糖尿病ネットワーク
「足病変と闘う現場から」
足病変との闘い——。そこには患者さんのパートナーとなる足病変治療や療養指導の達人たちの熱いサポートが欠かせません。彼らはなぜ“救肢”を志したのでしょうか。このコーナーでは、それぞれの専門分野から足に挑んでいるエキスパート達によるコラムを紹介します。
足病変とフットケアの情報ファイル

「足病変と闘う現場から」 ▶

9. SGLT2阻害薬で下肢切断リスク増の警告あり 
処方している患者には足の診察を! 

下北沢病院 糖尿病センター長
富田益臣

 SGLT2阻害薬で下肢の切断リスクの増加が報告されています。欧州医薬品庁(EMA)は2017年2月にカナグリフロジンを用いた2つの臨床試験(CANVAS、CANVAS-R)の中間解析データに基づき、「2型糖尿病患者に対するSGLT2阻害薬の使用で下肢切断リスクが上昇する可能性がある」とする警告文が発表しました。同様に米食品医薬品局(FDA)もCANVAS、CANVAS-Rの最終結果に基づき、同薬による下肢、特に足趾の切断リスクが高まると判断し、5月18日付けの安全性情報で警告を発出しています。

 SGLT2阻害薬は近位尿細管でのグルコース再吸収を抑制し、尿糖の排泄を増加させ高血糖を改善させる新しい経口血糖降下薬。日本では現在6種類が発売されています。今回報告されたのはカナグリフロジンですが、EMAによると、これはカナグリフロジンのみの話ではなくSGLT2阻害薬全体について同様であり、全てのSGLT2阻害薬において、下肢切断リスク上昇の可能性があるとの警告を添付文章に追記するよう勧告しています。

 CANVAS試験はカナグリフロジンの心血管への安全性を検証する目的で、CANVAS-R試験は腎機能に与える影響を解明することを目的として実施された試験です。両試験で示されたカナグリフロジンの使用に関連した下肢切断リスクは、プラセボ群の2倍であり、1000人年あたりの切断発生率はプラセボ群で2.8、カナグリフロジン群で5.9、ハザード比2.12(95%CI 1.34-3.38)、NNH(Number Needed to Harm)323、CANVAS-R試験では1000人年あたりの切断発生率はプラセボ群で4.2、カナグリフロジン群で7.5、ハザード比1.80(95%CI 1.10-2.93)、NNH270であったと発表しました。

 そして下肢切断を要した140例の切断部位は、足趾や中足部が99例、下腿または大腿が41例。先行症状では下肢の感染、壊疽、糖尿病足潰瘍、虚血であり、リスクが高い患者は下肢切断の既往、下肢末梢動脈疾患、神経障害を有する患者でした。

 FDAではこれらの結果をふまえ、カナグリフロジンの処方開始前には、下肢切断の既往、下肢末梢動脈疾患、神経障害などの有無を確認するよう勧告しています。また投薬中においては、下肢感染の徴候なども認めた場合には投薬を中止すべきであると警告しています。

 ただし、SGLT2阻害薬処方による下肢切断増加の機序はまだ不明です。皮膚障害や脱水による血栓、塞栓症などが関連している可能性はあると推測されます。

 これらの試験の詳細は、2017年度のアメリカ糖尿病学会で報告される予定ですが、我々医療者は、SGLT2阻害客を処方されている患者さんには靴下や靴を脱いでもらい、足の診察を行い、下肢切断リスクを適切に評価してひくことが求められています。

 なお、現在SGLT2阻害薬を処方されている患者さんは自己判断で中断せず、継続の可否を主治医と相談するとともに、定期的に足を診察してもらいましょう。

■参考文献
FDA Drug Safety Communication: FDA confirms increased risk of leg and foot amputations with the diabetes medicine canagliflozin (Invokana, Invokamet, Invokamet XR)

(2017年06月)

Act Against Amputation
-なくそう、下肢切断-

Director Member
Faculty Member/Clinical Reporter
Advisory Member

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