与群で60%、12週間投与群で70%と差はあまり認められませんでした(p=0.50)。しかし12週間投与群では、少数の患者に抗生剤に関連する胃腸の有害事象が認められました。
研究では、骨髄炎の診断は骨の露出が2週間以上持続、2㎠以上の大きさ、または3cm以上の深さ、骨シンチ、MRIで骨髄炎を確認できるか、または骨培養で陽性であった場合とし、骨髄炎の寛解は4週間以上の傷の完全で持続的な治癒、傷やその周囲の感染がない、外科的な骨のデブリードマンや切断が抗生剤終了後12カ月以上認めない場合と定義されています。
結論としては、今回の研究では、外科的治療が必要のない糖尿病足病変の骨髄炎の患者においては、6週間の抗生剤投与で十分であることが示唆されました。
私の感想としては、登録患者の選択バイアス、外科的な治療の定義を明確にすることは難しいと思いますが、傷の状態をよく観察したうえで、意味のない長期間の抗生剤投与は避けるべきであると感じました。
(2015年02月)